(速報9)フィリピン中部台風 ~診療だけが医療チームの役割ではない~

マヤ村に設置した仮設診療所

マヤ村に設置した仮設診療所

フィリピン・セブ島北部のダンバンタヤン郡のマヤ村に11月22日、日赤の保健医療チームが仮設診療所を設置しました。

日赤の保健医療チームはこの仮設診療所での診療だけでなく、巡回診療、保健・衛生知識の普及活動、こころのケアを行っています。

仮設診療所

ダンバンタヤン郡には公立病院が1つ、診療所が2つあります。そのうちの1つがマヤ村の診療所で、そこから徒歩1分くらいの場所に仮設診療所を設置しました。2張のテントのうち1つを診療所に、もう1つを受付・待合室・倉庫としました。

仮設診療所では、骨折、皮膚炎の患者さんも診療していますが、風邪(発熱・咳等)の症状を訴える方がほとんどです。1日で25~50人くらいを診療しています。この地域では手術を行う場合、車で1時間くらいかかるボゴ市か、5時間くらいかかるセブ市まで行っています。

巡回診療

子どもの診療で手当てする看護師

子どもの診療で手当てする看護師

10日間のスケジュールに従って、午前・午後に分けて1日2村を巡回診療し、村の住民の健康状態を把握して今後の計画を立てる予定です。

22日に訪問したビトゥーン村では、台風の被害により保健所が使用できなかったため、村のコミュニティーホールを間借りして巡回診療を行いました。風邪の症状や頭痛、腰痛を訴える患者さんのほか、手指の切り傷の縫合を必要とする方を治療しました。各村につき、約50人を診療しています。

保健・衛生知識の普及活動

台風から2週間経過してもいまだに住居の復旧は進まない

台風から2週間経過してもいまだに住居の復旧は進まない

巡回診療に同行して、手洗い指導の方法や下痢症などの疾患に対する知識などを普及している地元の助産師や地域保健スタッフと、情報共有しながら活動しています。

地元のスタッフはベテランと新人との間に知識の差が見られることもありますが、同行した村ではベテランが新人をサポートする体制が出来ていました。

病気にかかってからの治療だけではなく、予防に力を入れることも大切です。

こころのケア

折り紙で子どものこころのケアをする臨床心理士

折り紙で子どものこころのケアをする臨床心理士

フィリピンは家族やコミュニティーの結びつきが強く、保健医療チームが活動している地域でも家族らのサポートがあるようです。

しかし、子どもは大人のように自分の心境を言葉で表現できないため、どのようなストレス反応が起きているか、態度などに注目する必要があります。子どもへのこころのケアにゲームやスポーツなどを取り入れ、ストレスを発散させることも大切です。

チームの臨床心理士は、現地のこころのケアのシステムを確認しながら、折り紙を取り入れたり、継続的にこころのケアが実施されるように、フィリピン赤十字社のスタッフに傾聴の方法を教えたりしています。

被災者たちは一見明るく見えますが、診療所で気持ちを聞くと「怖かった」、「眠れない」などと不安を訴える声が上がってきます。診療だけが保健医療チームの役割ではありません。「こんにちは」、「大丈夫ですか?」、「日本からお手伝いしに来ました」などと声をかけてコミュニケーションを取ることも苦痛の軽減になります。被災地の人々に勇気や希望を持ってもらうことも大切なのです。

安否調査

日本政府によると、レイテ島とサマール島に住む日本人133人のうち、130人の無事が確認され、残り3人の安否を確認中です(23日18時)。日本赤十字社には安否調査の受付開始から21件のお問い合せがあり(25日14時)、そのうち19件はご依頼主により安全が確認されました。

お問い合わせ方法はこちらをご覧ください。

災害に強い社会や病気のまん延を未然に防げる社会づくり(「レジリエンス」の強化)

世界保健機関の指標では、フィリピンの乳幼児死亡率は出生1千人当たり30人、日本の10倍です。妊産婦死亡率は出生10万人当たり99人、日本の約20倍です。

フィリピンでの救援活動から少し離れて世界を見ると、ケニアでの乳児死亡率は73人、妊産婦死亡率は360人と、さらに高い現状があります。災害に強い社会や病気のまん延を未然に防げる社会づくり(レジリエンスの強化)を救援期から意識して、災害前より良い社会をつくるための復興が求められます。

日本赤十字社は毎年12月1~25日まで、NHKとの共催で「NHK海外たすけあい」の救援金を募集しています。「NHK海外たすけあい」に寄せられた救援金は、このたびのフィリピン中部台風のような緊急救援だけでなく、防災・減災・疾病予防活動など、長期的な開発協力事業にも幅広く使わせていただいています。今年もご協力をよろしくお願いいたします。