ケニア: 地域保健強化事業 最終評価の実施 ~10年5カ月の支援を終えて~


 過去に厳しい干ばつ及び水害の影響を受けたケニア国北東部のイシオロ郡は、乾燥した気候の上に、農耕地は少なく、住民の多くは牧畜で生計を立てており、収入が不安定です。保健施設も整っておらず、新生児及び乳幼児死亡率が国内で最も高い地域の一つです。

日本赤十字社(以下、日赤)は、2012年11月よりケニア赤十字社(以下、ケニア赤)と共に、イシオロ郡ガルバチューラ県セリチョー地区とガルバチューラ地区において、妊産婦死亡率及び乳幼児死亡率の改善を目的としたケニア地域保健強化事業(以下、IHOP※1)を実施し、2018年3月に事業を終了しました。今回の国際ニュースでは、今年8月に姫路赤十字病院医療社会事業部の高原美貴副部長と日赤本社国際部の鹿島優子職員が、ケニア赤十字社及び現地外部コンサルタントと共に実施した事業評価の様子をお伝えします。

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事業対象村のひとつガファルサ村

評価調査の準備と様子

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世帯調査リサーチアシスタントに対する研修の様子

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無作為に調査するため、ボトルを回転させ、調査対象を決めて世帯調査を始めます。

 評価調査は、現地との入念な準備から始めます。まず、現地に着いた私たちは選考された16人のリサーチアシスタントに対する2日間の事前研修に同席しました。彼らは、調査対象である8村の中から約520世帯の5歳未満の子どもを持つ母親に対する世帯調査を基に、この調査の精度が国際的なレベルで評価されるような厳密な住民へのインタビューや討議の手法などを身に付けます。

1日目の研修では、まず事業の概要説明から始まり、質問内容の見直し、現地語であるスワヒリ語とボラナ語への翻訳作業、調査をする上で気を付けなければならない事項(倫理的配慮など)の確認を行いました。そして2日目は、世帯調査のロールプレイと近隣村での模擬実習、質問内容の改訂などを行い、本番に臨みます。5日間に亘って実施された評価調査では、10年5カ月の事業がもたらした成果や課題が見えてきました。

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スマートフォンにインストールしたKOBOというソフトを使用して、質問をします。

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討議の様子

生計手段の導入 事業終了後の活動の持続発展性を見捉えて

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ニロ川

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川から農地に配水するためのパイプと発電機

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水タンク

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農業を実施しているボランティアのフセイン・ゴリチャ氏(左)とアダン・ビラリ氏(右)

成果の1つに、生計支援活動が挙げられます。日赤の支援終了後も、活動に携わるボランティアが経済的に安定し、地域に根づいた保健活動を継続できるように、IHOPでは彼らに対し生計支援活動を実施しました。具体的には、電化製品店や建築資材屋の開業、農業などを開始する上で初期費用の70%をIHOPが支援し、ボランティア自身が残りの30%を負担する仕組みです。

ガファルサ村のボランティア20人は、近くにニロ川という大きな川があるという地理的条件を生かして、農業を選択しました。まずは、IHOPの支援を受けながら、農業を始めるのに必要な種や肥料、農具等を調達しました。雨期の11~12月は、川が氾濫するため、栽培サイクルを工夫しています。すでにスイカやトウモロコシを収穫し、現在はトマトや玉葱、ケールを栽培中です。

元来、牧畜のみに頼っていた住民に、事業を通して新たな経済活動を取り入れることができ、さらに、彼らの取り組みを見て農業の利点に気づいた他の住民が、農業を模倣し始めていることが分かりました。また、農作物の栽培を通じて、現金収入が得られるだけでなく、彼らの栄養状態の改善にもつながっていることは、IHOPの大きな成果ということができます。

最も支援を必要としている人々のために

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事業対象地のガルバチューラ県セリチョー地区

モドガシェ村の母子

「IHOPは、砂漠の中の泉のような存在であった」という住民からの声に示されるように、IHOPは、行政の支援が十分に届かなかった地域で、健康教育(予防接種や産前検診、家族計画、手洗い、トイレの使用の促進)や巡回診療による保健サービスの提供(予防接種、産前検診)を通じて、妊産婦や乳幼児を中心に住民の健康を改善しました。これらの活動は、すべて皆様からのご寄付で成り立っています。これまでのご支援、誠に有難うございました。

赤十字はこれからも、最も支援を必要とする人々に、地域住民を主体とした中長期的で持続性のある活動を支援し、「災害や疾病に強い地域社会の構築」に貢献します。

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※1 本事業の英訳はIntegrated Health Outreach Projectなので、英訳の頭文字をとって「IHOP」と呼んでいます。