職員インタビュー:「人と人をつなぐ仕事」辻田岳(国際部)

今号では、2016年4月から3年間、スイス・ジュネーブにある国際赤十字・赤新月社連盟事務局パートナーシップ部門で寄付者対応を担当した辻田職員へのインタビューをお届けします。

連盟事務局は、どのような職場ですか?

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ジュネーブの事務局オフィスにて

国際赤十字・赤新月社連盟(以下、「連盟」という)のジュネーブにある事務局は、世界中の赤十字社、赤新月社が行う人道活動を支え、国際的な調整を図る「本部機能」を担っています。
 大きく分けると、災害、保健、難民などの支援活動を担当する「事業部門」、寄付募集やボランティアの育成、戦略作りや広報を司る「パートナーシップ部門」、そして財政や人事、法務などを担当する「総務部門」などがあります。
 また、連盟の総会や理事会の運営といった「ガバナンス」や、国連の会議などで赤十字を代表して人道課題に対する発言や提言を行う「アドボカシー」も事務局がリードしています。

どのような人たちが働いているのですか?

国籍も人種も、専門分野も異なる職員300人ほどが働いていて、まさに「多様性」を形にしたような職場です。例えば、私の同僚はアフガニスタン、セルビア、イギリス、スイス、イタリア、ハンガリー、韓国の出身者などで、価値観や考え方も様々。でもお互いの違いを常に尊重しますので、議論はすれどもけんかになることはありません。

具体的にはどんなお仕事を担当していたのですか?

私は、パートナーシップ部門で、主に日本を含むアジア地域の寄付者への対応を担っていました。一言でいうと、皆さまからのご寄付を「プロジェクト」につなげる役割です。
 例えば、大きな災害が発生した場合、連盟は、直ちに災害発生国にある赤十字・赤新月社と一緒に、被害状況や支援ニーズを調査します。国際的な支援が必要と判断されると、支援計画を策定し(「アピール」といいます)、その支援計画を実施するための資金等を募ります。
 ここからが私たちのチームの出番。世界各国の赤十字社、赤新月社だけでなく、政府や企業などに向けて、アピールの内容を説明し、ご支援をお願いします。時には各国政府の代表に向けて、緊急の説明会を開催することもあります。
 一方で、支援者からも、支援したい地域や内容、期間や金額など様々な要望が出されます。災害等で支援が必要な現場からの要請と、支援者からの条件などを調整して、最終的にまとめる作業を行います。

どのようなチャレンジがありましたか?

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トルコ赤新月社スタッフとの協議(右)

まず第一に、寄付者のご理解・ご協力をいかに得るか、ということです。実は、先ほどお話したアピールの支援計画の総額に対して、集まる金額は6~7割であることがほとんどです。災害の発生地がよく知られた国であったり、メディアで大きく報道されたりすると、支援は増えていきますが、一方で干ばつや政情不安など、一般的な印象が弱い人道危機はなかなか支援が集まりません。また、大きな災害であっても、2か月以上が経過すると、世間からは忘れられがちです。ここで私たちの広報力や熱意が問われます。

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バングラデシュ赤新月字社の女性等保護センタースタッフと(中央)

そして第二に、現場と支援者の間に立ち、双方が納得できるプログラムを形成することです。私自身も寄付者であれば、内容が具体的な「見えやすい」支援がしたい、「被災者に早急に使ってほしい」と思うでしょう。しかし、被災者のニーズが刻々と変化していく中、支援も柔軟に変えて行く必要があります。私たちの支援は、地元の赤十字社などのネットワークを使って、どの支援が有効か検討しプロジェクトを作っています。時として、使途や期間が限定された寄付金は、よりニーズが高い活動や息の長い支援に活用することが難しくなるのです。現場のニーズと支援者のからのリクエストの間を埋めるのはいつも課題と感じていました。

やりがいを感じるのはどんな時?

災害の現場と支援者の両方から「よかった」と言われるときです。そして、新たに生まれた支援プログラムが動き始め、軌道に乗った時です。私は、バングラデシュやウクライナ、トルコなどの活動現場に行き、世界中からのご寄付がどのように使われ、人々のために役立っているか、この先どんな支援が求められているか、多くを学びました。それをジュネーブに持ち帰り、ご支援下さった皆様にご報告する時にも手ごたえを感じました。

読者へのメッセージをお願いします!

ここ数年、世界各地でこれまでになく多くの自然災害や感染症の拡大、紛争などが頻発し、そうしたニュースに接することに疲れた、あるいは麻痺してきたという声も聞かれますが、みなさんはいかがですか?しかし、それぞれの被災者のいのちはひとつですし、人生も一つ。ですので、ぜひ人道危機に関心を持ち、ご自身に何ができるか、考えを巡らせていただきたいと思います。
 東日本大震災で日本は多くの支援を受けました。「今日は人を助けても、明日は自分が助けられるかもしれない」。そんな助けあいの気持ちが、日本から世界に広がっていくとよいと思います。それを目に見える形にすることが、赤十字の使命だと思っています。

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