輸血なるほどヒストリー vol.2 輸血の歴史を変えたABO式血液型の発見
輸血にまつわるさまざまなエピソードを紹介する連載コーナー。今回は「ABO式の血液型の発見」について紹介していきます。
安全かつ安定した輸血方法の確立へ
輸血の歴史を語る上で大きな転換点となったのが、1900年のウィーン大学(オーストリア)の病理学者であったラントシュタイナーによるABO式の血液型の発見です。この研究によって、人には少なくとも三つの血液型があることが分かり、その1年後に白人には5%程度しかいないAB型の存在も判明しました。加えてもう一つの型であるRh式血液型は、1940年になってから発見されています。
ABO式の血液型の発見は、輸血の研究だけに留まらないとても大きな功績でしたが、発表当時は特に注目をされていませんでした。そして、最初の発見から10年ほどがたったとき、アメリカの研究者がラントシュタイナーの研究を踏まえて、これまでの輸血の死亡事故の原因に血液型の不適合があることを提唱し、世界に衝撃を与えることになります。当初、血液型の名称は各研究者によって独自につけられていましたが、1928 年に国連がラントシュタイナーによるO、A、B、AB型への統一を宣言。1930年に同氏はノーベル生理学・医学賞を受賞するに至ります。
さらに、1914年ごろ、複数の研究グループからクエン酸ナトリウムが血液の凝固に作用することが報告され、輸血用の血液の抗凝固剤として利用できることが分かり、血液型の不適合を回避した安全な輸血と安定した血液の保存へ向けた研究が加速していくことになります。
監修:髙本滋先生(日本輸血・細胞治療学会名誉会員)