フィリピン(2013年中部台風 救援・復興支援)

フィリピン中部を2013年11月8日に直撃した台風30号(英語名:Haiyan)は、広範囲に壊滅的な被害をもたらしました。

死者・行方不明者7361人、総被災者は人口の約16%にあたる1600万人に上ります(フィリピン政府発表)。

この被災に対して、国際赤十字は2014年2月、総額200億円規模の復興支援計画を策定。日本赤十字社(以下、日赤)も、この国際的な支援の一環として復興支援を実施しました。

1.日本赤十字社による支援

赤ちゃんを診察する保健医療チーム大津医師

日赤は2013年(平成25年)11月11日~2014年(平成26年)2月28日の約3カ月間にわたり、「2013年フィリピン台風救援金」の募集を行いました。

皆さまから寄せられた救援金をもとに、以下の活動を通して被災者の支援を行っています。

日赤の支援 概要

緊急救援

  • 基礎保健ERU活動経費:約2億2100万円
    (医療チームの派遣費と診療活動費、医療資機材・医薬品等)
  • 物資支援:7900万円
    (テント600張、衛生キット592個、シェルターキット3000セット、蚊帳12万9900張)
  • 国際赤十字による救援活動に対する支援:2000万円
  • その他緊急救援費(調整、調査チーム要員派遣等):約200万円

復興支援

  • セブ島における住宅再建・保健衛生等:約2億9800万円
  • レイテ島における学校の修復・再建等:約2億2000万円
  • サマール島における住宅再建等(ICRC):約2億8000万円
  • 生活再建・保健施設修復、その他の復興支援(連盟):約2億600万円
    • マンダウェ倉庫の改修
    • レイテ・保健施設の再建・修復等
    • セブ北部・保健施設の再建(サン・レミヒオ郡)
  • フィリピン赤十字社の災害対応能力・支援体制強化:約9800万円
    • 災害看護教育プログラム支援
    • 医療救援機能・災害能力対応強化支援
  • セブ北部における地域レジリエンス強化:約8900万円
    • セブ北部における地域保健衛生事業
    • セブ北部における地域防災・減災事業
  • 日赤フィリピン代表部運営費等:約4600万円
    (現地事業管理、モニタリング等)

その他災害対応

  • 国際赤十字社による救援活動への支援:約1億1900万円
    (2013年ボホール地震、2015年台風27号メーロー、2017年台風26号ノック・テン、2017年台風27号テンビン、2018年台風22号マンクット、2018年はしか蔓延等)

本社事務費

  • 本社事務費:約1億1900万円
    (本社人件費、広報・報告費、事業評価等)

合計:約17億9800万円

緊急救援

薬を処方するヤップ看護師

日赤は、国際赤十字・赤新月社(以下、連盟)による出動依頼を受け、ドバイおよび熊本に保管していたERU資機材をセブに輸送するとともに、2013年11月13日に基礎保健ERU(Emergency Response Unit/緊急対応ユニット)チーム(保健医療チーム)派遣しました。

2014年2月12日の活動終了まで、3カ月間合計3班・35人が被災地における保健医療支援を行いました。

また、連盟のフィールド調査・調整チーム(FACT)にも過去にフィリピン台風の緊急救援・復興支援に従事した経験のある要員を派遣したほか、赤十字国際委員会(以下、ICRC)や連盟が発表した緊急アピールに対して総額2000万円に上る資金援助、物資援助(テント、蚊帳、衛生キット、緊急シェルターキット)を実施しました。

緊急救援活動に関しては、下記もご参照ください。

日本赤十字社の保健医療チームの活動

地元の医療スタッフとともに診療する大津医師

日赤は、2013年11月13日、連盟の要請に応えて基礎保健ERU(Emergency Response Unit/緊急対応ユニット)チーム(保健医療チーム)を派遣し、熊本とドバイに保管しているERU資機材をフィリピンに向けて輸送しました。

