アジア7か国から研修生が来日しました!

日本赤十字社(以下、日赤)では、アジア・太平洋地域の各国赤十字・赤新月社の血液事業の発展に寄与することを目的として、1978(昭和53)年から海外研修生受入れ事業を実施しています。これまで、22カ国・地域の425名の研修生に対し、日本の血液事業の技術や知識を共有してきました。

40年つづく海外研修生受入れ事業

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40年目となる今年は、バングラデシュ、カンボジア、ラオス、インドネシア、ミャンマー、モンゴル、パキスタンから計7名の関係者が来日しました。研修生は8月20日から9月2日までの2週間、日赤本社と全国7か所にあるブロック血液センターで、熱心に研修に励みました。

各ブロック血液センターで行われた個別研修では、それぞれの研修生が希望する内容に合わせて、輸血用血液製剤の検査や製造、献血の推進活動などに関する講義や視察、実習を行いました。

◆研修スケジュール

日付 活動内容
8月20日 来日
8月21日~22日 各国の血液事業を紹介するプレゼンテーション、日本の血液事業に関する講義(日赤本社)
8月23日~31日 それぞれの研修テーマに沿った個別研修(全国7か所にあるブロック血液センター)
9月1日 研修の成果発表会(日赤本社)
9月2日 帰国

研修を通して学んだこと、自国で活かしたいこと

2週間の研修を通して学び感じたことや、自国の血液事業の発展のために活かしたいと思ったことなど、各研修生の感想をご紹介します。

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バングラデシュ赤新月社ジナプール血液センター 医療技術者
ビシュワジット クマール ロイさん
(研修先:北海道ブロック血液センター)

血液製剤の製造や品質保証に焦点をあてて、個別研修を行いました。北海道ブロック血液センターで学んだ製造の技術を、自国の血液センターの仕事の改善に役立てていきます。また、バングラデシュでも、日本のように献血バスで移動採血を行う仕組みを整えていきたいです。

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カンボジア国立輸血センター 副所長(医師)
チェア ソッキムさん
(研修先:東北ブロック血液センター)

血液製剤の品質管理を中心に多くのことを学びました。血液事業の各部門の専門家と活発に意見交換を行うことができ、とても充実した研修でした。カンボジアの血液事業を一歩ずつ発展させていくために、研修で得た知識をしっかりと職員に共有し、改善に取り組んでいきます。

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ラオス赤十字サワンナケート県輸血センター 副所長
アヌサック プラヌフォングさん
(研修先:関東甲信越ブロック血液センター)

東京都内の献血ルームや献血バスで実際に献血の様子を見学することができて、大変勉強になりました。日本のように献血いただく方のケアを丁寧に行うことや、輸血用血液製剤の品質管理の向上に取り組んでいきます。

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インドネシア赤新月社中央血液センター 医師
スリ ハータティーさん
(研修先:東海北陸ブロック血液センター)

インドネシアの献血ルームは、ベッド数が3つほどですが、名古屋市内の献血ルームはベッド数も多く、規模の大きさに感動しました。また、自動化の機械を使用して製造されている血液製剤の品質の高さにも驚きました。インドネシアでもより安全で品質の高い血液製剤を製造できるようにGMP(製造の基準となる省令)を作成したいです。

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ミャンマー国立輸血センター 医師
ティン ウィンさん
(研修先:近畿ブロック血液センター)

血液の検査業務を中心に多くのことを学ぶことができました。輸血を必要とする患者さんに安全な血液製剤をお届けするために、研修で学んだ検査方法など、日本で実施している技術を、ミャンマーにも少しずつ導入していけるように尽力していきます。

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パキスタン赤新月社イスラマバード血液センター 事務管理職
ムハマド アーミル ニサールさん
(研修先:中四国ブロック血液センター)

広島市内の献血ルームや献血バスを見学し、日赤の献血推進の取り組みを学ぶことができて大変勉強になりました。パキスタンの献血者を増やすため、若い世代を対象とした献血セミナーや、リピーターを増やすような活動に取り組んでいきます。

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モンゴル国立輸血センター 技術局血液製剤製造部長
ハリウン ニーチンさん
(研修先:九州ブロック血液センター)

赤血球製剤の冷凍と解凍手法について、実習で一から学ぶことができました。学んだ技術をモンゴルの血液製剤の製造に生かしたいと思います。また、より安全で品質の高い血液製剤を製造するため、日赤のように製造過程でダブルチェックを行うなど、実践できることから少しずつ導入していきます。

今後の活躍をねがって

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研修生たちからは、帰国後に頼もしいお便りが届いています。インドネシアでは、血液センターの全職員を対象に、本研修の報告会を行われたとのこと。また、パキスタンでは、500人の若者を対象に献血セミナーを実施されたということです。発展途上にある国々では、取り組みが進んでいる国と比較すると、まだまだ事業改善の余地が多く残されていますが、学んだ内容をすぐに実践へと結び付ける行動力など、私たちの側でも彼らに見習うべき点があります。

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過去に来日した研修生の中には、母国の血液センターの所長になられた方もいます。日赤は、研修生の皆様が本研修で吸収された知識や技術を積極的に活用し、自国で活躍されることを願っています。今後もアジア・太平洋地域の血液事業の発展に寄与することを目的として、海外研修生の受入れを継続していきます。