ネパールの山岳地帯で生きていく力を支える

日本赤十字社(以下、日赤)は、ネパール赤十字社と協働し、皆様の温かいご支援を受けながら山岳地帯でのレジリエンス向上(災害に対する脆弱性を弱め、災害を跳ね返す力をコミュニティーに根付かせること)に取り組んでいます。この度、日赤広島県支部の新谷孝明事業係長が国内救護経験をいかし、グルミー郡での事業進捗状況の確認を行いましたので、ご報告します。


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首都カトマンズからグルミー郡までは直線距離にして181km。舗装されていない蛇行した道路が人員・物資輸送を困難にする

日赤支援で耐震性住宅建設の訓練を受け、今後の意気込みを語る大工(左)と新谷係長(右)(ネパール・グルミー郡ホスチョール区)

ネパールってどんな国?

ネパールは四方を他国に囲まれた山地地形の内陸国です。国内には産業も乏しく、毎年多くの若者が国外に職を求めて流出しています。世界最高峰のヒマラヤを有するこの国の山々はとても深く、首都カトマンズを除く多くの地方では、傾斜の厳しい渓谷に代々受け継がれてきた土地を守りながら人々が生活しています。

「私は首都カトマンズから2日間の車両移動を経て、日赤の事業地のあるグルミー郡に来ています。グルミー郡の中心地であるトムガス市からインド製の四駆車スコーピオンに乗り込み、ガードレールもない未舗装の山道を1時間かけて山間の村、ホスチョールに向かいます。広島県は山地が多く、土砂崩れのリスクの高い地域です。しかし、この国の災害リスクは想像以上のものでした。」

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険しい山々の中で代々受け継がれてきた土地とともに暮らす

乾季で埃の舞う斜面を登って、ホスチョール村に向かう

変わる地域社会と人々の生きる力

本事業は、ホスチョール区の各コミュニティーに災害対策委員会を立ち上げることからスタートしました。災害対策委員会は、近隣の村行政との良好な関係のもとで地域の脆弱性に関する調査・分析を行い、未整備であったハザードマップや防災対応計画を作成して村に掲示する、地域の様々なリスクにコミュニティーが自ら対応するための防災備品を設置するなど地域防災の推進拠点になっています。

日赤はこれらの地域防災の立ち上げを支援するとともに、災害時に村人が自分たちの身を守る行動ができるよう、コミュニティーの必要に応じて応急手当について学ぶ救急法を普及しています。また、安全な水へのアクセス向上で社会変容を促すボランティアの育成、母子保健や衛生環境の改善で活躍する女性の地域ボランティアリーダーを支援するなど、地域リスクに一人ひとりが適切に対応する力を一貫して支援しています。

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村行政や住民、学生向けにホスチョール区で日本での防災取り組みを紹介し、多くの質問を受けた新谷係長(左)

村の災害対策委員会に配備された洪水時に着用するライフジャケット(中央)

土砂災害時に用いるシャベルやロープ(右)

ネパールとつづける日赤の地道な防災支援

ネパールでの防災支援の現場で感じることは、日本での常識や価値観を相手に押し付けて議論してはならないということです。例えば、救急隊が平均8分で駆け付け、病院への搬送をしてくれる日本の現状と、山岳地形のネパールで救急車が来るかどうかわからない、地域医療を支える医療施設への搬送が5時間以上もかかるような現状を比較すると、日本での命を守る私たちの活動とネパールでの命を守る活動は異なることもあると思います。だからこそ、私たちはネパールの現状に沿った防災・減災の拡がりを支援し、そこに住む人々の一人ひとりが災害やその他の危険から身を守る力をつけることで命と健康、尊厳を守る活動を続けます。

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コミュニティーでの話し合いに参加し、住民の声に耳を傾ける

ホスチョール区のある村では、災害対策用資金として8万円が2年間かけてコミュニティーの人々から少しずつ集められたと聞きました。人々の災害に対する意識の高まりに確かな手応えを感じています。

本事業へのご支援、本当にありがとうございます。皆様の温かいご支援を引き続き、よろしくお願いいたします。

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