ERUは、最長4カ月間にわたり外部からの支援に頼らずに保健医療活動が継続できるように、浄水器や発電機、テント、食料なども配備されています。

保健医療チームは被災地域全体の救援状況を十分に分析し、各地を調査した結果、台風30号の中心が通り過ぎたにもかかわらず、当時助団体の入っていなかったセブ島北部のダンバンタヤン郡(人口約8万6000人)の医療・保健機能を支える必要があることを確認し、同郡マヤ村に拠点をおいて下記の医療保健活動を実施しました。

  • 仮設診療所での診療
    診療所が被災したマヤ村に仮設診療所を設置し、1日平均約50人を診療しました。
  • 巡回診療
    1日2村を午前・午後に分け、1村あたり平均で約50人を診療しました。
  • 保健・衛生知識の普及活動
    感染症の予防や地域特有の疾病等、被災地において必要とされている予防接種、皮膚疾患、呼吸疾患等の分野を特定し、のべ1301人の現地の助産師や地域保健スタッフに対して研修を実施しました。また、現地の言葉で教材を作成し、配付しました。
  • こころのケア
    専門要員を派遣し、心理的不安を訴える被災者には個別に対応を行いました。また、学校にテントを設置し、遊びやゲームなどの活動を提供し、子どもたちの心理的ストレスに対応しました。活動終了時には、教師への研修も行いました。
  • 診療所の修復
    マヤ村では、診療所の天井が暴風で飛ばされ、内部も被害を受けました。日赤は、診療所の再開に向けて、内部の修復と屋根の再建を行いました。また、不足している医療資機材の供与や現地保健医療従事者に対する研修も行いました。

復興支援

1)

修復されたマヤ村の診療所

修復されたマヤ村の診療所

セブ島北部における総合復興支援

セブ島北部における緊急救援の実施を通して、地域には他分野にわたる支援が必要とされていることがわかりました。

また、災害の多いフィリピンでは災害に備える体制の整備を支援することも必要とされていました。

日赤は、強みである保健衛生分野を軸としつつ、940世帯に対する住居再建支援や、生活再建支援、保健衛生教育、防災教育等、包括的に被災者の復興に向けたニーズに対応しました。

2)

レイテ島における学校修復・再建事業

被災地においては多くの学校や診療所など公共施設も被害を受けました。日赤は、そういった公共施設の修復・再建の支援を主にレイテ島で行いました。

3)

サマール島における住宅再建等(ICRC)

暴風、高潮で大きな被害が出たサマール島で、ICRCが実施する復興支援活動のうち、住宅再建を中心に、保健、給水、生計再建支援等を支援しました。

4)

生計再建等の復興支援(連盟)

台風により、農業、漁業に従事する被災者が、漁船・畑等の被害を受け、収入手段を失ったことに加え、物価の高騰なども報告されました。また、台風30号の被災の教訓として、フィリピン政府は海岸より40メートルの地域を非居住区地域と設定したため、内陸に移住する被災家族の生計手段の確保は大きな課題となり、住居支援と併せて対応が必要となりました。

日赤は、連盟による生活再建等の活動を支援しました。

5)

住宅支援(シェルター)クラスター調整支援(連盟)

住宅再建支援はフィリピン政府の復興計画等においても中心となる分野であり、多くの支援団体が被災地での支援を計画したことから、対象地域、住居の設計、仕様の調整が政府、国際機関、支援団体間で必要とされました。

国際赤十字は自然災害におけるシェルター分野のクラスター(援助機関間の調整機構)の調整の役割を担い、広範な被災地各地における全体調整を支援しました。

6)

災害看護教育プログラム支援(実施中)

フィリピンは災害多発国であることから、災害看護教育が大学教育および現任看護師教育の施策の中で重点化されていました。フィリピン赤十字社においても災害看護の普及による災害対応能力強化の必要性があげられ、フィリピン大学マニラ校との連携により国内で災害看護に携わる人員を養成する総合的教育プログラムを策定することになりました。その実施に日赤が協力し、さらに、各日本赤十字看護大学の参画を得て推進することになりました。本事業は2016年4月から実施されています。

