平成29年3月 第89回代議員会

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本日はご多用のところ、代議員会にご出席をいただきまして誠にありがとうございます。

本日の代議員会では、平成29年度の事業計画と収支予算等をご審議いただくこととしておりますが、はじめに私から、赤十字を取り巻く昨今の情勢や、今後の展望について所見を述べさせていただきたいと思います。

私は平成21年に、アジアから初めて国際赤十字赤新月社連盟の会長に選出され、今年が、2期8年の任期最後の年となります。

11月に任期が満了するその日まで、連盟会長としての責務を果たして参りますが、既に後任の会長、副会長、理事等のポストを巡り、激しい水面下での選挙運動が始まっております。

連盟会長として、昨年月には、エボラ出血熱への対応を視察するために、西アフリカのシエラレオネとギニアを訪問しました。

また5月には、熊本地震と時を同じくして大地震に見舞われた、南米のエクアドルを訪れました。

同じく5月に、トルコで開催された国連の「世界人道サミット」は、現下のグローバルな人道問題を網羅した政府、国際機関、NGOなどの代表が集う最大規模の会議で、凡そ9,000名が参加しました。国際赤十字は準備段階から深く関わり、関係者も私を含め72社から125名が参加し、特に国際的な人道支援の在り方について積極的に発言しました。

の他にも、12月には、大水害に見舞われた北朝鮮を視察して参りました。8月末、北朝鮮は、70年ぶりと言われる大きな洪水に見舞われ、死者・行方不明者500人以上、全壊した住宅が3万戸にのぼりました。連盟は被災者支援のために当初16億円相当の緊急アピールを出し、日本赤十字社はこれに応え1千万円を拠出しましたが、北朝鮮は国連等の経済制裁の下にあり、また国際メディアの入国が厳しく規制されていることもあって情況が十分に伝わらず、資金が集まりませんでした。私の訪朝の目的は、自らの目で被災地の人道上のニーズを見極め、政治とは一線を画して支援を世界に向けて呼びかけることでした。

こうした活動を振り返って感じるのは、日本のみならず世界中で人道問題が増加し、それへの関心が強まっていることです。特に、各地で起きている紛争は混迷の度を深めており、その影響もあって、昨年は、難民・避難民の数が、第二次大戦後最大の6,500万人にも達しました。その解決策が見出せないまま、先行きが見通せない非常に不透明な状況が、残念ながら当分の間は続くと考えております。

移民や難民をめぐっては、昨今、多くの国で排外主義が強まっており、社会的な摩擦や国家間の亀裂が深まる中で、あくまで人道的な立場から難民問題に取り組む多くの赤十字社が、中立や独立の原則を守りながら、いかに対処すべきか頭を悩ませています。

そのような状況のもとで、今年1月にヨルダンで開かれた中東・北アフリカ地域会議では、連盟が「2020年の戦略」の三本柱の一つとして掲げる「非暴力の文化と寛容性の醸成」が主要なテーマとして取り上げられ、私は連盟会長として参加しました。紛争と難民の“震源地”とも言える中東地域で、このような人道問題の本質に触れるテーマが宗教者も交えて議論されたことは、非常に時宜に適った意義のあることでした。

紛争と並んで、自然災害も国内外を問わず多発しています。国内では熊本地震、鳥取県中部地震が記憶に新しいところですが、海外でもエクアドルやイタリアで大地震がありましたし、洪水や干ばつなど気候変動に伴う災害も各地で起きています。

こうした大規模な災害に対応すべく、190ヶ国にある赤十字社ないし赤新月社は、協力して緊急の救援から復興・復旧、地域社会の対応能力の向上に、一貫して取組める体制作りを進めているところです。そこには、ボランティアの協力を欠かすことは出来ません。

ボランティアの活躍は、西アフリカで猛威をふるったエボラ出血熱の時にも目を見張るものがありました。エボラは取り敢えず終息したものの、グローバルな時代だけに、その再発や、新しい感染症流行のリスクも噂されており、油断はできません。日本国内においても、国は感染症対策に力を入れており、その一翼を担う日赤として感染症への対応能力向上は、喫緊の課題となっております。

世界的に大きな人道的試練が立ちはだかる中で、日赤のみならず海外の赤十字社も、資金確保に苦労しています。災害や紛争が多発し、ニーズが桁違いに増えているにも関わらず、世界的に経済状況の低迷が続いていることや、援助疲れや、人道支援に関わる団体間での競争が厳しくなっていることなどが背景としてあります。

よほど赤十字活動に特色を出し、支援者との間にウィン・ウィンの関係を築き、新鮮な募集方法を考えねば、今後十分な活動ができなくなるという危機感を、私たちは持たなくてはなりません。

同時に、地域に根付いた伝統的な支持基盤を大切にし、より強固なものとしていくことが大切であり、その観点から、この4月から新たな社員制度をスタートさせますので、引き続き代議員の皆さまには、その定着に向けてご協力をいただきますよう、お願い致します。

日赤の中核を担う医療事業をめぐっては、全国的に医療の再編成という大きな流れがあり、地域内の限られた医療資源をいかに効率的に活用していくかが問われています。その中で、個々の赤十字病院が地域内での位置付けを明確にしていく必要があり、赤十字以外の病院との役割分担や、連携づくりも一部で進めております。

例えば埼玉県では、高度救命救急センターを有するさいたま赤十字病院と、隣接して新生児に対する高度医療などを担う埼玉県立小児医療センターとが緊密に連携して医療機能の分担をはじめています。このような動きは、今後益々活発になってくるでしょう。

現在、国をあげて医療・福祉・介護の地域包括ケアシステムの構築を目指している最中であり、個々の赤十字病院が特色発揮に努めるだけでなく、日赤が持つ福祉やボランティアなど、他の活動とも密接に連携して相乗効果を上げられれば、他にない特色を打ち出せると考えます。

言うまでもなく、赤十字は広く国民の支持の上に成り立っている組織であります。とりわけ、超高齢社会に突き進んでいる我が国にあっては、日赤としても若い世代の参加をより一層追求していかなくてはなりません。

若い人たちの意見をどう汲み上げ、どうすれば活動に参加ないし支持してもらえるかを検討してもらうため、昨年7月に赤十字ユース委員会を立ち上げたところであり、各地域での取り組みにも期待しておりますので、皆さまにも彼等の声に耳を傾けていただければと思います。

世界的に、政治も社会も混迷の度を深め、赤十字を取り巻く環境が厳しさを増していればこそ、私も代議員の皆さまと心を一つにして、共に歩みを進めていくことをお約束申し上げ、挨拶と致します。