令和4年8月3日からの大雨による災害続報 被災地で活動する赤十字ボランティアの声
山形県、新潟県、石川県、福井県、青森県の35市町村に災害救助法が適用。多くのボランティアが活動しています。
新潟県赤十字安全奉仕団 五泉市分団委員長
田島孝子(たじまたかこ)さん
安全奉仕団は、赤十字救急法の講習を受けた救急員や、その指導員で構成されています。8 月7 日からの活動期間中は猛暑で、当初ボランティアセンターからは熱中症や体調不良の方のケアを依頼されました。しかし私たちは、他の被災地で熱中症の重症者を一人も出さない活動を経験していたので、傷病者を待つよりも、予防活動を中心にしようと方針を変えました。まず、ボランティアを取りまとめる役目の方々に、熱中症の予防策と、熱中症初期の対応を具体的にお伝えし、活動開始前に意識を高めていただきました。そして安全奉仕団は、災害現場で活動するボランティアのもとに出向き、声を掛けながら健康観察をしました。
災害現場の見回りで、ボランティアに大きなけがや病気は発生しませんでしたが、被災された方の中にご自身のけがを家族にも言い出せず、悪化させてしまったケースに数件、遭遇しました。私たちの活動は被災者の「こころのケア」も兼ねていますから、被災された高齢者と話をしたところ、私たちが赤十字と知って「ちょっと見てもらいたい」と傷を見せられて。薬なども流されて消毒ができず、傷がひどく化膿したのを、家族にも黙っていたのです。それからは、見回りで新しい現場に行くと、その家の方に遠慮されても、消毒薬などの衛生用品をお渡ししました。声を発せられずに我慢している方々にも気付ける活動ができて、よかったです。
日赤石川県支部防災 ボランティア・リーダー
北村裕一(きたむらゆういち)さん
赤十字の防災ボランティアとして、普段の防災セミナーでは応急手当てや災害時の対応を啓発しています。今回、私がボランティアとして水害の被害に遭った家の片付けに行ったとき、近くに住む一人暮らしの高齢者が私の着ているベストの赤十字マークを見て遠慮がちに声を掛けてきました。その方の家に行ったら、そこも水害でひどい状況になっている。でも、周りの家々も大変なんだからと2週間も我慢していた。一人暮らしの高齢者などには、片付けボランティアの要請がどこでできるかや、どこで物資がもらえるかなどの支援の情報が伝わりづらい。その方のように、遠慮して「助けてほしい」と言えない、という場合もある。災害が起きた時、日頃の近所の会話がいかに大切であるかを実感します。どこに、どのような人がいるか知っておくことが防災力(自助・共助)を高めるのです。
9月からは台風シーズンです。8月の水害は石川県全域で二度の大雨があって、小松市では復旧の活動が一からやり直しになり、被災者もボランティアも心が折れそうになりました。今までいろいろな災害現場を回ってきて、自然災害が起きると次に心配なのは労働災害。支援する側にもケアが必要になってきます。被災地では一人でも多くのボランティアを求めています。被災地でボランティアをしたいと思う方は、健康に気を付けつつ、汚れても大丈夫な格好で、ぜひ参加してもらえたらと思います。
【赤十字安全奉仕団】
日赤各支部で実施している各種講習(赤十字救急法など)を受講し、救急法救急員や指導員の資格を持つ人で組織される。普段は講習会などで心肺蘇生やAEDを使った一次救命処置、応急手当てなどを教える指導員やスタッフとして活動。災害発生時には被災地の支援活動に参加し、被災者やボランティアの健康を守る活動に参加するケースも増えている。
【赤十字防災ボランティア】
災害時に応急救護、復旧などの活動に協力するボランティア。本社および各支部では、防災ボランティアを養成するための研修会を随時開催しており、研修を受講された方は居住地域ごとに登録をする。防災ボランティアは、日頃から各地で開催される研修や訓練、イベントに参加してスキルアップを目指し、突然起きる災害に備えている。
この災害の赤十字ボランティアの活動状況 [9月12日現在] 延べ人数 342人
知っておきたいボランティアの準備と心構え
災害時のボランティア活動は無理なく、安全に!
災害時のボランティア活動は、ボランティアお一人お一人が安全で健康な状態で臨み、活動を自己完結させることが大切です。
日赤は、国内外での災害救護活動の知見などを生かし、災害時における安全なボランティア活動のために必要な準備や注意点について学べるPDF冊子「ボランティア、ご安全に!」を公開しました。
災害時のボランティア活動において、けがや病気を防ぐための対策が必要です。また、新型コロナウイルス感染症のまん延から、ボランティア自身の安全確保という課題があらためて浮き彫りになっています。充実した活動を行うために、安全や衛生について必要な準備をすること、心と体の健康を整えることが重要です。
活動前
最低限の衛生用品、応急手当て用品は持参しましょう
マスク、ハンドソープ、健康保険証は必携。日焼け止めや虫よけ、目薬、水やのどあめもあると便利です。
※活動内容やご自身の状況にあわせて 必要なものを持参しましょう。
活動中
被災した建物に入る際のポイント
被災した建物は粉じんにより健康を害する可能性があるなど、安全ではないことを前提に活動します。活動中にけがをしたら直ちに清潔な水で洗います。
睡眠不足、水分不足による体調不良に注意
睡眠や水分、食事は十分にとりましょう。無理をして集中力が欠けると、活動中のけがや体調不良につながりやすくなります。また水分不足だけでなく睡眠不足も熱中症になる原因の1つです。
活動前、活動中、活動終了後
感染症にならない、広げないための対策を
被災地でボランティア活動を行う際は感染症にも注意が必要です。ハンドソープでの手洗いとアルコール等での手指消毒を徹底しましょう。
ボランティアの心構え、大切な知識が1冊に
冊子「ボランティア、ご安全に!」は、救護活動の経験が豊富な日赤の医師と共に作成し、赤十字ボランティアが挿絵を担当しました。