中東を襲った"コロナ禍" 今も全世界に影響を及ぼし続けている新型コロナウイルス(COVID-19)。 レバノンに駐在する日赤職員がその最前線をリポートします。
感染の不安と闘いながら救急搬送を行う、赤十字・赤新月社ボランティア
世界中で流行が続く新型コロナウイルス感染症。各地の最前線では、現地の赤十字・赤新月社ボランティアが中心となり、さまざまな支援を展開しています。
中東のレバノンでは、日赤国際部中東地域代表の五十嵐真希が国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)の中東・北アフリカ地域保健コーディネーターも兼任し、ボランティアへの教育や活動サポートを行っています。五十嵐は現地の様子を次のように語りました。
「レバノンでは感染拡大の前から経済危機の懸念が広がっており、反政府デモなどが続く不安定な情勢でした。そこへ新型コロナウイルスの影響が重なり、経済悪化・治安悪化・感染拡大という3つの困難がレバノンを直撃しています。私の自宅近くでもデモへの発砲音が聞こえるなど、街全体に緊迫した雰囲気が張り詰めています。そんな中、連盟では防護服や救急車などの物資提供をしていますが、実際の救急搬送を担うのは医療関係者ではなく、現地のボランティアです。ボランティアたちのプロフェッショナルな意識には敬服します。感染の恐怖と闘いながらも献身的に患者の搬送にあたる、そんなボランティアを守るため、感染防止の正しい知識を提供し、トレーニングを行うのも、赤十字の重要な仕事です」
シリア避難民への支援など 中東地域全体の課題も
レバノンだけでなく中東地域全体を見渡しても、課題は山積みの状況です。五十嵐は中東の国々の現状について「イエメン、イラク、シリアなど保健医療システムが崩壊している国もある」と指摘します。「中でもシリアは2011年から続く紛争によって国内に600万人以上の避難民がおり、苦しい状況に陥っています。ただでさえ厳しい生活を送る彼らにも新型コロナウイルスの脅威が降りかかっていますが、今はシリア国内の避難民への支援を十分に届けられていないのが現状です」と、さらなるサポートの必要性を語りました。
予断を許さない新型コロナウイルスの猛威。今もなお多くの国の人々が困難に直面しています。世界各地の赤十字・赤新月社は「連帯」の心を忘れることなく、今後も新型コロナウイルスと闘い続けます。