赤十字名所紀行 「日本赤十字社中央病院 病棟」 ニッポンの赤十字ゆかりの地を巡る<Vol.9>
昭憲皇太后と赤十字の縁を感じられる明治時代の病院建築
現在、愛知県の博物館 明治村にある日本赤十字社中央病院の木造建築は、東京・広尾の日赤医療センターの旧病院舎の一部です。皇室から建築資金10万円と、渋谷の御料地の一部が下賜されたことで、明治23年に竣工しました。設計は、赤坂離宮などを手掛けた宮内庁技師・片山東熊によるもので、細部にわたり繊細な装飾が施され、美しい建物であると同時に、当時の最先端の病院機能を備えました。昭和49年の病院立て直しの際、9棟あるうちの一棟が博物館明治村に移築され、現在も登録有形文化財として保存展示されています。内部の壁には当時病院を飾った社章「桐竹鳳凰」の木彫りの彫刻が今も遺されています。「桐竹鳳凰赤十字」は、昭憲皇太后から示されたかんざしのデザインに基づくもので、鳳凰は卵やひなを守るような姿勢で、両羽を大きく広げて赤十字マークを抱いています。赤十字事業への協力などに功績のある方々が授与される有功章や、赤十字の職員章にも刻まれているデザインです。