7)

セブ北部における地域保健衛生事業

台風30号によりセブ北部は甚大な被害をうけました。日赤は同地域に被災直後から緊急医療保険活動を実施しました。緊急支援の後は、2014年から3年間、地域住民によるレジリエンス構築を目標とした「セブ島北部における総合復興支援」を実施しました。

セブ北部地域保健衛生事業は、2017年1月に開始されたセブ島北部における総合復興支援」の後継事業で、地域行政・学校・地域社会の連携の下、フィリピン赤十字社を通じて、セブ北部地域の脆弱な社会における保健および衛生面でのレジリエンス強化を目指し、2019年3月まで実施されました。

8)

セブ北部における地域防災・減災事業(実施中)

本事業もセブ島北部における総合復興支援」の後継事業で、フィリピン赤十字社を通じて、セブ北部の村落地域での防災・災害によってレジリエンスを向上させることを目標とした事業です。
・村落レベルでの災害への関心を高め、リスク認識を習得する
ボランティアによる緊急時の対応
・災害時の早期警戒、迅速な行動の対応
・減災対策とリスク軽減
フィリピン赤十字社の能力強化
等を目標として、2018年4月から事業を実施しています。

その他災害対応

例:ボホール島における住居再建支援(連盟)

 台風30号被災の前月、レイテ島とセブ島の間に位置するボホール島を震源とするマグニチュード7.2の地震が発生し、死者222人、負傷者976人という被害が発生、多数の家屋が倒壊しました。国際赤十字も救援活動を行っていたところ、台風30号が通過しました。

 同じ地域の中で、地震被災者も台風被災者同様に住宅再建が急務となっていたことから、連盟による同島の住宅再建を支援しました。

2.国際赤十字による支援活動

災害に対応する赤十字の仕組み

診療所の開設地を選定する日赤医療チーム

赤十字はこの台風30号被害に対し、医療、保健衛生、給水、食料配布、住宅支援などを展開しました。

今回のような大規模災害の場合は、フィリピンで平時から保健活動、救急法の普及やボランティア活動を担うフィリピン赤十字社(以下、フィリピン赤)を中心に、さまざまな分野で活動できるように、連盟やICRCの調整の下で日赤を含む各国赤十字社が支援に入り、それぞれの強みを生かして救援・復興支援活動を展開しています。

フィリピン赤十字社

マニラから救援物資を輸送するトラック

フィリピンは地震や台風、洪水、火山活動など比較的多くの自然災害に見舞われています。

そのためフィリピン赤は、平時から救急法の普及やボランティアの育成を行っているほか、本社(首都:マニラ)にオペレーションセンターを設置しており、常時気象情報や災害情報を収集し、職員に一斉連絡する体制を整えています。

台風発生時も監視を続け、政府の災害対応当局との調整や会合を重ね、台風30号の上陸に先立って、政府による住民の避難誘導に赤十字のボランティアを動員しました。

台風直撃後は、調査チーム4班を速やかにセブ島、レイテ島のタクロバン、パナイ島に派遣。食糧を含む救援物資の配付を行い、避難所では安否調査やこころのケアを行う生活相談窓口を設置し、温かい食事を提供しました。また、救急車、給水車、物資輸送車を配車するとともに、給水タンクも配備しました。

