バングラデシュ:避難民キャンプ内の日赤支援の診療所、開設から早くも3年

日本赤十字社(以下、日赤)は、2017年8月25日にミャンマー・ラカイン州で発生した暴力行為を逃れ、隣国バングラデシュへ避難してきた人びとの命と健康を守るため、同年9月から保健医療を中心とした支援を続けています。2017年12月9日に避難民キャンプの中に開設した仮設診療所は、その後、在バングラデシュ日本大使館の草の根無償資金協力の支援も受けて、2019年9月にサイクロンなどの自然災害にも耐えうるプレハブ式の新しい診療所として完成。この診療所を中心に地域の保健医療サービスを担っています。

新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、2020年3月から日本人要員が不在の中、避難民キャンプに住む人びとの健康を支えているのはバングラデシュ赤新月社(以下、バングラ赤)の医療スタッフ14名(医師、看護師、助産師、薬剤師、コミュニティ・モビライザー)と避難民ボランティアたち約70名です。避難民ボランティアたちは、診療所、地域保健、こころのケア(心理社会的支援)の活動でそれぞれ役割を担っていますが、今回は診療所で活動する避難民ボランティアを紹介します。

※国際赤十字では、政治的・民族的背景および避難されている方々の多様性に配慮し、『ロヒンギャ』という表現を使用しないこととしています。

通訳のロジアさん「困っている人のために役立てることが何よりも喜び。   私には何もないけど、自分が得た知識は人のために役立てたい」

ロジアさんBDRSC.jpg

母子保健活動の通訳を担うロジアさん@バングラデシュ赤新月社

診療所での役割は何ですか?

通訳をして早くも3年になります。診療所では母子保健活動も行っているので、多くの妊産婦が来所します。ミャンマーから来た避難民は、ベンガル語(バングラデシュの公用語)も英語も分からない人が多く、助産師と妊産婦さんをサポートする通訳はとても大事な役割です。家庭訪問で産前産後健診や家族計画の大切さなども伝える活動もしています。

活動していて嬉しく思うことは?

まず医療スタッフたちから新しい知識や技術を学べることです。特に母子保健分野は、自分が妊娠・出産したときは受けることがなかったようなケアを妊産婦さんたちに提供するお手伝いができて、母子の健康を支えることができて嬉しいです。ミャンマーにいた頃、2012年から政府の方針で公的教育が受けられなくなったので、特に若い世代は教育を満足に受けられていません。若いうちに結婚、出産を経験する子も多くいました。今になって、彼女たちへの健康リスクや社会経済的な影響を思うと、教育や家族計画がどれだけ大切かを実感しています。私のコミュニティの若い世代は何もかもを失っていますが、彼らの健康を少しでも支えることができれば嬉しく思います。

活動していて大変だと思ったことは?

活動を始めた当初は、男の人たちと一緒に活動することへの戸惑いが非常に大きかったです。文化的に家族以外の男性とは接することがなかったので、私には新たな挑戦でしたが、今では皆と一緒にチームとして活動できるようになりました。

新型コロナウイルス禍での活動についてはいかがですか?

最初は新型コロナについて私も地域の人びともよくわからなかったのですが、この避難民キャンプよりも感染が拡大している国や地域があると聞いています。国際赤十字が新型コロナウイルスに関して地域で正しい情報を伝えてくれていることをありがたく思っています。個人的にはマスクや防護服に慣れるのも大変でしたし、何より「風邪のような症状だけど重症化したら死ぬかもしれない感染症」ということを理解するのが難しかったです。診療所の医師が勉強会を開催してくれて、感染者数や死亡率など含めて詳しく説明してくれたので、診療所で感染兆候のある患者の区分徹底など感染予防対策の重要性がよく理解できました。

たくさんのボランティアに支えられる診療所

ジュバイルさん:通訳

ジュバイルBDRCS.jpg

診療所入り口のジュバイルさん©バングラデシュ赤新月社

4人家族のジュバイルさんは、診療所で通訳として、主に医師の処方箋の内容や使用方法などを説明する役割を担っています。ミャンマーにいた頃、薬局を営んでいましたが、自宅も薬局も焼かれてしまい、3日間以上かけてバングラデシュへ避難してきました。2017年夏の避難当初は精神的にも肉体的にも疲労困憊でしたが、2018年から、これまでの薬局での経験を活かして活動しています。避難から3年以上経った今も、窓もプライバシーもない簡素な家に住んでおり、「息子たちの教育や将来を考えると、毎晩全く寝られない」と辛い気持ちを打ち明けてくれました。

アブルさん:技術担当

アブルBDRCS.jpg

発電機の点検をするアブルさん©バングラデシュ赤新月社

子ども5人の父親であるアブルさんは、診療所の電気機器等を扱う技術担当(シニア・テクニシャン)として活動しています。主な役割は、診療所活動に欠かせない医薬品用冷蔵庫や高圧蒸気滅菌器、発電機や変圧器など様々な機器の維持管理です。彼はミャンマーにいた頃から技術者としてNGOなどで働いていました。彼は朝7時半から診療所に出向きますが、すでにその時間から診察を待ち並んでいる人びとがいると話します。「このように地域の中で信頼されている診療所で活動できることを嬉しく思っています。ミャンマーへの帰還が叶うまでは、人びとのために活動を続けたいです」と語ってくれました。

新型コロナウイルスの流行の中での活動

新型コロナウイルスの感染者は、バングラデシュ国内で49万人以上(バングラデシュ国立疫学疾病予防調査研究所[IEDCR]、12月13日時点)、約86万人以上が密集して住む避難民キャンプ内でも350人以上(WHO、11月29日時点)が確認されています。バングラデシュでも日本でも、感染予防の基本は同じなので、密を避け、マスクを着用し、こまめに手を洗うよう努めています。一部の活動を、一時的に活動を縮小・停止せざるを得ないこともありましたが、様々な感染予防の工夫をしつつ、人々に必要な支援を続けています。日赤は、国際赤十字及びバングラ赤とともに、これからも避難民の命と健康、尊厳のある生活を守るために、状況をより一層注視していきます。

PSSBDRCS.jpg

人と人との間隔をとって少しずつ再開をし始めた心のケア活動(2020年11月)©バングラデシュ赤新月社

診療所待合室BDRCS.jpg

診療所の待合室(2020年11月)©バングラデシュ赤新月社

世界中がコロナ禍の今だからこそ、「たすけあい」に大きな力を

12月1日(火)から「海外たすけあい」キャンペーンが始まり、早くも期間の半分が過ぎました。「海外たすけあい」で集められた寄付金は、自然災害だけでなく、日赤が行うバングラデシュ南部避難民保健医療支援など、世界各地の紛争や暴力行為で避難を余儀なくされている人びとの救援活動にも充てられます。コロナ禍の今日本でも不安な日々が続きますが、世界でも新型コロナウイルス感染拡大に加え、自然災害や政治情勢などの複合的な影響を受け、支援をこれまで以上に必要としている人びとがいます。皆様からの温かいご支援とご協力を、どうぞよろしくお願いいたします。

本ニュースのPDFはこちら

たすけあい.jpg