社長メッセージ
清家篤社長 ごあいさつ
支援者お一人お一人の気持ちを大切に
皆さまには日頃から、日本赤十字社の活動にご理解とお力添えを賜っておりますことに、心より御礼を申し上げます。
2024年の元日に発生した令和6年能登半島地震は、甚大な人的、物的被害をもたらしました。日本赤十字社は発災直後から救護班や災害医療コーディネートチーム、こころのケア班などを全国各地から派遣するとともに、救援物資の配布を行うなど、救護活動に全力を傾けてまいりました。そこでは赤十字のスタッフと共に多くの赤十字ボランティアの方々も展開しました。まさに日本赤十字社の強みである「総合力」を実践したものであったと思います。
国外では、ウクライナでの武力紛争や、イスラエルとイスラム武装組織ハマスとの衝突による人道危機が収まる兆しを見せません。これ以外の紛争も含め、国連の推計では現在世界人口の4分の1の人々は何らかの武力紛争の影響下にある地域で生活しています。そうした深刻な人道危機に対し、日本赤十字社は、赤十字国際委員会や国際赤十字・赤新月社連盟、そして世界中の赤十字・赤新月社と手を携え、救援・復興活動に力を尽くしています。さらに核兵器の脅威も高まっている中、私も赤十字国際委員会のスポリアリッチ総裁と共同で、核兵器による破滅的な結末を避けるよう、世界各国に対して行動を促す声明を発出しました。
また近年では、国内、国外を問わず、大雨による河川の氾濫や、旱魃、山火事などの自然災害による人道危機も絶えません。こうした強い降水や、逆に降水不足による旱魃、山火事などは、CO2増加による地球温暖化によって激甚化、頻発化していると考えられます。このような状況に対し、国際赤十字・赤新月社連盟は2030年戦略において、気候変動への対応を最重要事業分野の一つと位置付け、2021年に「人道団体のための気候・環境憲章」を採択し、日本赤十字社も2022年に同憲章に署名したところです。
地球環境、国際情勢、人口構造などの大きな構造変化の中で、私たちは変わることのない赤十字の理念を実現していかなければなりません。どんな崇高な理念も、状況変化に対応できなれば実現できません。
日本赤十字社の前身である博愛社は、1877年に創設されました。それ以来、今日に至るまで、多くのボランティアの皆さまをはじめ、全国の支部・施設の職員は、人々のいのちと健康、尊厳を守るとの理念のもと、総力をあげて活動をしてまいりました。私たちは、こうした歴史を振り返り、その上で現状を冷静に分析して将来を予測することで、組織のあり方や行動様式を常に見直していかなければなりません。
2027年の日赤創立150周年はその良い機会でもあると考えています。1877年に佐野常民が博愛社を創設して以来150年にわたる、日本赤十字社の礎を築いた先人たちの思いを、今再び思い起こし、創立理念を将来に向けて実現するための改革をさらに進めてまいりたいと考えています。
その第1歩として位置づけられるのが、2025年4月から開催されます大阪・関西万博です。日本赤十字社は、国際赤十字・赤新月パビリオンの企画運営を担います。この機会に内外の多くの皆さまに赤十字運動の思いを伝えたいと考えています。
先に歴史を振り返り、と書きましたけれども、実は万博と言えば、1867年のフランス・パリの万博は、佐野常民が赤十字の展示を見て、初めて赤十字と出会った瞬間でありました。それから150年余の時を経て、日本で開催される万国博覧会に国際赤十字・赤新月パビリオンを出展することは、日本赤十字社としては誠にうれしい限りです。これは日本赤十字社創立以来の歴史に思いをはせ、多くの皆さまに赤十字の理念を知っていただく重要な機会となります。ぜひ多くの方のご来場を期待しています。
赤十字の活動は、多くの皆さまからの会費やご寄付によって支えられています。皆さまから赤十字にお寄せいただくご支援は単なる「お金の流れ」ではなく、温かく、ときに熱い思いのこもった、皆さまの「お気持ちの流れ」です。皆さまからのお気持ちを大切にして、赤十字活動をさらに推進してまいりますので、今後とも引き続き力強いお力添えを賜りますようお願い申し上げます。
せいけ・あつし◎ 1954年生まれ。1978年慶應義塾大学経済学部卒業、博士(商学)。慶應義塾大学商学部教授などを経て、2009年から2017年まで慶應義塾長。現在、労働政策審議会会長、全世代型社会保障構築会議座長なども務める。