これからの赤十字 vol.5

富田 博樹

医療事業推進本部長

「誠実な医療」で人道を実現

医療事業推進本部における現在の取り組み

現在、日本の医療は難しい環境にあります。少子高齢化社会にむけて、時代のニーズに合った病院医療への変革を求められています。

この現状に対応するために、我々は赤十字病院グループとして病院運営の効率化に取り組んでいます。そのためには人材育成が欠かせません。医師・看護師やその他の医療スタッフだけでなく、病院経営を担う事務職員の育成にも力を入れています。

また、赤十字病院の3分の1は医療過疎と呼ばれる地域で診療を続けています。その大半は赤字経営を余儀なくされていますが、その地域に住む方々に医療を提供し続けることは、赤十字の使命でもあります。他の赤十字病院から医師や看護師を派遣するなどして、赤十字全体で地域に寄り添う医療に取り組んでいます。

医療事業推進本部、そして赤十字のこれから

赤十字病院は、救急・がん・周産期などの重要な分野で高度な医療を行う病院が多いことが特長です。緊急手術が必要な患者を24時間受け入れる救命救急センターを数多く持ち、がんなどの高度専門診療も行います。手術数も多く、実績があります。
我々はこの高度な医療レベルを継続させながらも、さらに向上を目指すとともに、一方で「へき地」においても継続して医療を提供し続けます。

これから日本は高齢化に伴う多死社会を迎え、入院医療に加えて在宅医療、さらに看取りの課題に取り組まなければなりません。私たちは、この課題へ大いに関わり、更に推進することに努めていきます。
例えば、日赤の看護師が行う「健康生活支援講習」は、介護や高齢者の自己管理、在宅看取りなどそのノウハウを学ぶことができます。これからも地域を助け、最後まで寄り添い続ける組織でありたいと思います。

また災害救護、国際救援などの特色を生かして国内・国外問わず医療スタッフを派遣し、社会に貢献をしていきます。これらの活動を通じて、たくさんの感謝の声をいただいています。

赤十字は「誠実な医療」を続け、これからも、日本中・世界中から感謝される活動に取り組み続けていきたいと思います。

自身の「赤十字人」としての体験など

東日本大震災でのことです。福島県で原発事故が発生した時に、福島赤十字病院の職員はそこに踏みとどまり、70班を超える救護班を出し続けました。
さらに赤十字国際委員会から急送されてきた個人線量計を身につけた救護班も全国から駆けつけ、福島県で被災した方々の救護にあたりました。
私は当時、武蔵野赤十字病院の院長でしたが、救護班の一員として福島で活動しました。

その光景を見て、私はこれこそが、「苦しんでいる人を救いたい」という人道の理念を持つ、赤十字の根幹だと強く感じ、感動しました。

被災した方々には、なるべく早い「こころのケア」が必要です。
こころのケアの研究者が被災者にインタビューした際、こんな話を聞いたそうです。
「災害が起こった時、赤十字の人が救護服を着て現れるのを見て、私たちはほっと安心することができます。守られていると感じるのです。」
私は赤十字の信頼度は誇らしいものであると改めて感じました。

どんなに小さい災害でも、救護班を派遣することにしています。それは、私たちが姿を見せることが被災者の不安を少しでも軽減する「こころのケア」に繋がると考えているからでもあります。

次の世代へのメッセージ

日本赤十字社の力、信頼は大きく、本当に素晴らしい組織だと私は思います

現在の若者たちは、人のために役に立ちたいという精神を持っている人が増えてきたと感じています。そうした若者がボランティアとして物事を動かす力は大きく、例えば東日本大震災の後に、被災地の子どもたちを元気づけようと、約6千名の子どもたちを北海道に招待したイベントでは、2千人近くのボランティアの方々の協力を得て、感動的大成功をおさめることができました。

困っている人のために何か役に立ちたい、そうした「献身」の気持ちを強く持つ人こそが、赤十字の職員であり、目指す人であってほしいと思います。