平成29年11月 連盟会長退任スピーチ~8年間の想いを込めて

ご臨席の皆様

 ここで8分の時間を頂戴して、この8年間を…いや78年間を振り返らせて下さい。

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2017年11月8日 トルコでの連盟総会最後のスピーチ

ええ78年前、確かに1939年の5月8日、アンリ―・デュナンの誕生日である世界赤十字デーに私は生まれました。多分それは、運命だったのでしょう 50年ほど前、私は日本赤十字社に、当初はボランティアとして加わり、ほどなく、十分な国際活動を行うにはあまりにも小さな予算しかないことを知りました。そこで、私は現金でも物品でも何でも寄付を集めるべく、奔走することにし、一定の成果をあげました。そのときに築いたメディア、企業のリーダーなどとの個人的な付き合いを、私は今日でも宝にしています。

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2009年11月 ナイロビにて連盟会当選

そして8年前、2009年の11月に、ケニアのナイロビで開かれたこの総会で、私はアジアから初の国際赤十字・赤新月社連盟の会長に選出されました。その日、私は、アフリカの伝統に倣い、杖と飾りのついた帽子を戴き、連盟の玉座につきました。なんと光栄なことでしょう。その栄誉の気持ちは今もかわりません。赤十字は、まさしく私のライフワークとなりました。連盟90年の歴史の中で、アジアからの会長は私が初めてでした。

私は「連帯の精神(Spirit of Togetherness)」を会長のスローガンに掲げ、それを醸成するには、まずもって「良き聞き手」であることが義務だと考えました。無論、行動も大事ですが、まずは聞き手に徹することにしました。それと同時に、長距離フライトの機中でもガタガタ道の車中でも、どこでもよく眠れ、そしてどんな類の料理も、どんな相手と踊るダンスも楽しめ、好奇心旺盛でありたいと思いました。

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1974年4月 災害対策調査のためバングラデシュへ

さて、皆さん、月曜日の冒頭に、私は、会長の任期になぞらえて一年に一つ計8つの連盟の「課題」をあげましたが、長すぎてうんざりされた方もあるかもしれません。私は、それが少しでも皆さんの考える材料として役に立てばと願ってのことでした。

ここでは任期中の8つの「成果」を示そうというつもりはありません。 8つの記憶に残る出来事をあげることもしません。

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2016年2月 エボラが大流行した西アフリカ、ギニア訪問

もし、当選から、2か月も経たないうちに発生したハイチの大地震、その1年後の東日本の大震災、或いは2年前のエボラの大発生を取り上げたとしたら、他の多くの事態を見落としてしまうことになるからです。そのうちの幾つかは多分、新聞の一面を飾ることはありませんでしたが、重要であることに変わりはありませんでした。

そしてガバナンスも同じです。私たちがやったことの多くは骨が折れました。そして欠かせないものでしたが、往々にして見えないものでした。ですから、ただシンプルに、8つの「ありがとう」を言わせて下さい。

2012年4月‗アラブ首長国、連国王表敬訪問IMG_2154_名誉総裁Sheikh Hamdan bin Zayed Al Nahyan.JPG (2カラム画像(枠なし):322x210px)

2012年4月 アラブ首長国連邦にて名誉総裁(王子)と

まずは、2年に1度開かれるこの連盟総会に感謝します。総会は、皆さんがガバナンスに責任を課し、皆さんとガバナンスが何をするかの情熱を共有する場所であり、そして皆さんが私を会長に選出して下さった場所だからです。

次に、総会を構成する各国の赤十字・赤新月社、そのリーダーやスタッフたちに感謝します。各社は形態や規模を異にし、それぞれに特徴があります。皆さんは大きな仕事をしています。そして大きな課題にも立ち向かっています。しかし、地域のコミュニティーに尽くし、もっと近くに寄り添おうという共通の目的のもとに結束しています。任期中は70か国を超える社を訪問するという大きな恩恵に浴しました。たくさんの素敵な思い出をありがとうございました。

3つ目の感謝は、理事会の同僚に送ります。

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2013年5月 広島にて核兵器廃絶赤十字国際会議開催

2009年から2013年の一期目の最大の業績は、「2020年に向けての戦略」の策定だったでしょう。率直に言って、私の二期目は出だしで躓き、理事会に深い亀裂が入りましたが、歩み寄りによってそれを克服しました。どんなに違いがあろうとも、我々は最も助けを求めている人々に尽くさなければならない、という思いは皆同じだと分かっていたからです。そして私は、理事会がそれを成し遂げたと信じています。

