最速で支援を届ける戦略とは ~地元赤十字の力を伸ばす連盟の取り組み~

赤十字は、190の国と地域で活動を展開していますが、その調整役として、国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)という組織があるのをご存じでしょうか。日赤は、広く面的にアジア大洋州地域の人道課題に応えるため、連盟の取り組みを支援しています。また、その支援がより効果的となるよう、日赤職員を連盟アジア大洋州地域事務所に派遣しています。現地で活躍する職員からの報告も交えながら、アジア大洋州地域への支援についてお伝えします。

赤十字の力を伸ばす連盟の活動

連盟は、1919年に設立された、各国赤十字・赤新月社の連合体です。ジュネーブに本部を構え、世界各地に置いた地域事務所が、災害発生時の赤十字社間の活動を調整したり、長期戦略やガイドラインの策定をサポートするなど、各国赤十字の活動を促進・推進することを任務としています。

連盟が最も力を入れている活動の一つが、各国赤十字社の能力を強化することです。赤十字では、2020年までの全体目標として「2020年戦略」を定めていますが、その最も根本部分に強力な各国赤十字社を構築することを掲げ、戦略的に組織強化を進めています。各国で発生する人道課題に対して、真っ先に対応できるのはその国の赤十字社であり、その社のリーダーシップや組織力、サービス提供能力を高めることで、より質の高い人道支援を届けることができるからです。

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アジア大洋州地域に設置された連盟事務所の所在地

アジア大洋州地域への面的支援

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アジア大洋州地域事務所に組織強化担当として派遣されている日赤の赤松職員

日赤は、自身が属するアジア大洋州を重点地域としており、地域全体の発展に貢献するために、域内38カ国を管轄するアジア大洋州地域事務所(マレーシアの首都クアラルンプールに設置)と、その下でよりきめ細やかなサポートをするバンコク(タイ)とスバ(フィジー)の各事務所の活動に協力しています。 アジア大洋州地域事務所に対しては、支援をより効果的なものとするため、財政支援に加え日赤の赤松直美職員を2014年から派遣しています。

各国の赤十字リーダーへの尊敬の念を胸に

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支部の組織強化について計画を立案するモンゴル赤十字社職員とファシリテーターを務める赤松職員(最左)

赤松職員の担当業務は多岐に亘ります。長期戦略づくりや課題洗い出しのための組織評価、ボランティア制度や活動資金確保といった制度面の見直しなど、各国赤十字社が進める取り組みを支援しています。

例えば、モンゴル赤十字社では、活動の前線にいる各地域の支部の力を強化することが重点課題となっていました。そのため、支部ごとの能力を評価し、改善策を見出す活動を技術的に支援。さらに、この取り組みを、同様の課題を抱える他国赤十字社と共有するなど、学び合いの促進にも力を入れています。

2014年から現在まで、連盟職員として訪れたアジア大洋州の国々はフィジー、キリバス、アフガニスタン、モンゴル、バングラデシュなど25カ国以上。なぜそんなに飛び回っているのか。それは、各国赤十字社が抱える課題や社会から求められる役割は国によってさまざまなため、その社の抱える課題に寄り添い、本当に役立つ支援を行うには、リーダーやボランティアと時間をかけてじっくり話し合うことが欠かせないからです。多忙な日々を送る赤松職員ですが、仕事の中で感じる思いを次のように語ってくれました。

「各国の赤十字社の組織のリーダー、そして活動の最前線にいるボランティアと話をすることが多いのですが、その国の赤十字社として果たすべき役割に対する熱い思いに触れるたび、尊敬の念が湧きあがってきます」

自国の課題を最も理解し、その解決に真摯に向き合っているその国の赤十字社自身が、人道支援を提供していくことがいかに効果的かがこの一言に表れています。

ユースを組織の力に

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国際赤十字・赤新月社連盟総会に参加する日本を含めたアジア大洋州地域のユースメンバー©IFRC

アジア大洋州地域事務所が力を入れるもう一つの活動は、青少年/ユースの育成とネットワークの構築です。「若い自分たちの世代の視点を国際的な議論の場に反映させ、地域の共通の課題に共に取り組むこと」を目標に活動しているユースを、赤松職員が中心となり支援しています。

ユースの積極的な活動や組織運営に対する関与は、組織強化にも重要な要素。赤松職員は、各国赤十字社のユースが参画しやすい組織体制づくりと並行して、ユース自身がお互いの活動から学び合えるよう、関心に合わせたオンライン研修や意見交換の場を設定したり、活動紹介ニュースレターを作成したりするなど、工夫を凝らしています。支援を受けたユースは、赤十字の国際会議等で人道問題に対し積極的に意見を発信するなど活動の幅を広げています。

各国の赤十字社の能力を底上げすることで、世界の人道課題により大きなインパクトをもって応える。日赤は、ネットワークを生かすことで、効果的に日本からの支援を世界へとつなげます。

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