平成28年6月 第88回代議員会

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挨拶をする近衞忠煇社長(写真左)、大塚義治副社長(同右)

本日はご多用のところ、また天候不順の中、代議員会にご出席をいただき、誠にありがとうございます。

本日は、平成二十七年度の決算についてご審議いただくこととしておりますが、はじめに、赤十字を取り巻く最近の幾つかの動きについて、報告させていただきたいと思います。

皆さまご存知の通り、4月に熊本でマグニチュード7.3を記録する大地震が発生し、家屋などの倒壊で70人近くの方が亡くなったほか、14万戸以上の家屋が被害を受け、避難者は熊本県内だけでも一時、18万人以上にものぼりました。熊本は日本赤十字社発祥の地でもあり、緊急段階での救護に全力を上げたのはもとより、これからも被災された方々の心のケアなどに力を尽くす所存でございます。私は4月22日から2日間、熊本の被災地を訪れました。テレビの映像で見ると、熊本城をはじめ、町全体が壊滅したかのような印象が持たれましたが、実際には、被災地域はかなり限定され、地震の波が伝わって大きく崩壊している家や建物がある一方、道を1本隔てた向こう側は何ともない、という光景も珍しくありませんでした。多くの国内外の地震の現場に足を運んだ私自身の経験に照らすと、こうした状況はどこでも似たり寄ったりであります。しかし、その被害が、住民一人一人の生活や地域の経済等にどう影響するかは実に様々であり、二つと同じ災害はないということを、改めて実感致しました。私が訪れた頃、熊本ではまだ余震が続いており、被災した方々は未だ安心して自宅に帰れない状況でした。避難所も不足し、有っても多くが未だ十分整備されておらず、電気や水道やガスが復旧していない地域も多く、多数の被災者が車中泊を余儀なくされていました。彼等がいわゆるエコノミー症候群にかかるのを防ぐために、体を動かす指導に当たっている赤十字の救護班もありました。日頃、熊本赤十字病院は、国内外の救援活動に真っ先に駆けつける、最も元気の良い日赤病院の一つです。しかも、被害が最も大きかった益城町に一番近い大病院ですから、救急患者の受け入れや救護班の派遣にと、発災直後から大車輪の活躍をしました。しかし、職員の半数近くが被災し、多くが避難所や車の中から出勤している状況の中で、その活躍にも限度がありました。そこで同院と同時に、様々な緊急の対応に追われていた支部を支援するため、全国の赤十字病院や本社・支部から、延べ2千3百人に上る多数の応援の人員が派遣されました。こうした赤十字一体となった活動ができたのは、東日本大震災での経験が生かされたからこそと確信しております。赤十字奉仕団やボランティアは、全国からの救護班のガイド役をはじめ、被災者に寄り添って、必要なことは何でもやろうと頑張っていました。

今回の大地震のために、熊本県の義援金配分委員会に寄せられた義援金は、6月13日現在、約210億円に上っており、その内の約106億円、約半分は日本赤十字社から送金されたものです。配分委員会では、震災から17日後に第一回の配分を決め、第二回の配分と合わせて死者・行方不明者及び全壊世帯に一件あたり80万円、半壊世帯に40万円、重傷者へ8万円の配分を決定しており、被災者の方々へお届けしているところです。また大分県でも同様に日本赤十字社の受付分約4,000万円を含めた約2億9,000万円の配分が始まっております。なお、海外の姉妹社等から日赤に寄せられた救援金も約1億3,000万円に上っております。

さて、世界的に見ても近年、自然災害が多発しています。熊本地震の本震の当日、地球の裏側のエクアドルでは、マグニチュード7.8の大地震がありました。死者は熊本地震の10倍に達したものの、被災地域の人口が比較的少なく、津波も発生しなかったため、被災家屋は熊本の10分の1以下に留まりました。それでも沿岸一帯に広がる観光地や海老の養殖施設への被害など、産業が大打撃を受けました。国際赤十字・赤新月社連盟は、エクアドル赤十字社の救援活動を支援するため、1年間に10万人を対象とした、約20億円の国際支援を要請し、日赤も4,000万円を拠出しました。その現地視察と、活動する多くの赤十字ボランティアや関係者を激励するため、私は去る5月26日から4日間、エクアドルを訪れました。

他方、シリアの内戦など、各地での紛争も後を絶ちません。その結果、世界の難民、避難民の数は、第二次大戦後最高の6,530万人に達したと、先日国連は発表しました。難民の流出国、通過国、受入国の赤十字ないし赤新月社は、難民の法的地位に拘らず、人道的な待遇を確保すべく、それぞれに活躍しています。こうした、さまざまなグローバルな人道的課題を話し合い、共通の取組みの道を探ろうと、国連は、政府及び国際的な人道支援団体を集めて5月23日から2日間、トルコのイスタンブールで「世界人道サミット」を開催しました。私は連盟会長として、72か国の赤十字、赤新月社を率いて、赤十字国際委員会と共に参加しました。エクアドルには、そこから直接向かいました。国際赤十字は「世界人道サミット」の準備段階から深く関わり、連盟会長、赤十字国際委員会総裁、各国のリーダーが、国際人道法の遵守や紛争予防、防災、人道支援の資金確保と有効利用など、主に4つの分野で積極的に発言し、また幾つかの分科会を主導するなど、大きな存在感を示しました。

ここでは、核兵器の問題は取り上げられませんでしたが、その期間中に、アメリカのオバマ大統領が、広島を訪問されるという歴史的な出来事がありました。赤十字は、核兵器の使用が国際人道法の定める理念と両立しないこと、そして、一度使用された時、その結果について誰しも責任を負えないことから、その廃絶をかねてより強く訴えてきました。戦後70年の節目であった昨年には、連盟会長である私と赤十字国際委員会の代表が、初めて揃って広島と長崎の平和祈念式典に出席し、献花を致しました。今回のオバマ大統領の広島訪問は、核拡散の危険性が高まっている今、世界に向けて、核の脅威のない世界を築く決意を示した貴重な一歩であり、国際赤十字は私と国際委員会のマウラー総裁の連名で歓迎の声明を発表し、日本のメディアでも取り上げられました。

紛争や、災害の予防も救援も、核兵器の廃絶も、赤十字がこれまで取り組み、これからも取り組むべき重要な課題であります。我が国は多くの大災害を経験し、また唯一の原爆被爆国でもあります。であれば、私は日本赤十字社も防災、災害救護、核兵器廃絶等の国際的な課題に積極的に関わり、国際社会の中で指導力を発揮していくべきだと考えております。残念ながら、私たちを取り巻く人道的な環境は一段と厳しさを増しており、時代も激しく変化しております。国際的な運動でもある赤十字の中で、私たちに今何ができるか、本日お集まりいただいた皆さまとともに考え、行動して行きたいとの思いを最後に申し上げ、私からの挨拶と致します。