What's New of the Movement:世界の赤十字のトピックをお届け

日本赤十字社が国内の災害救護活動や医療事業、血液事業に従事するように、世界各国の赤十字・赤新月社も紛争や災害、病気などで苦しむ人々に寄り添い、様々な人道支援活動を展開しています。
 今回は、地球規模の気候変動等がもたらす人道危機への対応について、国際赤十字・赤新月社連盟で取り上げられたニュースをご紹介します。

オーストラリア:森林火災

家を焼失した被災者に寄り添うオーストラリア赤十字社のボランティア ©オーストラリア赤十字社

家を焼失した被災者に寄り添うオーストラリア赤十字社のボランティア ©オーストラリア赤十字社

オーストラリアでは、例年にない気温の高さ、降水量の少なさ、強風が重なり、森林火災が拡大しています。これまでに1,000万ha以上(日本の国土面積の4分の1以上の大きさに相当)の土地が火災の被害を受け、29人が犠牲となっています。火災の継続により、生態系の破壊、すすや灰の発生による大気汚染とそれに伴う健康被害、交通や通信の遮断など多くの問題を引き起こしています。
 オーストラリア赤十字社は、1,590人の職員・ボランティアを103の避難所の支援に派遣しています。避難所への救援物資の供給やこころのケアの実施のほかにも、約49,000人に家族や友人の安否を確認するサービスを提供しています。今後も被災者のニーズに合致した支援を行うため、救援活動を継続していきます。

最新情報はこちら:https://www.redcross.org.au/(英語のみ)

インドネシア:大規模洪水

インドネシア赤十字社のボートで避難する被災者 ©IFRC

インドネシア赤十字社のボートで避難する被災者 ©IFRC

昨年12月から降り続いた大雨によりインドネシア各地で洪水が発生。67人が命を落とし、110人が負傷、10万人以上が避難する事態となりました。インフラ被害は、家屋倒壊が数百軒、また押し流された橋は20にも上ります。インドネシア政府は、東ジャワで1日の降雨量が377ミリを観測するなど、1966年以降で最も激しい豪雨となったことを発表しました。
 インドネシア赤十字社は、ボランティア455人を動員し、救急車15台、ゴムボート12台、給水支援車13台をもって被害を受けた地域コミュニティの人々を支援しており、これまでに9万パックの食糧配布を行いました。また、人々の避難や帰宅を支援している他、精神的なサポート、衛生的な水の配布やデング熱など疾病予防のための消毒剤の散布を実施しました。

リンク:https://media.ifrc.org/ifrc/2020/01/07/indonesia-red-cross-continues-support-rains-forecast/

フィリピン:タール火山噴火

フィリピン赤十字社による住民支援。道路は灰でおおわれている。©IFRC

フィリピン赤十字社による住民支援。道路は灰でおおわれている。©IFRC

今年1月、マニラの南60キロにあるタール火山が43年ぶりに大きな噴火をしました。フィリピン火山地震研究所は数時間または数日以内に危険な噴火が起こる可能性があると警告し、火山の警戒レベルを最大5のうち4に引き上げたため、多くの住民の避難が必要となりました。初期は、約25,000人の被災者が120以上の避難所への避難を求められました。約45万人が火山から14キロメートル内の危険地帯に住んでいることから、さらなる噴火が起これば、より多くの人々が避難することが予想されます。
 火山灰による呼吸器への影響の他、硫黄臭も発生しており、マスクが必要となっています。灰は視界を悪くし、濡れると道路が滑りやすくなるため交通網への影響や噴火による飛行機の運行への影響がでています。また、停電や断水なども起こっており、長期化するとさらなる被害の深刻化が懸念されます。
 フィリピン赤十字社は、救急車5台と炊き出しのための車両2台を出動させ、救援活動、マスクの配布、安全な水の提供、衛生的な環境の確保と衛生習慣の促進、温かい食事の提供、そして特に子どもたちを対象にこころのケアを行っています。追加の救急車1台、レスキュートラック1台、多目的車両5台、救援活動に従事するスタッフ・ボランティアのためのゴーグルやマスクを含む個人用保護具400セットを準備し、ボランティアと救護チームがいつでも出動できるよう待機しています(2020年1月17日現在)。

赤十字は、世界の192社に広がるネットワークを生かし、人びとの苦痛を軽減し、予防するためのさまざまな活動を行っています。いかなる状況下にあっても、誰もが「自ら立ち上がる力」を有しています。その力が高ければ高いほど、自身の力で危機を予測し、対応し、回復し、さらに前進することが可能です。地域社会やそこに住む人々が危機にさらされた時、真っ先に対応するのは彼ら自身です。赤十字は、地域社会あるいは人々がもつ底力である回復力(レジリエンス)を強化することを目指しています。
 そのために、被災者への医療や衣食住の支援といった緊急救援だけでなく、その後の復興支援、そしてこの回復力を培う長期的な開発協力という流れで包括的に取り組んでいます。
 世界を取り巻く環境が刻一刻と変化しても、人道的課題の解決は終わりを見ません。こうした人道問題に対する国民の理解と関心を高めることもまた、赤十字の重要な役割の一つなのです。

国際活動の詳細はこちら:http://www.jrc.or.jp/international/

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