【防災・減災】助かる力を高めるために 防災減災において、町内会や自治会などの地域コミュニティで「自助」と「共助」の力を高めることは重要です。日赤が全国で取り組む「赤十字防災セミナー」では、災害発生時に予想される被害や避難生活などに対応する4つのカリキュラムを用意。命を守る方法を地域に密着した形で学びます。この中から今回は、令和元年台風第19号災害の被災地、栃木県足利市毛野地区で行われた災害図上訓練(DIG)の様子をリポートします。

赤十字防災セミナーとは?

防災ボランティアが進行を助ける。地域住民に近い立場で、参加者全員が参加できる場づくりをフォローし、会場を盛り上げる役割も

【赤十字防災セミナーの概要】
セミナー対象者:町内会・自治会から小学校区程度までを範囲として、原則として一般成人の方
【内容】
4つのカリキュラムから組み合わせ可能
■「災害への備え」講義:約60分
災害の知識を深め、個人、そして地域でできることを考える
■災害エスノグラフィー:約120分
実際の被災者の体験談を読み、災害時の状況を追体験する
■災害図上訓練(DIG):約120分
居住地域の地図を使い、災害リスクを可視化。参加者の意見交換によって気づきを共有し、地域課題に向き合う
■応急手当てなど
赤十字救急法をベースに住民たちの力で応急手当てを行う技術を学ぶ

地域単位の情報交換だからこそ見つかる、意外な“災害リスク”

土砂崩れや溢れる可能性がある溜め池などの危険地域、足の悪い人のいる家など、心配のある場所にシールを貼っていく。渡良瀬川に近い町では、排水の重要性から土地の高低差を書き入れて水の流れを追うなど、被災体験を通した意見交換が行われた

毛野地区には25の町があり、古くからの地域と新しい住宅が混在しています。台風第19号の被害の大きさは地区の中でも差が出ました。地域からの要望で行われた赤十字防災セミナーには、各地区の代表者が参加。市の社会福祉協議会は、参加者が防災知識を持ち帰り、町単位で広めてもらうことを期待しています。

災害図上訓練(DIG)では、地図に自宅や防災設備、危険な場所などを記し、情報共有しながら災害リスクを把握します。大きな被害が出た川崎町は、町内会が被害状況を把握してボランティアセンターの機能を果たしたことで、復興対応が早かったそうですが、DIGに参加した自治会長の岩崎正司さんは「自治会は任期ごとに人が入れ替わる。人に左右されない継続性のある防災委員会などを作ることが必要」と、新たな課題を教えてくれました。

DIGで参加者が一体となり、自分ゴトとして地域を見直すことで、わかっているつもりのことにも「気づき」が生まれます。自助の知識を得て、災害に備えることが、自分や周りの大切な人の命を救うことにつながります。