(速報10)フィリピン中部台風 ~救援要員のそれぞれ~

「一人でも多くの患者さんのために」と話す関塚看護師長

「一人でも多くの患者さんのために」と話す関塚看護師長

フィリピン・セブ島最北端のダンバンタヤン郡のマヤ村で救援活動を続ける日赤の保健医療チーム。

今回は救援要員それぞれの役割に焦点を当ててご紹介します。

国際救援では全体を見て、患者さんが生活していくうえで何が大事かを考える

名古屋第二赤十字病院の関塚美穂看護師長。2003年のイラン地震で初めて保健医療チーム(ERU:緊急対応ユニット)の救援活動に参加しました。

現地では、女性が全身に布をまといあまり外出しないという環境に驚きました。しかしそれだけではありません。「巡回診療の際に20歳の女性が腰を骨折して動けない状態でいて、尿をビニール袋に入れていました。しかし、それを捨てることを誰も助けていませんでした」と語る関塚看護師長。

「仮設診療所を開けば患者さんは来ますが、そもそも仮設診療所まで来られない人たちもいます。そういう環境にいる人たちを一人でも多く助けたい。自分が行かなければ困る人がいることを知ったからこそ、救える人が少なくても助けに行かなければと思います」。

この想いが、彼女のモチベーションになっています。そして、イランでの活動後にインドネシアの病院支援、さらにハイチの地震救援と経験を重ねました。

今回は保健医療チームの看護師長として活動しているため、地元の人たちにとって働きやすい環境の提供にも気を配っています。

「地元の人たちの支援がなければ、被災地での活動はあり得ません。地元の人たちとの協働は必須なのです。そのため救援要員だけでなく、地元のスタッフにもより良い環境を提供することが大事です。また、国際救援を行う際は、専門的な知識よりも幅広く病気について知ることが求められます。日本では分野ごとに分かれて仕事を任されますが、国際救援では全体を見て、患者さんが生活していくうえで何が重要かを考えなければいけません。そうした経験は、日本でも患者さんと接する際にとても大きな示唆を与えてくれます」。

関塚看護師長は、救援の経験を後輩たちに伝えていきたいと考えています。

地域の人たちと同じ目線でいたい

患者さんと同じ目線で診療するアビディーン医師

患者さんと同じ目線で診療するアビディーン医師

アレス・アビディーン(Aleth Abidine)はフランス赤十字社の医師。私生活では4人の子どもの母です。

今回の救援に参加するためには勤務先の病院を休む必要があり、職場の同僚に勤務シフトを変わってもらったり、子どもの世話を家族に託して災害現場に来ました。

研修時代に看護師としてアフリカで仕事をしたことがあり、「寝る場所がない、食べるものがないという環境には慣れています」とアビディーン医師。「地域の人たちと一緒にいる時間をとても大切にしています。みんなと同じ目線でいたいから」と語ります。

医療スタッフに、ストレスが少ない環境を

仮設診療所のテントを設置する田中要員

仮設診療所のテントを設置する田中要員

日本赤十字社熊本県支部の田中嘉一技術要員。救援活動を支えるのは医療スタッフだけではありません。

技術要員はテントの設置、大型機械の操作、水や自家発電用ガソリンの調達などを担います。また、事務管理要員は物品購入、宿泊先の手配、予算の管理、地元のスタッフの雇用などを担います。

「英語が得意ではないので大変。しかしチリ地震の時もそうでしたが、物資を前にすると自分は日本語、相手が現地語を話していても伝わるものがあるんです」と語る田中要員は、普段は地元である熊本県内で救急法講習の開催を担当しています。

「救援の現場という過酷な環境で働く医療スタッフに、ストレスが少ない環境をつくりたいと思っています。自分たちの仕事により仮設診療所が立ち上がっていくのが目に見えるのでうれしいです」と、地域の人たちと一緒に仮設診療所の設置に携わりました。

外部支援に頼らず、地元で解決していけるように

地域の助産師を指導するホン医師

地域の助産師を指導するホン医師

ケビン・ホン(Kevin Hung)は中国紅十字会香港支部の地域保健専門の医師。村の助産師への患者さんの初期対応の現場指導や、下痢やマラリアなどの疾病に対する予防知識の強化の促進に当たっています。

巡回診療が行われている傍らでホン医師は、地元の助産師から地域の人たちの健康状態について調査を行います。しかし、その姿勢には注意が必要であると言います。

「私が『何を支援して欲しいか』と尋ねてしまうと、”欲しいものリスト”が提示されることになってしまいます。一時的な外部の支援に頼る形にするのではなく、どういった健康問題があるのかを聞くようにして、地元で解決していけるように指導しています」

この日は助産師から、1世帯あたり5~9人の子どもがいるという地域のバース・コントロール(出産調整)について話があり、避妊の状況などについて確認しました。

また地域での子どものビタミン剤の摂取や、歯磨きの習慣がないことについても情報を収集し、適切な保健・衛生教育が必要であると指導しました。

ディヌブダン村の助産師を務めるウィルマ・モラルデさん(42歳)は、助産師として3年目。助産師になる前は、病院のボランティアでした。ウィルマさんの下には、9人の保健スタッフが働いています。この10人がディヌブダン村の約2,300人の住民の健康を見守っています。

ホン医師はウィルマさんと話した後、残りの9人の保健スタッフを集めて講習会を行いました。「こういう症状の時は、どう対応しますか?」といった応急手当についての質疑応答から、井戸の周囲で排尿をすると井戸水に悪い影響を及ぼす危険性があるという衛生に関する知識などを伝えました。

ウィルマさんはホン医師に刺激され、「もっと勉強しないといけない。今回の経験を生かしていきたい」と語りました。

日赤の保健医療チームはフィリピン台風災害に対する救援活動を続けています。引き続きご支援をよろしくお願いいたします。

安否調査

日本政府によると、レイテ、サマール両島に居住する日本人133人全員の無事が確認されたとのことです(11月30日現在)。