患者さんの生活・タイミングに合わせたケアを提供-看護師の特定行為-

平成27年の法改正(保健師助産師看護師法)により特定行為研修(※1)を修了した看護師は、医師の判断を待たずに、手順書により一定の診療の補助を行えるようになりました。日本赤十字社も、平成30年2月に同研修の指定研修機関に指定され、同年4月より特定行為を実施できる看護師を育成しています。

今回、本研修を修了し、武蔵野赤十字病院(東京都武蔵野市)で創傷管理(※2)に関する特定行為を実施する看護師として活動する比留間看護係長に話を聞きます。

特定行為が実施できる看護師を目指した理由

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特定行為研修を修了した比留間看護係長

私は、皮膚・排泄ケア認定看護師(※3)として活動を行うなか、手術や外来診療の対応等で医師が多忙のため、患者さんに行うべき処置がその患者さんの生活リズムに最適といえるタイミングで行うことができていないと感じる場面に遭遇してきました。特定行為研修を修了することで、看護師が患者さんの生活リズムに合わせてケアを実施することで、患者さんの創傷の治癒をこれまで以上に促進することができると思ったことが特定行為を目指すきっかけとなりました。

また、特定行為の実施は当院の基本理念にもある「地域貢献」にも繋がると思ったことも理由の一つです。最近の医療を取り巻く環境の変化により、患者さんの入院期間が短くなっていく中、特定行為を実施できる看護師が活動できれば、患者さんたちも安心して自宅で療養出来ます。

院内では、専門技術や知識をもとに医学的処置が必要な傷口、人工肛門、失禁などについてのケアや処置はもちろん、患者さんに関わる看護師の指導、医師・検査技師・薬剤師等との連携・情報共有も行っています。また、院外では、在宅療養をしている患者さんへの訪問を積極的に行っています。

「安心して頼める」と信頼されるために心がけていること

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特定行為を実施する比留間看護係長(写真中央)

「安心してこの人に頼める」と患者さんや、同僚のスタッフから信頼してもらうために、日々知識・技術の向上に取り組んだり、院内における幅広いネットワークの構築を心がけたりしています。特定行為研修は医学的な内容が中心で、医療行為によるリスク等についても勉強するため、医師とのコミュニケーションも頻繁に行うようになり、以前と比較しさらに円滑になりました。協働する医師や看護師の間の調整に入ることもあります。

看護師が特定行為をできるようになって間もないので、患者さんが不安に思わないように、まずは担当の医師と一緒に、同研修を修了していること、また医師の指示の下に処置をしていることなどを説明します。実際には、傷口の状態をよく観察し、なるべく苦痛が軽減されるように配慮をした上で必要な処置をしているため、患者さんからもよい反応を頂いています。また、患者さんが通院する場合は、移動手段の確保の手間、移動中や長い待ち時間にも床ずれした部分が圧迫されるなど、負担を伴う可能性がありますが、看護師が患者さんのご自宅に伺って処置を行うことができれば負担は大きく軽減されます。患者さんの目線に立ち、生活する上で困りごとがないか確認しながらご本人の生活を理解し、療養環境を整えることが最も重要だと思います。そういったことの積み重ねが患者さんやご家族の安心感につながり、最善の治療に役立つのだと考えています。

医師の負担軽減と後進の育成

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比留間看護係長(写真左)の活躍の裏には奥田副部長(写真右)のサポートがあった

近年、医師の過重労働が社会問題になっていますが、特定行為を実施できる看護師が増えれば、医師とのワークシェアリングにもつながってくると思います。何人かの医師からは「処置に習熟した比留間さんのような看護師に診てもらえるのであれば」と言って任されることもあり、医師の間にも特定行為が実施できる看護師の役割に対する理解が広がっていることを感じます。今後も大いに活用してもらえるよう院内での周知や医師とのさらなる関係構築に取り組んでいます。

また、処置に入るときには協働する看護師にも一緒に入ってもらいます。私が行う傷口の観察や処置について見てもらうことで、患者さんの傷口の状況について理解を深められ、結果として看護師の知識やケアの向上につながります。

最後に武蔵野赤十字病院特定行為研修の実施にあたって尽力してきた同病院の奥田看護副部長は次のように語りました。

「看護師の仕事の一つに『日常生活の援助』があります。その役割をベースに医学的な見方を持って患者さんにケアできるのが、看護師が行う特定行為のメリットでもあります。今後もより安全で安心できる医療を提供できるよう、比留間看護係長とともに後進の育成にあたりたいと思います」

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※1特定行為:診療の補助であり、看護師が手順書により行う場合には、実践的な理解力、思考力及び判断力並びに高度かつ専門的な知識及び技能が特に必要とされる38行為。21区分に分けられる。そのうち、日本赤十字社では以下の5区分の特定行為を実施できる看護師を育成している。「呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連」、「創傷管理関連」、「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」、「感染に係る薬剤投与関連」、「血糖コントロールに係る薬剤投与関連」

※2創傷:皮膚に生じた傷。

※3認定看護師:日本看護協会が定める教育を修め、認定看護師認定審査に合格し、ある特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を有することが認められた者。平成30年7月現在、全国の皮膚・排泄ケア認定看護師は2,488名 (参考)日本看護協会ホームページ

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