僕の命を支えてくれた「温かな献血」 29歳で余命3カ月の宣告。あれから6年、生き抜いた。

末期の急性リンパ性白血病と診断され、遺伝子の染色体異常も判明。治療しても回復の見通しが立たないと、医師からは「余命3カ月」の宣告。それから5年10カ月。蝦名聖也さんは数え切れないほどの赤血球・血小板輸血を繰り返し、過酷な治療を乗り越え、「一日でも長く生きて、恩返しをしたい」と、健康に良いメニューを提供するレストランを東京都内に開業しました。蝦名さんが食や治療、献血のことを発信し続ける、その思いを伺いました。

闘病の様子や思いを伝える蝦名さんのインスタグラムはこちら

【蝦名 聖也 えびな・せいや】 
1987年、東京都葛飾区生まれ。2017年、急性リンパ性白血病を発病。抗がん剤や放射線治療、2度の移植手術など4年間の闘病生活を経て寛解。昨年、体に良い厳選野菜を使用したカフェ「SOY LOVE U」を地元に開店。SNSなどを使って病気や治療、献血についての発信や交流を積極的に行っている。

誰かの献血に生かされている
自然と溢れてきた温かな涙

2017年3月、体にできた青黒いあざがなかなか消えないことを不思議に思い、検査に行った病院で急性白血病と告げられた蝦名さん。29歳、IT企業での仕事も楽しく、まだまだこれからというときの余命宣告でした。

「最初の数日間は現実をまったく受け入れられませんでした。いろいろな記事を読み、病気について知ることによって、前を向くしかないと気持ちを切り替えました。医師からは『君は献血で命をつないでもらって、骨髄移植か、臍帯血(さいたいけつ)移植をやらないと生きられない』とはっきり言われていたので、そのショックが大きすぎた半面、1パーセントでも可能性があるならその1パーセントに入ってやる!という強い気持ちが生まれて。決意の一方でつらかったのは、僕を支えてくれる母が無理して笑顔を作り、どんどん痩せていく姿。親不孝でごめん、と。3人兄弟の末っ子だったので、父母だけでなく年の離れた兄2人にも心配をかけました。お店を始めるとき、高額な治療を長期間続けて開業資金がなく、クラウドファンディングをすると伝えたら、兄から『お前には1日でも長く生きてほしい! だから体の負担が大きい飲食店開業は兄としては応援したくない』と長文のメールが。でも最終的には僕の決意を受け止めてくれ、1周年を迎えた今、シェフナイフをプレゼントしてくれるほど心から応援してくれています」

IMG_5381.JPG蝦名さんは初めての検査で白血球の数が14万個と通常の15〜30倍もの数値となっていることが分かり即入院。血小板やヘモグロビンの数値も極端に低かったため、入院翌日から輸血を繰り返しました。弱っている自分との闘いに元気をくれたのは献血してくれた人たちの存在だったとのこと。

「移植手術をしても亡くなる確率が30%と言われていました。移植した細胞がなかなか生着せず、自身では血液の成分を作れない状態が長く続きました。生着するまでの20日間、ほぼ毎日の輸血で何とか生きられた。無菌室という空間に閉じ込められ、不安で息の詰まる思いはしていましたが、誰かの献血で生かされていると考えたら、なんだか温かい涙が溢れてきて。ありがとう、という一言では言い表せないほど、感謝の気持ちが湧いてくるんです。家族の中で唯一面会が許されている母と、本当にありがたいね、と言いながら、うれし涙を流したのを今でも鮮明に覚えています」

Jリーグのサッカーチーム「アルビレックス新潟」の早川史哉選手(左)とは闘病中にSNSを通して知り合い、今では親友と呼べる仲に。写真は初めて顔を合わせた日の1枚

誰かの希望になれば…
SNS発信を続ける意味

治療の末、社会復帰した蝦名さんが、東京・葛飾区にこだわり野菜と豆乳のメニューを出す店をオープンして1年。治療の影響もあって大腿骨頭壊死になり、人工股関節を入れているので、今も脚に痛みを抱え、重たい荷物を持つことは医師から禁止されています。

20221206_007_nyukou.jpg 「立ち続けたり、ずんどう鍋を洗ったりすることができず、スタッフに助けてもらっています。自分ができない事実は受け入れて、周りの人の助けを借りる。もし1人で何でもできてしまっていたら、周りの温かい思いや愛に、気付くことも感じることもできなかったかもしれない。白血病との闘いも、人の優しさや温かさを感じることもできずに病と向き合っていたら、病状は悪化していたんじゃないかとも思うんです。僕は“誰かのために生きる”ことを主軸にして生きています。余命3カ月と言われた人間が6年近く、生かされている。僕の成功体験である移植手術や、笑顔で店頭に立っている僕の存在が誰かの希望になるかもしれない。全国で病気と闘う誰かが1人でも僕のSNSを見て頑張ろうと思ってくれたらと、自分の病気についての全ての情報を公表し続けています。

コロナ禍で多くのお店が閉店していく中、1年間継続できたのは、スタッフも含め、お客様や応援してくださった方たちのおかげ。SNSを見て僕に会うことを目標にして『治療を頑張るよ』と言う方や『蝦名さんが献血できない分、代わりに私が行ってきました!』と言う方も多いんですよ。こんなふうに幸せの連鎖で献血に行く人が増えたら、僕のように救われる命も増えるのではないか。

時間は有限で、皆さんの大切な24時間の中の貴重な時間を使って献血へと足を運んでくださることには、言葉では表現しきれないほど心から感謝の思いでいっぱいです。そしてその時間と血液をいただくことによって、この僕のように、誰かの命が救われるきっかけとなっていることを知っていただけたら幸いです。白血病だけに限らず、悩みを持つ全ての方が前を向けるように、これからも発信を続けていくつもりです。実は今、血栓症や高血圧など7つの病気を抱えていて、移植手術をした大学病院の検査で、医師から『命があまり長くない可能性がある』と言われてしまいました。でも、だからといってお店を閉めるとか、生きる速度を緩めるようなことはしたくない。たくさんの方に支えてもらって今の僕がいます。1 人でも多くの誰かのために、恩返しをして生き続けていきたい。厳しい現実はたくさん立ちはだかるけれど、今までも、これからも、支えてくれているみんなと一緒に、温かい感謝の気持ちを忘れることなく、生きていきたいです。きっと未来は明るいと信じて」

競泳の池江璃花子選手(左)ともSNSを通して交流が始まった。同じ境遇である母親同士も連絡を取り合う仲になっているそう

生きる力を、シェアしよう! 〜「はたちの献血」キャンペーン〜

今年のキャンペーンキャラクターはウルトラマンと高橋ひかるさん。若い世代へ「生きる力をシェア!」と献血を呼び掛けます。 期間中に献血してくださった10〜20代のラブラッド会員2万名様に記念品を配布するほか、オリジナルモバイルバッテリーが抽選で100名様に当たるSNSキャンペーンなどを実施します(30代以上の方も応募可能)。詳しくは特設サイトをご覧ください!

「はたちの献血」キャンペーン 1月1日(日)~2月28日(火)