シエラレオネ:偏見を乗り越え、再発を防ぐために

~エボラ出血熱流行から2年によせて~

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活動を続ける、遺体埋葬チームのボランティア©IFRC

「私の村で、エボラで亡くなった一家17人のご遺体を目の前にした時に、自分の国が大変なことになっている、何かしなければ!と思い、遺体を安全かつ尊厳ある埋葬を実施する赤十字の『遺体埋葬チーム』に志願しました。赤十字の活動はエボラにかかった人や家族を救っただけでなく、シエラレオネ国民全体、私たち自身を救ったのです」と、元遺体埋葬チームのボランティアが熱く語ります。

誤解、伝統、差別と正しい知識のジレンマ

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遺族に説明し、ご遺体を袋に入れ、家を消毒し、埋葬するという手順で、遺体の安全で尊厳ある埋葬は毎回1時間以上かけて行われる©IFRC

2002年まで内戦が続いていたシエラレオネは、人間開発指数※181位、識字率は50%以下と教育レベルが低いことにも起因し、エボラ出血熱という新しい病気の存在への認識や理解が広まるのに時間がかかりました。当初は「ある部族を浄化しようとしている」とか「病院に行ったら殺される」などの噂が広がり、正しい予防と対応方法の普及が困難だったのです。

また、埋葬時に亡き骸を洗い清めるという伝統が根強く、防護服をまとった遺体埋葬チームは人びとから拒否され、投石を受けたり、安全に埋葬された遺体をもう一度掘り起こして清めるなどが起こりました。元遺体埋葬ボランティアは「おかしな方法で埋葬されたと訴える死者の夢にうなされた」と当時を振り返ります。

エボラに関する正しい情報、予防・対応方法の普及が困窮する中、赤十字は以前から活躍していた地域保健ボランティアやラジオ、携帯電話のショートメッセージなどを活かし、情報がなるべく正しく伝わるよう発信を続けました。首都フリータウンから90km以上離れたジャングルの中にあるルフランシャ村の人びとは「2012年にコレラが流行した時以来、赤十字が来て浄水剤の配布や井戸トイレの設置をしてくれた。エボラが流行した時も赤十字が正しい情報を伝えてくれ、その指示に従ったので私たちの村ではエボラは発生しなかった」と話します。車やバイクは通れない、徒歩でしか行くことができないような村へ、部族・言葉・文化が同じボランティアが通い、直接伝えられることで、村人に受け入れられ、エボラの拡大を防ぐことができたのです。

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「エボラの後遺症で関節痛と足のしびれに時々悩まされます」と語るハジャ・カブさん©IFRC

シエラレオネでのエボラ終息宣言後の今も、エボラ生還者や感染者と密に関わった人びとは差別や偏見にさらされています。夫と2人の子どもをエボラで亡くし、自身はエボラから生還したハジャ・カブさん(33歳)は「以前住んでいた村ではエボラが正しく理解されず生還者としては住みにくいので、違う村に引越しました。夫を亡くし、収入源が無いのが悩みです。それでも赤十字のボランティアとしてエボラのことを自ら話し、正しい理解の普及に尽力したいです」と話します。

シエラレオネは、安心して訪れられる場所

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現在も、シエラレオネの国境町で行きかう人の体温を測ったり、エボラ予防を呼びかけている©IFRC

シエラレオネ赤十字社の事務総長コンスタンス氏は「昨年末、ジュネーブで行われた赤十字国際会議で、日本赤十字社が東日本大震災後の取り組みと福島の食の安全を訴えていたのに感動しました。ぜひ日本の皆さんに『シエラレオネはもうエボラはなく、安心して訪れられる場所です』と知っていただきたいです。シエラレオネ赤十字社の活動としては、エボラ以前の活動の継続と、エボラからの復興活動を、持続可能な形で続けて行きたいと思っています。そのためにはエボラで集中的に集まった資金が途絶えても、活動を継続できるように資金を調達できるようにしていかなければなりません」と意気込みを語ります。

西アフリカのシエラレオネ、ギニア、リベリアで2014年3月以降、死者1万1323人(2016年3月27日現在、WHO発表)を出したエボラ出血熱の流行から2年、各国の赤十字社は感染予防の啓発活動、安全で尊厳のある埋葬などを行い、現在はエボラ撲滅から復興へとつながる事業を展開しています。国際赤十字は2014年以降、西アフリカでのエボラ対策事業のため日本赤十字社から約1億4000万円と日本政府から16億円の拠出を含む、総額約132億円で各国の事業を支援しています。

※人間開発指数(HDI)とは、毎年国連開発計画から算出・発行される、各国を人間開発の4段階に順位付けするために用いられる平均余命、教育及び所得指数の複合統計のこと

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