2013年から2017年までの私の二期目の理事会の最大の業績は、説明責任とコンプライアンスの強化でした。危機管理と監査の仕事を財政の管轄から切り離したのもその一例だし、コンプライアンスや調停の仕事も強化しました。もう一つの大事な成果は、アズ・シィさんを我々の事務総長として赤十字運動の外から採用したことです。

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2014年9月 サモアにて小島嶼開発途上国国際会議

そして、フランチェスコ・ロッカさんへ。彼は、連盟理事、そして連盟副会長として8年にわたって私の「同僚」であり、これから私の尊敬すべき後任者として、皆さんを率いていくことになります。彼のこれからのご活躍を切に祈ります。私は、今回立候補したすべての候補者たちを称え、今からは、我々が共にフランチェスコ新会長を支えていくものと信じます。

4つ目の感謝は、ジュネーブをはじめ世界中の連盟事務局の仲間たちに送ります。よく働き、有能で、自分の仕事に情熱と粘り強さを持って励む皆さん全てが賞賛に値します。それは、今回の総会を成功させるために尽力してくれたモーハウアー部長とそのガバナンスチーム、事業部門のチャパゲイン事務総長次長とその前任者たち、政策・アドボカシー部門のマームード事務総長次長とその前任者たち、そして、財政・総務部門のウンダリン事務総長次長とその前任者たちにとどまりません。ウォルター、サイモン、ハビエ、ファトゥマタといった各地域のトップの皆さんは、記憶に残る、印象的な数多くの出張に同行してくれました。皆さんすべてに感謝します。

5つ目の感謝は私の任期中の2人の優秀な事務総長、ベケレ・ゲレタとアズ・シィの両君に送ります。私たちは互いに、ガバナンスとマネジメントが、どう距離を置き、どう歩み寄るべきかを良く理解し合っていました。私はあなた方2人から刺激を受けてきました。そしてシィさんには、これからの健闘を祈っています。

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次期会長候補者の演説に拍手

6つ目の感謝を送るのは、国際人道法の守護者であり、最も悲惨な状況下で人々の命を守ろうと努めている赤十字運動の仲間である、赤十字国際委員会です。私たち連盟と国際委員会の間に横たわる溝は依然としてあります。ただ、より緊密な連携を実現するため、長い道のりを共に歩んできたのも事実です。

7つ目の感謝は日本赤十字社に送ります。かつて私の背中を押してくれた存在、そして今、私が帰る場所です。そのすべての職員とボランティアに感謝します。彼らは、8年もの長い間、私が連盟会長の重責に挑むことを気持ち良く許し、次から次へ降ってくる連盟会長の国際的業務に従事する際にも、その留守をしっかりと守ってくれました。

そして8つ目、最後に、本日ここへいるのはほんの一部でしょうが、笑顔を絶やさず、常に手助けを惜しまなかったトルコ赤新月社の皆さん、そして何百万人もの、ここにはいないけれども私たちのボランティアに感謝します。人々に尽くすために、そして人道の実践に、来る日も来る日も自分たちの時間とエネルギーや思いを捧げ、時には、私たち全てにとっては何とも痛ましいことですが、命さえも捧げている彼らに。

さて、このスピーチを締めくくる前に、通訳の皆さんを称えないわけにはいきません。4つのいずれの連盟公用語のどれも私の母国語ではありません。だからこそ、私は4つ全ての公用語に対して最大限の敬意を払うよう努めてきました。正直、それは私にとって大きな「ハンディキャップ」であり、通訳の皆さんにとっては大きな「重荷」となったに違いありません。しかし皆さんの熟練した助けがなければ、私は「良い聞き手」には到底なれなかったでしょう。

 どうかご安心ください。私のスピーチもまもなく終わりますから。

最終日聴衆の拍手に応える近衞連盟会長triming_DSC2884 (2).jpg (2カラム画像(枠なし):322x210px)

総会終了後、会場からの拍手に応える。左はシィ事務総長

 親愛なる皆さん、

私は今78歳です。「もう78歳」ではなく、「まだ78歳」であり、これからも一赤十字人であり続けます。そして、連盟、赤十字運動、「連帯の精神」、そして世界最大にして最良の人道ネットワークと共に前を向いて歩んでいきます。

これまでの道のりを、皆さんと共に歩んでこられたのは大きな喜びであり、光栄なことでした。(四か国語で)ありがとうございました。

https://www.youtube.com/watch?v=IU-JCaSwoaE&feature=youtu.be