トルコ: シリア難民は今 ~トルコで続く保健・生活支援~

シリアの紛争はすでに7年目を迎え、その間におよそ540万人が難民となって欧州や周辺国に逃れています(2017年12月現在、国連調べ)。彼らは今、避難先でどのような暮らしをしており、どのような支援が求められているのでしょうか?2017年11月にトルコを訪問したエアトレ結子看護師(大阪赤十字病院)が、現地の状況をご報告します。

家庭訪問で知った厳しい現実

1. 家庭訪問.JPG

ゼイネディンさん(中央)から厳しい生活の現状を伺う(写真左:筆者)©IFRC

ゼイネディンさんは、昨年、戦火のシリアからトルコ南部の都市、メルスィンに逃れてきました。今は、奥様と2人の子供とともに、古いアパートの一室で暮らしています。シリアでは、観光バスのドライバーをしていましたが、こちらでは言葉の壁もあって仕事が見つかりません。一家に収入はなく、政府からの生活支援金で何とか生計を維持しています。

長男は腎臓病を患っていますが、満足な治療が受けられません。支援金の多くは薬代などの医療費に消え、生活は困窮しています。「この子の命をどうか助けてほしい」とゼイネディンさんは繰り返し訴えます。長女は学校に通っていますが、それも公的な支援で実現しました。

将来の生活や子供たちの行く末を案じながらも「トルコでの新しい生活を築いていきたい」と語る奥様。その一方で、ゼイネディンさん自身はシリアに帰りたいとの思いが強く、家族間での葛藤が伺えました。紛争下で受けた心の傷、家族の病、慣れない土地での生活や将来への不安など、難民の方々が抱える過酷な現実を目の当たりにし、言葉にならないほどの衝撃と悲しみを感じずにはいられませんでした。

コミュニティ・センターを通じたきめ細やかな支援

4. センター入口.JPG

今年6月にオープンしたばかりのコミュニティ・センター©IFRC

ゼイネディンさんのように、シリアからトルコに逃れた人々の多くは、既に難民キャンプを離れて都市部などに暮らしています。トルコ赤新月社は、国内の10ヵ所でこうした人々の健康と生活を支えるコミュニティ・センターを運営しています。今年度は6ヵ所に新たなコミュニティ・センターを開設することになっており、そのうちの1つが日本政府の資金援助を受けて、6月にメルスィン市の中心部でオープンしました。 

この地域は低・中所得者が多く、そこにおよそ7万人のシリア難民が暮らしていると見られています。コミュニティ・センターを運営する際には、難民の人々はもとより地元の人々のニーズに沿った支援が行えるよう、事前にインタビューや家庭訪問などで聞き取り調査を実施し、現状分析を行った上で具体的な活動内容を決定します。政府や公共機関、他の援助団体等とも協力して、多様なサービスが提供できるよう配慮しています。主なサービス内容は、難民登録手続きの支援、成人や子供向けの心理的支援(カウンセリングなど)、子育てや教育に関する相談、職業訓練と就職先の斡旋、トルコ語教室の開催など多岐にわたります。

子供を対象にしたフレンドリー・スペースも設けられており、訪問時には小学生の子供たちへの「交通安全教室」が開催されていました。ボランティアが、クイズやゲームを交えて、トルコの交通ルールについて説明していました。また、難民が地域社会とのつながりを持てるよう、料理などを通じた交流イベントも積極的に行っています。

夢に向かって踏み出す一歩

2. 職業訓練.JPG

洋裁の技術を身につけ、将来への希望を紡ぐ©IFRC

職業訓練でコミュニティ・センターを訪れていた幼い子供を持つ20代のシリア人女性は「祖国では専業主婦でした。けれども、トルコに移り住んでこのセンターを知り、裁縫を習い始めました。今では、技術を生かして働きたいと思うようになりました。同郷の友人もでき、日本からの支援にとても感謝しています」と誇らしく話しています。

また、ヘアメークの教室で学ぶ別の女性は「将来は、自分のお店を持つことが夢です。ここでは難民にも就職先を紹介してくれるし、難民であることに関係なくお店を持つことが可能です」と笑顔で語ります。一方で、トルコ語が分からず、医療機関を受診する際の不安も語られました。トルコ赤新月社ではこの問題を解消するために、通訳者が医療機関に同行したり、トルコ語での問診票の記入を代行するなどして、彼らが安心して医療機関を受診できるよう工夫しています。「お金や物の支援も大切ですが、一人一人が抱える悩みや問題に寄り添い、共に解決策を見出す支援こそが、今、最も求められている思います」とケースワーカーのメフメドさんは、力強く語りました。

トルコをはじめ、世界の各地で多くの難民・避難民への継続的な支援が求められています。私たちは、「今世紀最大の人道危機」と言われるシリア難民の存在を決して忘れてはいけません。これらの人々を救うため実施している「海外たすけあいキャンペーン」を通じた皆様からの温かいご支援をよろしくお願いいたします。

振り込みに関するご連絡先

日本赤十字社 パートナーシップ推進部

TEL:03-3437-7081 FAX:03-3432-5507

お問い合わせフォーム

本ニュースのPDFはこちら(740KB)