皇后陛下への感謝のメッセージ 平成30年全国赤十字大会

5月16日に、全国赤十字大会が明治神宮において開催されました。

 皇后陛下が30年に亘って、お示しになった赤十字活動への深いご理解と、励ましのお言葉などに対して、近衞社長は心からの感謝の意を表しました。

【全国赤十字大会 社長挨拶(抜粋)】
 思い返しますと、1989年の1月8日に平成の時代の幕が開き、皇后陛下を名誉総裁にお迎えして、本年で30年になります。「30年、一世代(ひとせだい)」という言葉があります。親・子・孫と続いてゆく、おのおのの代の間が約30年だという意味ですが、この年の間に様々な出来事がありました。

折しも、ベルリンの壁が崩壊し、第二次大戦後の冷戦が前触れなしに終焉を迎えたのが、平成元年の秋から冬にかけてでありました。それまでは、東西間を遮る「鉄のカーテン」や、激しいイデオロギーの対立があった時代でした。当時の国際的なやり取りには、無言の圧力や緊張感が漂い、様々な場面で国家間の水面下での戦争状態を肌で感じたものです。30年を経た今日、それらも人々の記憶から消えつつあります。

この新しい時代に、人々は、人と情報の国境を越えた自由な交流に対して、大きな可能性を夢に描きました。それから30年の間に、国際社会は団結して、世界の平和と繁栄、環境保護と開発の調和、といった人類に共通する課題に向き合い、認識を共有するようになりました。また、各地域には、民主化革命や、その余波を受けた混乱が相次ぎ、多くの地域紛争が起きましたが、一国の統治だけでは解決できないような問題に対して、関係する国々が互いに協力して取り組む道が真剣に模索されるようになりました。グローバル化が急速に進む中で、国際社会は調和を求めて努力していると言えるでしょう。またその間の、アジア、アフリカ等の新興諸国の目覚しい経済成長は、目を見張るばかりです。人々の生活は向上し、発展を遂げましたが、一方で世界の人口は51億人から74億人と爆発的に増加しました。

赤十字においても、連盟加盟社が148から191に飛躍的に増え、多様で活発な人道や福祉の活動を展開しております。

この時期の世界の激動に比べれば、我が国の状況は、政治、経済、社会それぞれについて、多くの困難や課題はあったものの、総じて安定したものだったと言えると思います。日本赤十字社におきましても、医療、血液、福祉、看護職養成など各事業の充実や改革について果敢に挑戦し、一定の成果をあげることができたと考えております。

他方で、雲仙普賢岳の噴火に始まり、阪神・淡路大震災、東日本大震災など、数知れぬ大きな災害もありましたが、赤十字のスタッフ、ボランティアの懸命な活動は、被災地の方々から、「真っ先に駆けつけてくれた赤十字マークを目にした時、どれほど心強かったか」という言葉を数多くお寄せいただきました。

こうした30年を振り返るとき、その折々に、皇后陛下から賜りました暖かい励ましのお言葉が、どれほど私たちを力づけ、勇気を与えてくださったことでしょう。長年にわたる様々な思い出を胸に、この会場の参会者と全国の赤十字関係者を代表し、深く感謝を申し上げます。皇后陛下におかれましては、どうぞこれからもお健やかに。これこそ、私たち一人ひとりの心からの願いでございます。

時代は常に大きくうねり、私たちは新たな課題に直面しています。気候変動に伴う災害の多発や大規模化、絶えることのない紛争、国境を越えての人口移動や貧富の格差の発生、さらには急速な少子高齢化の進行など、社会構造の激しい変化のただ中にあります。しかし、「苦しんでいる人を救いたい」という赤十字の原点、基本的理念は、将来にわたって変わることはありません。私たちは、これからも、日本赤十字社の使命を確認し合いながら、心を合わせて歩んで行くことをお誓いし、ご挨拶とさせていただきます。

平成30516 日本赤十字社 社長 近衞忠煇