インターンシップ生が見た乳児院

日本赤十字社では、「苦しんでいる人を救いたい」という思いを9つのかたちにして事業を展開し、その事業活動への理解を深めることを目的としてインターンシップを行っています。この度、インターンシップへ参加した学生が救護・福祉部福祉課で就業体験を行い、社会福祉施設の一つである日本赤十字社医療センター附属乳児院を訪問しました。

施設で働く職員へのインタビューと共に、施設見学を通じて学生が感じた"乳児院"について、生の声をお届けいたします。


子どもたちの笑顔を引き出し、守る施設

2020年1月17日、日本赤十字社医療センター附属乳児院で施設見学と職員インタビューをさせて頂きました。

乳児院とは、家庭での養育が難しい0~5歳の子どもを養育する児童福祉施設です。日本赤十字社医療センター附属乳児院は、昭和23年11月20日に開設され、現在は70名の子どもたちが生活しています。

児童福祉施設

〈子どもの人生を考え抜いた施設の取り組み〉

乳児院は0~5歳児を対象としているため、長くても5年で退所しなければならない通過施設です。本乳児院を退所した子どものうち半分は家庭復帰、残りの半分が他施設への移動、あるいは里親委託されて、その後の人生を歩みます。そのような子どもたちの人生を考え抜いた支援が行われている施設であると、あらゆる点から感じることができました。

★家庭に寄せた養育環境の整備

見学をさせていただいた中で印象に残ったのは、一般家庭に近い環境が可能な限りで整備されていたことです。各部屋はマンションの一室のような造りになっており、トイレを玄関近くに配置するなど、細部にもこだわっています。キッチンには炊飯器が設置され、お米を炊く匂いを子どもが感じられるという工夫もされていました。このように、子どもが五感を通じて家庭で育つような経験をさせる養育環境への配慮には驚かされました。
また、子どもの発達状況に合わせた食事を各専門職員が連携して考案・提供することは勿論、子どもの好みに合わせた洋服選び、さらにはシーツに使う布のキャラクター柄を選ぶことまで、子ども一人ひとりに合わせた支援が行われていました。子どもが子どもらしく生活し、愛情を受け、また自由に育つことができるような養育が徹底されています。

★信頼する能力を育む

本乳児院では担当養育制が設けられ、子どもとの愛着関係を築いています。時間をかけて子どもと深くかかわりあい、子どもの「人を信頼する能力」を育むことで、家庭復帰やその後の進路にスムーズに移行できるような支援に繋いでいました。
※日本赤十字社医療センター附属乳児院では、人間関係の基礎となる「基本的信頼感」や「愛着」を育むため、子どもひとりひとりに担当の保育士または看護師を配置し、1対1での関りを大切にする養育を行っています。

〈看護副部長 臼井さんへのインタビュー〉

Q.お仕事のやりがいは何ですか?

A.子どもたちが笑顔になる瞬間に居合わせられることです。日常生活の中で見せる、自然な笑顔に安心を感じます。子どもが笑顔になれるように担当養育制を導入し、子どもの「甘え」の表現を受け止められる環境を整えています。また、子どもは大人の体調や気持ちを敏感に感じ取るため、職員がチーム一丸となって養育に取り組み、職員自身の健康にも配慮します。職員が元気でいることが、子どもの笑顔に繋がっているのです。

Q.これまでの経験の中でも、特に印象に残っていることはありますか?

A.ここに入所してくる子どもたちすべてが印象に残っています。子どもたちの持つ背景は様々です。それを否定するのではなく、その環境で安心して暮らすことができるよう、親や関係機関と協力し合って環境を整えていきます。誰一人として同じケースはありません。それぞれの家族の思いを大切にしながら、家族の再統合に向けて支援していきたいと思っています。

訪問の様子

〈施設を訪問して〉

日本赤十字社医療センター附属乳児院を見学して、設備や制度、取り組み、職員の方々の意識の一つ一つに子どもを思いやった工夫や意図が隠されていることが分かりました。一見しただけでは気づかないような細部への配慮を知り、その配慮が子どもたちの未来に繋がっているのだと理解できました。また、職員の方々だけでなく、ボランティアの方々の貢献が、支援に大きく影響していることを知りました。例えば、職員の方々が使いやすいように衣類の整頓がされているなど、子どもの養育は多くのボランティアによって支えられています。こうしたボランティアの方々の支援があって、施設運営がかなっているのだと理解しました。

〈さいごに〉

最後になりましたが、今回お話しするお時間を下さった看護副部長の臼井さん、事務長の富田さん、見学をさせて下さった乳児院の皆さん、そして貴重な機会を設けて下さった中林さん、福祉課の皆さんに心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

集合写真