WORLD NEWS:国際赤十字のワクチンへの取り組み 貧困国や移民にも公平なワクチン配分を目指して

バングラデシュでは保健当局が予防接種の大規模キャンペーンを展開。バングラデシュ赤新月社もフル活動(©バングラデシュ赤新月社)

日本を含む世界各国で接種が進む新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチン。
国際赤十字全体で、ワクチンの公平な配分に向けてキャンペーンが展開されています。

脆弱(ぜいじゃく)な立場の人々にもワクチンを…モルディブは非正規移民にも無償で提供

カザフスタン赤新月社とIFRCが開発したSNSのチャットサービス。ワクチン接種への理解を深められるように最新情報を提供している

 COVID-19に対するワクチンは、世界の国々で開発や承認が進められています。しかし、これまでにワクチンのおよそ70%は富裕国上位50カ国で投与されており、最貧国50か国では0.1%しか実施されていません(*1)。
 国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)は、より公平なワクチン接種を支援するため1億スイスフラン(日本円で約117億円)の追加計画を2月に発表。医療従事者や高リスクの患者への投与を優先しつつ、移民や、紛争の被害者、災害の被災者といった最も弱い立場にある人々への支援を明確に打ち出しています。

 世界各地で、すでに66の赤十字・赤新月社がワクチンキャンペーンを展開中です。
 バングラデシュではこれまでに530万人がワクチンを接種。そのうち270万人がバングラデシュ赤新月社の支援によって行われました。バングラデシュ全土に公平にワクチンがいきわたるよう、約1000人が新規にボランティア登録をし、350以上の郡で毎日1700人もの地元ボランティアが啓発活動やワクチン接種希望者の登録作業などに従事しています。
 さらに、インド洋にあるモルディブ赤新月社は国内にいる非正規移民にもワクチンを接種できるよう政府や保健当局に訴えかけました。その結果、自国民だけでなく脆弱な立場の移民にもワクチンが無償提供されることが決定しました。
 また、各国の赤十字・赤新月社はSNSによるワクチン啓発活動も積極的に展開しています。カザフスタン赤新月社はIFRCと協力して、ワクチンに不安を抱き、ワクチン接種を躊躇(ちゅうちょ)する人々に向けて、SNSのチャット上で自動会話ができるプログラムを開発。疑問や懸念を持って質問した人に正確な情報を伝え、不安の解消に努めています。

「全員が安全になるまで誰も安全ではない」 この1年で学んだ、コロナ禍のリスク対策


 貧困や移民問題を抱えるアメリカ大陸担当のIFRC職員マーサ・キーズさんは、公平なワクチン接種の意義について次のように語ります。

「この1年で私たちが学んだことは『全員が安全になるまで、誰も安全ではない』ということ。パンデミックで最たる影響を被るのは、最も保護が手薄な人々です。アメリカ大陸(*2)には約5750万人の移民がおり、これは世界全体の移民の約5分の1以上に相当します。移民は、必要な保健、水、衛生サービスへのアクセスが制限され、劣悪で混沌(こんとん)とした生活・労働環境に置かれていることが多く、ウイルスの脅威にさらされやすいといえます。私たちは赤十字として、弱い立場の人々が感染し、感染流行がさらに拡大する危機に備えるため、彼らを支援し、彼らの安全を強化する活動に努めています。世界規模の危機に立ち向かっているという意味で、COVID-19は私たちのつながりをより強固なものにしました。他方、公平な支援が実現できないと、さらなる格差と、生存すらままならない多くの人々を置き去りにする恐れがあります。私たちは、世界的な連帯強化、誰一人置き去りにしない支援の実現に努めなければなりません」

 ワクチンの公平な配分は全世界の安全と安定に貢献します。国際赤十字は引き続きCOVID-19への対策を強め、連携を進めてまいります。

*1 2021年4月時点
*2 米州およびカリブ海地域