レバノン:未来を託された子どもたちの図書館

「みらい(未来)」を託された子どもたちが学べる空間「らいぶらりぃ(図書館)」を作りたいという思いで始まった「みらいぶらりぃ」。レバノンで活動している大阪赤十字病院の李 壽陽(り すやん)事務管理要員による子どもたちへの支援に関するレポートです。

※この事業は、世界的な奉仕団体である国際ソロプチミストアメリカの日本中央リジョン様より、30周年記念事業の一環として頂いたご寄付が活用されています。

紛争の影響を受ける子どもたち

現在、レバノンには100万人ものシリア難民がいると言われています。レバノン赤十字社は、シリア難民の子どもたちのみならず、彼らを受け入れているレバノンの子どもたちの両方が恩恵を受け、子どもたちが安心して学べる学校の整備に取り組んでいます。隣国シリアで紛争が勃発した2011年以降、レバノンでは人口が2倍以上に膨れ上がった地域もあります。多くの保護者が、生徒数の増加による教育の質が低下するならあえて通わせる必要はないと考え、学校に通うレバノン人の子どもの数が減りました。このような問題を解決するため、2014年以降は多くの学校が午前と午後の二部制で運営されています。この制度が導入されてからは、2011年以前のレベルにまで就学率が改善しました。しかし、貧しい家庭では学校ではなく生計を立てるため仕事を選ぶこともあり、教育を受けることができる子どもたちは限られています。就学を阻む理由は様々ですが、きれいで整備された学校にはより多くの子どもたちが集まり、在学率が高いことをレバノンの教育省は報告しています。このような背景から、安全で子どもたちが安心して過ごせるような場所の提供を目的としたレバノン赤十字社の事業を、日赤が支援することとなりました。

苦難の歴史を辿る学校を支援

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一見するときれいな学校も、よく見ると壁に無数の弾痕が残っているアル・コベー・スクール

今年、支援する学校は3校。過去の内戦により多数の銃痕が残る学校や、シリアでの紛争を逃れた難民が多く在籍する学校など、抱える事情は様々です。「みらいぶらりぃ」プロジェクトでは、子どもたちの学びに必要な図書室や講堂などの改修、本棚の設置など支援対象校が自ら必要とするものを提案し、レバノン赤十字社が各学校のニーズに合った支援を行います。
 先日、レバノン北部トリポリにある、アル・コベー・スクール(Al Qobeh School)を訪れました。学校のある地区は、レバノン国内で最も貧しく、2008年から2014年まで続いた武力衝突の際に特に激しい戦闘にあいました。アル・コベー・スクールは激しい戦闘の最前線に位置していたことから、攻撃対象ではないにも関わらず多くの銃弾を受け、その痕跡は現在も校 舎に生々しく残っています。

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子どもたち、地域のために奔走を続けるサマール・ハラビ校長

武力衝突時には、「夜には銃撃戦、その翌日に授業をしたこともあった」と、サマール・ハラビ校長先生は当時を振り返ります。安全が脅かされて子どもたちや教職員が学校に通えず、授業ができない日々もあったと言います。それでも粘り強く軍や武装勢力と交渉することで、今日まで学校を守り抜いてきました。また、学校設備のさらなる充実化をはかるため、様々な支援団体に積極的に掛け合ってきました。2004年に自ら設立して以来、校長として14年間この学校に在籍するハラビ校長は、今ではこの学校そのものが自身の子どものようだと笑顔でおっしゃいます。

子どもたちの「居場所」を作る

5歳から16歳までの子どもが通うこの学校も、シリアでの紛争の影響を少なからず受けています。現在、学校は午前と午後の二部制となっており、午前中に75人のシリア人の子どもと364人のレバノンの子どもたちが、午後には329人のシリア難民の子どもたちが学びます。
 ハラビ校長は、子どもたちを「争い、対立」の雰囲気から可能な限り遠ざけ、彼らが互いの違いを乗り越えて多様性を重んじられるような環境づくりに尽力しています。銃痕の残る外壁とは対照的に、校内の壁にはキャラクターが大きくカラフルに描かれ、そのそばには「Les Amies(フランス語で、友だちの意)」の言葉が添えられていることが印象的でした。そして、シリア難民の子どもたちにとってもこの学校が「居場所」となれるように、音楽祭や遠足といった学校行事を取り入れるなど工夫を重ねています。

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子どもが子どもらしくいられるように工夫がされている

また、この学校が子どもたちの両親や家族の交流を促進する場となってほしいと強く願い、今回の支援で改修を予定している講堂を、その「プラットフォーム」としたいと熱心に話してくれました。
 この学校に通うすべての子どもたちが安心して学習できるよう、日本赤十字社はレバノン赤十字社とともに「みらいぶらりぃ」を通して支援してまいります。







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