「人工赤血球」の研究開発は新たな治療法発見の糸口にも 【献血ハートフルストーリー 】 vol.1

血液事業に携わる日赤職員、ボランティアさん、献血協力者などの人たちが、どのような思いで血液事業に取り組んでいるのかを紹介していきます。

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 日赤の中央血液研究所は、輸血用血液の安全性や品質の向上、検査手法の開発や改良などを目的に、研究を行っています。そこで私は、赤血球の研究に携わっています。実は、もうすでに技術的には人工的に赤血球を造ることはできます。しかし、現状では実験室レベルで一度に造ることができる赤血球の量は“血液一滴”程度。治療に必要な輸血量をまかなおうとしたら、今より技術が発展し、かつ巨大な製造用プラントが必要になるでしょう。それが実現するのは、ずっと先のことになりそうです。だから今は、輸血用血液を確保するために、皆さんの献血が必要なのです。

 人間の体は約35兆個の細胞で構成され、そのうち約20兆個を赤血球が占めています。この赤血球には多くの謎が残されています。例えば、生物の細胞には核があるのが当たり前ですが、哺乳類の赤血球には核がない。途中で核が消失するのです。その理由が解明できていません。こういった研究は、血液だけでなく、さまざまな疾患を解明していく糸口となると信じています。

 研究所というと、人を救う現場とは縁遠く見えるかもしれませんが、研究所の同僚の思いに驚かされることがあります。コロナ禍に突入した数年前の年末、献血会場の人手が足りなくなり、研究所にまで協力要請が届きました。仕事納めの時期で帰省も決まっていたのに、ふだんの研究の仕事とはかけ離れた業務の手伝いに行く同僚たち。また、個人でも献血したり骨髄移植のドナーを経験したり、積極的に行動する者も。こういった仲間に囲まれて、私も研究を通して、多くの人を救うことに貢献できたらという思いになります。