人口の半分が飢え、国土の3分の1が水没...光の当たらない「重大な人道危機」 【アフガニスタン、パキスタンの人道危機】

パキスタンの首都、イスラマバードの被害の様子。同国は国土の3分の1が水没した(写真:©パキスタン赤新月社)

気候変動が引き起こす干ばつや洪水に加え、ウクライナ紛争などの影響を受け、世界各地で食料危機と物価高騰が起こる中、さらなる危機へと追い込まれている人々がいます。

あらゆる危機が同時発生
困窮を極めるアフガニスタン


 この60年で最悪といわれる干ばつの影響により、人口の8割がその生計を農業に頼っているアフガニスタンでは、現在、2人に1人以上が極めて深刻な食料不足に直面している、と国連は推定しています。

 そんなアフガニスタンを、さらなる自然災害が襲います。今年6月には大地震により6万世帯の家屋が倒壊・損壊し1000人以上の命が奪われ、また7~8月にかけて季節外れの大雨により大洪水が発生し、全34州のうち20州以上に甚大な被害をもたらしました。

 アフガニスタンは従来、複合的な人道危機に直面していました。数十年にわたる紛争や相次ぐ自然災害、不十分な保健医療環境、新たな感染症の流行――食べ物と安全な場所を求め多くの避難民が発生し、多くの人々が困窮する中、昨年8月のタリバン政権発足に伴う国際支援の撤退や見合わせが、状況に拍車をかけました。長期化する複合的な人道危機において、影響を最も大きく受けるのが、特に女性や子ども、高齢者といった社会的に弱い立場にある人々です。

 現在、同国で急性栄養失調状態にある5歳未満の子どもの数は320万人にのぼり、一刻も早い治療を要するといわれている一方で、国際社会からの財政的・技術的支援により運営されていた2300の医療施設は閉鎖され、残った1200の施設は人手不足・資金不足に陥っています。このままの状況が続いた場合、1日あたり10人の母親、55人の新生児、112人の子どもが命を落としてしまうと予想されています。

地震の被災地で支援物資を受け取りに来た子どもに話しかけるアフガニスタン赤新月社のスタッフ(写真:©IFRC Asia Pacifi c / Meer Abdullah Rasikh)

洪水で家屋損壊170万棟以上
パキスタンは国家非常事態に


 一方、アフガニスタンの隣国・パキスタンでは、今年6月以降の豪雨と洪水により、国土の3分の1以上が水没する危機的状況に見舞われています。9月中旬時点で1400人近くの方が亡くなり、3300万人以上が被災し、65万人以上が救援キャンプで生活していると推測されていますが、被災地への道路が寸断され全容がつかめていないため、さらに深刻な被害が生じていることが懸念されます。

 ウクライナ紛争により世界の関心と支援がウクライナや周辺国に集まる一方で、その報道の陰には、長引く深刻な人道危機に陥っているアフガニスタンや、このたびの甚大な自然災害により「国家非常事態」を宣言したパキスタンのように、支援を必要とする人々がいます。私たちは、今この瞬間も、命と健康、尊厳が脅かされているアフガニスタンやパキスタンの人々のことを決して忘れるわけにはいきません。

 アフガニスタンの冬は厳しく、最も寒い地域ではー27°Cまで気温が下がることもあります。また170万棟以上の家屋が損壊したパキスタンでは、多くの人々が避難テントで冬を越さなければなりません。

 両国において、現地赤新月社と国際赤十字は懸命な支援活動を続けており、日本赤十字社も資金援助を行っています。現地の人々に少しでも多くの支援を届けるため、海外救援金へのご協力をよろしくお願いいたします。


[ ご支援、よろしくお願いいたします! ]

アフガニスタン人道危機救援金
受付期間:2023年3月31日(金)まで

2022年パキスタン洪水救援金
受付期間:2022年11月30日(水)まで