シリア:紛争下で人道支援を実現するということ

resized_ラワンさんラガドさん.jpg

ラワンさん(写真左)とラガドさん(同右)

シリア赤新月社(以下、シリア赤)の職員であり、休日や勤務後の夜間当直の時間を使ってボランティアの救急救命士としても活動している、ラワン・アブドゥルハイさん(29歳)とラガド・アドリさん(26歳)が11月4~15日、日本を訪れました。

滞在中は、海外たすけあい募金キャンペーンの一環としてNHKと日本赤十字社(以下、日赤)が共催する『赤十字シンポジウム』の公開収録をはじめ、千葉大学や名古屋外国語大学などでの講演、メディアなどの取材を通じて、シリアの現状について「一人でも多くの人びとに知ってもらいたい」という思いを伝えました。

resized_ラワン_救急現場_ビデオと同じ1.jpg

ダマスカス市内に爆弾が投下された直後、救急搬送にかけつけたシリア赤の救急救命ボランティアたち。写真左奥がラワンさん ©SARC

シリアでは、約5年にわたる紛争状態が続いています。

シリア国内では比較的安定している首都ダマスカス。そこを拠点にする彼女たちの活動は、日本で知られている献血や救護訓練といった平時の赤十字の活動とはまったく異なるものです。

いつ戦闘に巻き込まれるかわからない中、爆弾が投下された場所や銃撃戦が起きた場所に救急車で向かい、負傷者の搬送を行うという、日本では考えられないほどの危険を伴ったボランティア活動を行っています。

Relief Aid Convoy reached to Al-Yarmouk Camp_20150409_c_SARC-700X4~1.jpgのサムネイル画像

ダマスカス市内のパレスチナ難民が多く住む地域で救援
物資を配布する際、救急車を使って健康調査も行っている
様子 ©SARC

日本での滞在中、最も多く聞かれた質問は「どうしてそんなに危険な思いをしてまで、活動を続けているのですか」というものでした。

彼女たちは迷わず「危険だと分かっています。でも壊れゆく街の中で、苦しんでいる人たちを目の前にして、『何かしたい』という思いだけで、全力を尽くして人びとを助けています」と答えています。

さらに、「家の中にいても、布団の中にいても、どこにいたって危険な毎日。それなら人のために時間を使いたいのです」と続けました。毎日、玄関から外に出る時「行ってきます」と家族に言い、心の中では「これが最後になるかも」と思いながら家を後にするそうです。

いのちを守る『中立性』

救護班1_201501_c_SARC.jpg

今年1月、雪の中を戦線からけがや慢性疾患のある患者を安全な場所へ移動させるボランティア ©SARC

彼女たちが繰り返し強調していたのは、「紛争下での活動では、『中立』であることがいかに大切か」ということでした。

「『シリア赤は中立です』とうたっていても、ある一方の勢力による占領地域での活動を別の勢力の関係者が目撃していたら、『あちら側の味方なのか』と思われてしまいます。その誤解が、活動するボランティアたちの命や、シリア赤の存在までをも危険な状況へと陥れてしまう可能性があるため、常に『自分は中立である』と声に出しながら活動しています」

『中立である』とは、例え目の前で倒れている戦闘員が、自分の家族や友人を傷つけた側の人であると分かっても、救いの手を差し伸べ助けること。実行するにはすさまじい精神力を必要とします。

シリア赤には3072人のボランティアがいますが、その一人ひとりがこの『中立性』を厳格に守り、すべての紛争当事グループの人びとに『シリア赤の中立性』を理解してもらうことで、シリア全14県での支援活動を可能にしています。

国際社会からのシリアへの支援についても、シリア赤のボランティアが『中立』を掲げ、国連などに代わり現地の人びとに届けています。

一方、この5年間で48人のボランティアがいのちを失いました。最前線からの一般市民の避難誘導だけでなく、食料配布活動なども一瞬のうちに危険になることがあります。日ごろから共に活動している仲間が、目の前で爆弾がさく裂して負傷しても、戦闘が続きその場が『立ち入り禁止』となった場合は救出に行くことができず、そのまま手遅れになってしまうケースもあるのです。

シリアの今、私たちにできること

女性救急隊.jpg

救急隊として出動する女性ボランティアたち ©SARC

シリア赤の救急隊ボランティアは現在、70%が女性。救急車を運転している女性も多くいます。女性たちの活躍はまさに、シリア赤の活動全体を支えています。

実際の生活面では、いつ武力衝突に巻き込まれるか分からない日々の危険に加えて、物価が7倍以上に高騰。一方で給料は今まで月平均10万円以上であったものが、月1万円以下に急落しました。

シリア赤のボランティアは激変する生活の中で、なんとか生きていくこと、そして目の前で苦しんでいる人を助けることだけを考えて毎日を過ごしているといいます。それぞれの夢は心の奥に閉ざされたまま、5年近くが過ぎています。

紛争被害に対しても、継続的な支援が重要です。シリアはこれから、厳しい冬を迎えます。状況がますます悪化する中で苦しむ人びとに対し、平和な日本からできる支援の一つは寄付ではないでしょうか。金額の大小に関わらず、皆さまのご協力をお願いいたします。

※赤十字シンポジウムは11月28日(土)、NHK Eテレ『TVシンポジウム』(14:00~14:59)で放送される予定です。

中東人道危機救援金を受け付けています

振り込みに関するご連絡先

日本赤十字社 組織推進部 海外救援金担当

TEL:03-3437-7081 FAX:03-3432-5507

お問い合わせフォーム

皆さまの温かいご支援とご協力をお願いいたします。

本ニュースの印刷用PDF版はこちら(PDF:692KB)