"感染爆発"のインド。現地赤十字社、不屈の闘い インドとその周辺の南アジアで新型コロナウイルス感染症が猛威を奮っています。 パンデミックの渦中にある現地赤十字社と赤十字ボランティアの活動をリポートします。

ⓒインド赤十字社
インドで最も被害の大きいマハラシュトラ州での救急搬送の様子。現地の赤十字病院もCOVID-19 対応病院に指定されているが、医療物資の不足が深刻化しており、限界に近付いている

医療崩壊の真っただ中にあるインドで 総力戦で立ち向かうインド赤十字社

インドにおける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者は、累計2200万人に達し、死者数も25万人を突破(2021年5月10 日現在)。1 日当たりの新規感染者数は40万人を超えたこともありましたが、これは世界の新規感染者数の半分にあたる数です。インド国内はこの突発的な感染爆発で、急速に病床や医薬品、治療用酸素などの物資不足に陥っており、医療崩壊が起きています。

こうした事態を受け、インド赤十字社は、政府の補助機関として、人びとの医療支援に総力を挙げて取り組んでいます。マハラシュトラ州にあるインド赤十字社が運営する病院では、COVID-19専用病床を開設し、同時に、ワクチン接種会場を設置して不眠不休の対応にあたっています。またインド赤十字社の550の支部は、地元行政と協力しながら、救急車での患者搬送支援、ワクチンキャンペーン支援、PCR検査実施、隔離施設の立ち上げ、マスクや衛生物資の配付と啓発活動などを進めています。インド全土で4 万6000人以上の赤十字ボランティアがこの活動に従事しています。

インドと隣接する国々でも 感染が急速に拡大中

インド周辺の南アジア各国でも感染拡大は予断を許さない状況です。インド北東の隣接国・ネパールはインドに続き数週間で感染者数が一気に増加。3月初旬の感染者数は1日当たり100人以下でしたが、5 月現在は1日9 千人以上の感染者が発生しており、死亡率も上昇しています。こうした中、ネパール赤十字社は、インドと国境を接する南部地域で入国時の検疫施設を設置し、スクリーニングの強化に貢献しているほか、105のワクチンセンターで赤十字ボランティアが検温や登録、情報提供などに従事しています。

またインドの北西に位置するパキスタンでは、4 月に3 週間に及ぶロックダウンが実施され、さらに5 月からは、より厳格な封鎖措置となる「シャットダウン」が行われました。このため生活困窮者が急増しており、こうした事態を受け、パキスタン赤新月社は、人々への医療支援とともに緊急の食料支援等も展開しています。

また、南アジアに加えてカンボジア・ラオス・インドネシア等東南アジア諸国でも感染の拡大が懸念されています。国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)のアレクサンダー・マシュー アジア大洋州担当局長は次のように述べています。「COVID-19はアジアの広範囲で爆発的に流行し、病院や医療機関を圧迫しています。東南アジアでも、南アジアで起きているような感染拡大の兆しがみられます。私たちは今後数週間で事態がどう推移し、それにどう備えるのが最善かを考えなければなりません。今、私たちが必要としているのは、医療機器の増強、予防のための支援、ワクチンの供給などの地域的な支援とそのための世界的な連帯です」

連盟は、インドを含む南アジアの国々に対する支援を世界に向けて呼び掛け、現地の赤十字社・赤新月社と連携し、人道支援に取り組んでいます。

ⓒネパール赤十字社
ネパール・ラリトプル地区で、地元住民に対し感染予防の啓発活動を行う赤十字ボランティア