【南部アフリカ地域】HIV/エイズ感染症対策

もっとも支援の必要な人々と地域への試み

南アフリカ赤十字社ソウェト支部責任者のモラロさん(左)と赤十字ボランティア(右)

南アフリカ赤十字社ソウェト支部責任者のモラロさん(左)と赤十字ボランティア(右)

国連合同エイズ計画(UNAIDS)の2016年の報告によれば、2015年のHIVの感染者数は世界で約3,670万人、そのうちサブサハラアフリカの感染者数が約69%を占めており、世界で最もHIV/エイズの影響を受けている地域と言えます。

日本赤十字社(以下、「日赤」)は、2010年より国際赤十字・赤新月社連盟を通じて、南部アフリカ地域に対し、HIV/エイズや結核といった感染症対策事業を実施しています。今回は、日赤の支援で、南部アフリカ3カ国の赤十字社が実施している活動をご紹介します。

スワジランド赤十字社職員と看護師、ボランティア、日赤九州看護大学の菅原直子特任講師 スワジランド赤十字社職員と看護師、ボランティア、日赤九州看護大学の菅原直子特任講師

南アフリカ ~持続可能な開発目標「エイズ流行を2030年までに終息させる」を目指して

南アフリカのソウェト地区でのHIV検査の様子

南アフリカのソウェト地区でのHIV検査の様子。左の白いテントの下で、問診を受け、プライバシーを守るために右の紺色の布で覆われたテントの中で検査を受ける

南アフリカ共和国における2015年のHIV新規感染者数は年間約40万人(UNAIDS2016年報告書)に上ります。

未だに差別や偏見が根強く残っているため、HIV検査や治療は無料ですが、「クリニックへ行くと、HIVだと疑われるから行きたくない」という人も多くいます。そのような中、南アフリカ赤十字社ソウェト支部は、日赤の支援でHIV/エイズのカウンセリングと検査のサービスを開始しました。昨年の6月からすでに約7,000人が検査を受けています。

ソウェトは、アパルトヘイト時代、黒人の居住区として指定された地区であり、1976年の住民蜂起など反アパルトヘイト運動を象徴する街でもあります。ここソウェトで南アフリカ赤十字社は長年に亘って救急法講習や高齢者生活支援などを行ってきたため、赤十字に対する認知度は高く、また住民から信頼を寄せられる存在です。「住民はどんなに近くのクリニックやほかの団体が同じサービスを提供していても、『赤十字がいい』と言って、遠いとことろからやって来る」と、南アフリカ赤十字社職員が誇らしげに話してくれました。

スワジランド ~HIV/エイズ闘病生活を支える赤十字ボランティア

赤十字関係者のインタビューに答えるシポウさん

赤十字関係者のインタビューに答えるシポウさん

スワジランド王国は、南部アフリカの内陸に位置する小国(九州よりやや大きめ)で、起伏が激しい土地にあります。

シレレ赤十字クリニックは、主要道路から外れた未舗装の道を車で1時間程走った低地帯で、干ばつや水害の被害の多い貧しい地域にあります。農業だけでは生活が厳しいので、仕事を求めて街へ出て行ったものの、HIVに感染して村に戻ってくるものも少なくありません。シポウさん(24歳女性)もその一人です。

シポウさんは街で家政婦として働きながら、家族に仕送りをしていましたが、体調を崩したため検査を受けたところ、HIV陽性の診断が下されました。やむなく仕事を辞め、実家へ戻って抗エイズ治療(ART)を受けています。治療の副作用で幻覚、倦怠感、嘔気、食欲不振に苦しむシポウさんを、赤十字ボランティアがシレレ赤十字クリニックと連携して週に2回訪問し、身の回りの世話をしながら支えています。

ザンビア ~国境のエイズ孤児に"学ぶ機会"を

日赤の支援で支給された制服を着用しているチブラ小学校の生徒たち

日赤の支援で支給された制服を着用しているチブラ小学校の生徒たち

サンビアはアフリカで最もエイズ孤児の多い国の一つと言われています。ナミビア国境の農村部にあるチブラ小学校の生徒の多くも両親を亡くしてエイズ孤児となり、親戚とともに暮らしています。また、この農村部も干ばつや水害の被害を受けやすく、現金収入が困難な地域にあります。

赤十字の支援で、同小学校の187名の生徒は、制服、文房具、衛生用品などの支給を受けました。これまでは、破れた服で通学するのが恥ずかしかったり、文具が買えないために休みがちだった生徒たちが、学校に来られるようになったと校長先生が報告してくれました。今後、赤十字は生徒たちの心理面でのサポートも実施して、HIV孤児を支えていく予定です。

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