平成29年6月 第90回代議員会

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挨拶する近衞社長

本日はご多用のところ代議員会にご出席をいただき、誠にありがとうございます。

 本日の代議員会では、平成28年度の決算などについてご審議いただくこととしておりますが、はじめに、現在の日本赤十字社を取り巻く状況について、ご報告を申し上げたいと思います。

 超高齢社会を迎え、国はそれぞれの地域で求められる医療や福祉、介護のニーズに包括的に応えるため、いわゆる「地域包括ケア」を方針として打ち出しています。この方針に、医療や福祉の活動を幅広く展開している日本赤十字社としてどう対応していくかはこれからの大きな問題です。

 具体的な関わり方については、都道府県ごとに、また施設ごとに事情が異なりますが、いずれにせよ、行政や地域の同業・他団体などとの関係づくりが今後、ますます重要になってくることは明らかであります。自らの役割を明確に打ち出し、それを主張してゆかなければ地域の中での存在感が弱まってしまうことになります。

 医療については、国をあげて医療費削減への取り組みが進んでおり、これまで以上に限られた医療資源を効率的に活用していくことが求められています。そして、こうした動きの中で、各医療圏内での病院間の機能の分化や連携づくりが進んでいます。

 埼玉県では、「さいたま赤十字病院」と「県立小児医療センター」が今年1月から医療連携を開始しております。これは、隣接した敷地に一体的に整備された二つの病院が緊密に連携し、周産期医療や救急医療の拠点として高度な医療を提供するというものです。他にも、北海道の北見市では、「北見赤十字病院」と「道立北見病院」との連携が進んでおります。それぞれの得意とする診療科目が違うことから、相互に補完することで、高度医療の充実が期待されています。また、兵庫県では、慢性期に強い柏原赤十字病院と急性期に強い県立柏原病院を統合・再編する準備も進んでおります。地域医療の向上に資するこうした同様の動きは今後、検討が進んでいくことと思います。

 看護師の養成についても連携の動きが出ています。松山と和歌山の赤十字看護専門学校は、それぞれの地域で赤十字以外の大学が看護学科を新設するのに伴い、閉校する予定です。ただし、協力協定を締結して、大学では赤十字の教育を取り入れてもらう方向で検討が進められています。一方で、大宮の「さいたま赤十字看護専門学校」は、東京の日赤看護大学の新たな学部として大学化する計画が進んでおり、高度医療はもとより、地域包括ケアの担い手としての人材育成を目指すこととしています。

 地域包括ケアの確立に向けては、日本赤十字社は、病院だけでなく福祉の施設を多く経営し、救急法や健康生活支援講習を手がけ、奉仕団の幅広いネットワークを持っています。そうした地域内での多様な活動を関連付けることによって相乗効果を発揮できるならば、地域包括ケアに向けて様々な貢献が出来るものと期待しています。

 本日の事例発表でも報告がありますが、岐阜県では、支部、赤十字病院と赤十字奉仕団が、社会福祉協議会や民生委員と連携しながら健康生活支援講習を通じた地域づくりを行っています。

 人々の命や健康、安全を地域レベルで守っていくことは、住民一人一人が、そして地域社会が災害により良く備え、被災した時には災害から立ち直る回復力「レジリエンス」を高めることにもつながります。

 昨年の熊本地震など、各地で自然災害が相次ぐなか、防災・減災への取り組みへ関心が一層高まっています。そこで、日本赤十字社では、防災教育事業として、「赤十字防災セミナー」を昨年度は16都道府県でパイロット事業として実施し、今年度から全国で展開してゆきます。このセミナーでは、その地域における過去の災害の記録や被災者の体験談を通じ、「災害時にどのような事態が想定されるか、そして現在の対策は十分であるか」を想像するための力を養います。また、防災マップ作りを通じ、「住宅が建っているこの場所で、今、災害が起きたらどうなるか、日頃から個人、地域でどのような備えをすべきか」について検証し、対策を住民が主体的に考えていく取り組みです。

 防災・減災については、行政との連携も進めております。例えば、内閣府との間では平成27年度に、防災教育も含めた災害対策に関する相互協力の協定を結んでおります。また、気象庁とも防災教育の普及について協定を結んでおります。気象庁は、警報の周知徹底が中々できないとの悩みをかねてより持っており、全国の小中学校・高等学校の3分の1が加盟している青少年赤十字のネットワークを活用しようと考えたわけです。そこで、青少年赤十字が気象庁の協力を得て作成した防災教材、「まもるいのち ひろめるぼうさい」を配布したところ、大きな反響があり、広く使われています。

 赤十字が音頭をとって、災害に強い地域づくりに貢献していくことは、住民の安全や命を守る赤十字らしい取り組みになるのではないでしょうか。

 災害救護は言うまでもなく私たち赤十字の活動の柱の一つでありますが、国や地方自治体や他の団体も、経験を積み重ねて一段と力を入れるようになっています。このため、防災・減災から、緊急救護、復興支援の全てに関わる日本赤十字社としては、それぞれの局面で、今後どのように赤十字らしさを発揮していくかが、問われることになります。 

 災害時はもとより、超高齢社会とともに労働人口が減少し、社会保障の負担が一段と重くなる中で、求められるのは一層の自助共助です。そして、そこで大きな役割が期待されているのがボランティアの力です。

 昨年5月に国連の主導で開催された「世界人道サミット」は、そのまとめの中で、国際社会は地域社会の発展にもっと目を向けるべきだと訴えました。世界190ヶ国にある赤十字ないし赤新月社の多くは、地域に根付いたボランティアの組織を持ち、健康、安全、福祉、災害対策といった活動を幅広く展開しています。そこで、国際赤十字・赤新月社連盟は、そうした活動を更に強化し、災害や疾病や貧困に強い、グローバルな「10億人のレジリエンスの輪」を作ることを目指しています。 

 国内外で人道上のニーズが急激に変化している中で、私たちも新しい活動を模索する、あるいは既存の活動を進化させなくてはなりません。

 日本赤十字社も歴史を振り返るならば、災害救護であれ、病院や福祉施設の経営であれ、その活動は、地域のニーズに応えようと地元の有志達が建ち上げてきたものです。時代とともに、地域のニーズが変わってゆけば、新しい事業を考えていくことも、今ある事業を見直すことも今後の発展を考える上で不可欠であるといえるでしょう。

 これからも、それぞれの地域で奮闘されているみなさまと心を一つにして、赤十字運動の発展のために共に歩みを進めてゆきたいとの決意を最後に申し上げ、挨拶といたします。

                                日本赤十字社 社長 近衞忠煇