連盟の協力の下で、レイテ島、パライ島のアクラン、アンティーク、カピズ、イロイロ、パラワン、セブ島、ギマラス島などの被災地で緊急救援活動を行いました。

また、家族や友人など愛する人の安否を心配する方がたからお問い合わせを受けて、2万5000件の安否を調査しました。

国際赤十字・赤新月社連盟

救援物資を準備するボランティア

連盟は、各国にある赤十字社・赤新月社の国際的な連合体であり、スイス・ジュネーブに事務局、世界60カ所以上に代表部を置いている独立した人道機関です。

災害被災者救援、防災活動、保健衛生活動、人道問題啓発、各国赤十字社間の調整や支援を行っています。

2013年11月8日の台風30号が直撃した当日に、連盟はフィリピン赤のニーズ調査や緊急支援をサポートするために災害救援緊急基金(DREF)より約5100万円(約47.5万スイスフラン)を拠出しました。11月12日にはあらためて、50万人の被災者を対象とした約78億2000万円(約7232万スイスフラン)の支援活動計画を発表しました。これは、18カ月間で10万世帯を対象に食料、水、仮設住宅、救援物資などの支援の提供をしました。

本計画は、2014(平成26)年1月16日に1億2600万スイスフラン(約144億円)に予算が拡大され、住居や公共施設の再建・修復等の復興支援が計画されました。

また、連盟の調整の下で表のとおり、各国赤十字社がそれぞれの分野で救援活動を行いました。

ERUタイプ 役割 担当赤十字社
基礎保健ERU 基礎保健、診療所等を設置しての基本的な医療、母子保健、予防接種等の実施 日本赤十字社
カナダ赤十字社
ノルウェー赤十字社
ロジスティクスERU 救援物資の調達・保管や救援資機材の輸送 イギリス赤十字社
フィンランド赤十字社
デンマーク赤十字社
IT通信ERU 現地での通信環境の整備 アメリカ赤十字社
デンマーク赤十字社
ニュージーランド赤十字社
給水・衛生ERU 生活用水や保健医療活動に必要な水の提供、トイレの設置や下水処理等 オーストリア赤十字社
スウェーデン赤十字社
ドイツ赤十字社
救援ERU 受益者の登録と救援物資の配布 アメリカ赤十字社
フランス赤十字社
ベネルクス(ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)の赤十字社
ベースキャンプ 各国赤十字社のERU要員向け宿泊地、事務所、キッチン、トイレ等の提供 デンマーク赤十字社

※連盟の活動の詳細については、連盟ウェブサイトも併せてご覧ください

赤十字はシェルターを担当

日赤医療チームによる、地域の保健所での診療を終えた子ども

世界で発生する危機に対して、国連機関などが人道支援活動に従事するにあたり、クラスター・アプローチ」というものがあります。

これは、各機関が個別に活動するのではなく支援の分野別に主担当となる団体を指定し、その団体を中心として各機関の協力関係を構築し、支援活動の効果を高めるためのものです。

クラスター・アプローチにおいて連盟は、災害時の緊急シェルター(仮設避難所)の主担当になっています。日赤も連盟の要請に基づき、マレーシアの備蓄物資から、テント600張を発送しました。

赤十字国際委員会

 ICRCは赤十字の枠組みの中では、主に紛争地での支援活動を行っています。

 フィリピンでも武力紛争の犠牲となった人びとに対して、人道的保護と支援を行っています。台風被害に対しても、フィリピン赤、連盟、各国赤十字社と協力して支援活動に取り組んでおり、特に武力紛争がある地域に焦点を当てています。

 台風30号において、ICRCは、3687万スイスフラン(約42億円相当)規模の支援計画を発表し、紛争犠牲者支援を行ってきたサマール島内の25万人を対象として支援活動を実施しました。

 緊急救援としては、フィリピン赤とともに、食料やその他必需品(防水シートや毛布、マット、タオル、給水タンク、衛生キット)の配付、飲料水の供給、基礎保健対応ユニットによる医療支援や安否確認支援などを行いました。さらに、最も被害が大きかったサマール島の南沿岸部では、ICRCの技術者とフィリピン赤のスタッフが水道・水路の修復を行いました。復興支援としては、住宅や医療、教育等の公共施設の修復、再建も行いました。

 また、既存の紛争地での保護の活動を継続しています。

 ICRCの活動の詳細は、赤十字国際委員会駐日事務所のウェブサイト、ICRCジュネーブ本部のウェブサイトも併せてご覧ください。

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