戦闘激化で人道の危機にあるウクライナ ~世界の赤十字が支援活動を展開~
ウクライナを巡る情勢が毎日のように報道されています。中には子どもやお年寄りが戦闘により亡くなるなどの心痛むニュースも多く、世界が固唾(かたず)をのんで見守っています。この人道危機に際し、世界の赤十字が取り組む最新の活動状況をお知らせします。
爆撃の中で活動を続けるボランティアたち
2月24日に勃発したウクライナ危機に対して、ウクライナ赤十字社をはじめとする各国赤十字・赤新月社が連携した人道支援を展開しています。
戦禍のウクライナでは、戦闘が始まってから1カ月足らずで、自宅を離れて国内・国外に避難を強いられた人は1000万人に達しました。
一方でウクライナ赤十字社に新たに登録するボランティアは増え続けており、約6000人(3月9日現在)が各地で救援物資の配布や応急手当ての訓練、障害のある方や子どもなど支援が必要な方々の避難のサポートをしています。
爆撃が続くウクライナでの活動は命がけですが、ボランティアのユリアさんは「私は人々を助けたい。だからここにいるのです」と語っています。ウクライナ赤十字社のマクシム事務総長は、2月28日にオンラインで行われた国際赤十字調整会議で「最善な人道支援を尽くすために欠かせないこと」として、市民だけでなくスタッフ・ボランティアの十分な安全確保を誓いました。
各国赤十字社が連帯した公平・中立な支援
周辺国であるクロアチア、ハンガリー、モルドバ、ポーランド、ルーマニア、スロヴァキアの赤十字社では避難してきた人々の支援活動が行われています。国境の両側では食料や水、寝具などのほかに大切な人と連絡が取り合えるよう携帯電話用SIMカードも配布しています。また離れ離れになった家族の再会支援なども、各国赤十字社のボランティアによって支えられています。
支援の対象はウクライナ人だけではありません。ナイジェリア人のフランシスさんとカメルーン人のフランクさんは、ウクライナ留学中にこのたびの事態を受けて家族で避難。「ハンガリー赤十字社の手厚いサポートにより赤ちゃんの食事が確保できました」と感謝を語りました。
各国赤十字社・赤新月社の活動は周辺国にとどまらず、イタリア赤十字社ではトラック4台分の救援物資をルーマニア国境に近いウクライナの町に運搬。またトルコ赤新月社はキッチンカーで炊き出しを行い、ウクライナから国境を越えて避難する人々に温かい食事の提供を行っています。
ロシア赤十字社では187トンの救援物資を準備。ウクライナとの国境の町でウクライナからの避難民に物資の配布や医療支援、こころのケアなどを実施しています。
日本赤十字社では3月4日に2000万円の緊急支援を行うことを決定。さらに3月末までにICRCとIFRC※に対し各3億5000万円(計7億円)を追加拠出します。各国赤十字社から届いた物資や資金は国際赤十字の調整のもと、必要とする人々に確実に届けられます。ウクライナでの人道支援と、ウクライナからの避難民を受け入れる周辺国などで活用される「ウクライナ人道危機救援金」にご協力をお願いいたします。
※ICRC:紛争地での支援活動を行う赤十字国際委員会、IFRC:避難民などの支援を行う国際赤十字・赤新月社連盟
Special Column:ウクライナ危機と国際人道法 〜「戦争」にも「ルール」がある〜
ウクライナ人道危機の深刻化に伴い、日本赤十字社には多くの方から「私たちにできることはありますか」との温かい声や救援金が寄せられています。
ウクライナ内外で苦しむ人々のため、日赤を含めた世界中の赤十字が協力し、全力で人道支援にあたっているとともに、紛争地をはじめ国際社会に向けて強く訴えているのが下記にある「国際人道法」の順守です。
こうした国際人道法のルールは、「紛争地で救うことができたはずの多くのいのちがあった」という思いが今日の国際社会で共有されている証拠と考えられます。だからこそ今、一人でも多くのいのちを救うために、「戦争にもルールがある」という国際人道法の認識を改めて社会に広めていくことが重要です。
国際人道法をより多くの人が知り、守り、支持することが、紛争当事者にその順守を促し、私たち民間人を守ることにつながります。
紛争当事者による戦闘の方法・手段は無制限ではない
攻撃は軍事目標に限定し、文民(=一般市民)とその生活インフラ(病院、学校、文化財、発電所など)に過度の損害を与える無差別な攻撃(兵器の使用)は禁じられています。戦闘に従事する者と従事しない文民を区別することが人道法の鉄則です。
人道支援活動は尊重され、保護されなければならない
人々のいのちと尊厳を守る中立・公平な人道支援活動が妨害されることがあってはならず、紛争当事者はこれを尊重し、保護しなければなりません。
国際人道法について詳しくは、こちら(アニメーションで解説しています)