輸血なるほどヒストリー vol.3 ABO式から40年後のRh式血液型の発見

輸血にまつわるさまざまなエピソードを紹介する連載コーナー。 今回は、「Rh式血液型の発見」について紹介していきます。

多様な血液型の研究が安全な輸血を可能にする

人の赤血球にアカゲザル(Rhesus monkey) と共通の血液型抗原「Rh 抗原」がある場合は、「Rh+(Rh 陽性)」、同抗原がない場合は「Rh-(Rh 陰性)」となる

 1900年にウィーン大学教授のラントシュタイナー(Landsteiner)がABO式血液型を発見してから40年後、その弟子であったウィーナー(A.S.Wiener)が、Rh式血液型の発見につながる新たな抗原について発表をしました。

 前提として、血液型は、血球の表面や内部にある抗原と呼ばれる物質の有無によって判別されます。この研究では、アカゲザルの血球でウサギを免疫して作られた抗体が、白人の約85%の血球を凝集し、約15%を凝集しないという結果が出ていました。これは、従来のABO式血液型とは異なる抗原を持った血液型の発見でした

 血液の研究者の1人で、多くの血液型を発見したリヴァイン(Philip Levine)は、ウィーナーらの発表を受け、前年に分娩時に出血した妊婦への輸血で激しい副作用が起きた事例を調べ、Rh式血液型の抗原に起因するものだったことを突き止め、血液型のメカニズムの解明につなげました。

 ちなみに、Rh式血液型は、アカゲザル(Rhesus monkey)の頭文字を取ったものですが、ラントシュタイナーとウィーナーが発見した抗原は、2人の頭文字を取りLW抗原と呼ばれています。

 Rh式血液型の発見当時は第二次世界大戦の最中でしたが、血液に関する研究はアメリカやイギリスを中心に地道に続けられ、その後数年のうちにRh式血液型の5種類の因子や新たなルイス式血液型なども見つかり、今日、国際輸血学会が認定しているる45(*)種類のヒトの血液型をひもといていく礎となっています。

*2023年7月時点

監修:髙本滋先生(日本輸血・細胞治療学会名誉会員)