誰も取り残さない。 紛争からも 飢餓からも。 NHK海外たすけあい 12.1(Thu)〜25(Sun)

報道されない、数十年で最も深刻な
アフリカの食料危機

2022 年は、ウクライナにおける武力紛争によって当事国の人道危機だけでなく、世界中の社会経済に多くの影響を与えた1年となりました。武力紛争もコロナ禍もいまだ収束にはいたらず、暗い影を落とし続けています。大きく報道されるニュースに関心が集まる一方で、人知れず深刻さを増している人道危機があります。

日本から遠く離れたアフリカで起きている食料危機。

干ばつなどの気候変動や感染症流行の影響で悪化する社会経済に加え、国際社会の混乱によって食料供給が不安定になり、アフリカに追い打ちをかけました。激しい戦闘行為や、多くの避難民発生などの緊急事態は連日報道されても、アフリカで多くの人々が飢えに苦しみ、深刻な事態に陥っているという報道の数は多くありません。そのため、この危機に関心を向ける人の数も少ないのです。

[ウクライナ人道危機]・・・報道で多く取り上げられ世間の関心も高いため、救援金が集まっています/[アフリカの食料危機]・・・気候変動や感染症流行の影響で社会経済は悪化…食料供給も不安定な中、日本の人々の関心はあまり寄せられていません

ウクライナにおける武力紛争とアフリカの食料危機。

一見関係のないもののように見えて、2つの問題は互いに影響しあっています。
そして国や民族に違いはあっても、人々の苦しみに違いはありません。

関心の差が支援の差になってはいけない。
“ 人道・公平 ” という原則の通りに、赤十字は最も支援を必要とする人々のために、世界の隅々で活動を続けます。

アフリカでいま、何が起きている!?
多くの子どもが犠牲に…

アフリカでは日本の全人口を超える1億4600万人が深刻な食料不足に陥り、緊急の人道支援を必要としています。この問題に対する世界の関心を高め、人道支援を強化するため、国際赤十字は今年9月に支援国赤十字社の代表らをアフリカ各地へ派遣、視察結果を基にケニアで支援戦略会議を開催しました。

ナイジェリアを視察した日赤本社国際部長の田中康夫さんは「気候変動による干ばつの影響を最も受けているソコト州は、3月~5月の調査では人口590万人のうち100万人が食料危機・緊急事態下にあり、その数は次の3カ月間で127万人(国内避難民2万7000人を含む)に増加しています。2021年の同データが83万人であったことを考えると、状況がさらに悪化しています。ナイジェリアでは1年で36万人の子どもたちが栄養失調に関連する病気で命を落とし、食料危機の最大の犠牲者になっています」と話します。

支援戦略会議では、アフリカの食料危機に対する緊急及び長期的対応を赤十字の優先課題としてあらためて位置づけることを確認。また、地域に根差したネットワークを持ち、苦しんでいる人々に支援を直接届けることができる赤十字の強みを生かし、国連機関などとの間でより強固な連携を図っていくことも合意しました。

日赤のアフリカ地域での主な取り組み

ルワンダのグテカさんは、自宅の菜園でとれた野菜を使って、家族のためにバランスの取れた食事を作れるようになりました/写真:©︎ルワンダ赤十字社

【ルワンダ】家庭菜園で育てた野菜を栄養改善に役立てる

ルワンダは1990年代の内戦が終結して以降、急速な経済発展を遂げ「アフリカの奇跡」と呼ばれていますが、それは首都キガリなど一部のこと。人口の8割が暮らす農村部では、都市部との大きな経済格差が生じ、過半数の人々が貧困に苦しんでいます。日赤は2019 年から、ルワンダ赤十字社と連携し、特に貧しい5つの村で5カ年計画のモデルビレッジ事業を進めています。これは住民が主体となって村の課題に取り組み、「レジリエンス=自ら立ち上がる力」を高めるもの。家庭菜園用として緑黄色野菜などの種を配布し、バランスの取れた食事で健康を促進する啓発活動を行ったり、牛・豚・ヤギなどの家畜、家畜を育てるための飼料などを提供し、地域住民が自立するための生計支援を行っています。

農作物の加工法を学ぶガンビアの女性たち/写真:©︎国際赤十字・赤新月社連盟

【ガンビア】村の女性たちによる気候変動に適応した農業の実施

ガンビアは農村部の約8割の人々が農業に従事している西アフリカの小国ですが、近年は気候変動の影響で、干ばつ、豪雨、害虫が頻(ひん)発し、農作物の収穫量がここ数年で半減しています。高い貧困率や人口の急増と相まって、国民の栄養不足が深刻な問題となる中、日赤は2021年に、地域の農業を担う村の女性たちを対象として野菜の生産量と所得の向上を目指すガンビア赤十字社の共同菜園作りを支援しました。野生動物から野菜を守るための鉄格子のフェンスを設置したほか、太陽光パネルを用いたポンプ式の貯水槽などを導入して、共同菜園はもちろん、炊事や飲料水にも安定的に安全な飲み水を供給できるようにしました。また、村の女性たちに対して、農具の使い方や堆肥づくり、農作物の加工方法などの知識と技術を教える研修を実施し、気候変動に適応した農業を行うことで、収入の向上と村人たちの栄養状態の改善にも貢献しました。

給食のおかゆを食べるマラウイの子どもたち/写真:©︎Ichigo Sugawara

【マラウイ】子どもたちの栄養を補う給食の提供

マラウイはHIV(※1)感染率が世界で9番目に高く(※2)、エイズにより親を亡くした孤児は100万人に及び、5世帯のうち1世帯に孤児がいるといわれています。マラウイ赤十字社は子どもたちの健やかな成長と健康を守るために保育所の運営を行っており、日赤は2012年から支援しています。マラウイ赤十字社は、0歳から6歳までの乳幼児1400人以上が通う5 カ所の保育所に、給食のおかゆ用のトウモロコシと大豆の粉、そして調理器具や食器のほか、保育所が菜園を設置し、給食に必要な食材を自給自足できるように種や肥料も提供しています。また、収穫したトウモロコシと大豆を製粉する方法を保育士たちに教えるための研修も行っています。子どもたちの家庭の多くは、経済的に貧しく食べ物が不足しているため、保育所に通う子どもたちにとって給食は不可欠な栄養源であり、また楽しみでもあります。新型コロナウイルス感染症の影響によりマラウイ全土で学校が封鎖された際には、子どもたちがきちんと栄養を取れるよう、保育所から各家庭に給食を配達しました。

(※1 ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus)、※2 2020年:USAID)

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世界各地の、さまざまな危機の支援に
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日本赤十字社とNHKが例年12月に実施している募金キャンペーンが今年40回目を迎えます。「誰も取り残さない。紛争からも飢餓からも。」をテーマに、気候変動、感染症、食料危機などさまざまな人道危機の影響でますます困難を極める、脆弱(ぜいじゃく)な環境下で暮らす人々を救うため、地域に根差した支援を届け続けます。
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日赤 海外たすけあい

アニメーションCM公開中

今年のNHK海外たすけあいキャンペーンの動画は二次元コードに着想を得たアニメーションCM。ヨーロッパの紛争の陰で、注目が集まりにくい人道危機にも赤十字が支援を届けているというストーリー。主にスマートテレビ(インターネットに接続されたテレビ)のYouTube広告で配信し、画面の中心に表示され続ける二次元コードをスマートフォンで読み取ると、キャンペーン特設サイトにつながります。また、YouTube 日赤公式チャンネルでもご覧いただけます。