被災地へ希望を届ける〈2〉 能登半島地震、ボランティアの活動と給水衛生支援

災害発生直後から動き出した日赤の被災地支援。赤十字ボランティアも被災地内外でさまざまな支援を行っています。救援物資運搬や救護班のサポートを行うなど、少しでも被災者の力になればと活動した赤十字ボランティアの数は延べ1368人(※2月19日時点)。

また、日赤は国際人道支援の長年の経験で培ったノウハウを生かし、断水が続く能登半島地震の被災地に給水衛生の資機材を運搬、プールの水を浄化して使用する洗濯機や温かいシャワーブースの設置などを行いました。これらの活動の一部をご紹介します。

石川県内の赤十字ボランティア

日赤石川県支部 赤十字安全法奉仕団の池田 幸應さん(左)、小倉 誠吾さん

日赤石川県支部の赤十字安全法奉仕団に所属する池田幸應さんと小倉誠吾さんは、支部が備蓄している救援物資をトラックいっぱいに詰め込み、災害対策本部が指定する場所に運ぶボランティア活動を行いました。

通常、安全法奉仕団は、救急法や水上安全法などの普及活動を行い、池田さんも小倉さんも講習の指導者を務めています。しかし災害などの緊急事態には、赤十字の一員として幅広い活動に参加します。

池田さんは元日の夜から石川県支部に入り、災害対策本部の立ち上げにも協力。赤十字ボランティアとして活動することについて「このマークを見ただけで“今日は来てくれて、ありがとう”と声をかけられます。全国から日赤救護班が石川に集まっていて、活動中にすれ違うと、同じ赤十字マークを着けた仲間だから、互いに目を合わせたり、手を振り合ったりして、一緒に活動しているチームだ、と感じて励みになります」。

また、小倉さんは「全国から救護班に来ていただいて、ありがたい。石川県民として、赤十字が活動しているのを見ると安心感があります。(話を聞いた1月9日時点は県外ボランティアの受け入れ前で)現地に行きたいと思っている人たちの分まで、日赤の仲間の代表として活動したいです」と語りました。

同じく同支部で防災ボランティアを長年続けている北村裕一さんも元日から支部に駆けつけ、日赤職員と一緒に活動を開始。現在は各地の災害ボランティアセンターの運営サポートで飛び回っています。

防災ボランティア・リーダーとして防災セミナーの講師も務めてきた北村さんは「ある避難所で防災セミナーの受講者に話しかけられ、災害前に避難所生活の課題を聞いていてよかったと言われました。でも、そのような方は住民のほんの一部です。この災害では、今後セミナーで話すならこれも伝えよう、と気づくことがたくさんある。赤十字のネットワークで伝える機会があるなら、より多くの人にその気づきを伝えたい」と話しました。

防災ボランティアとは

赤十字の防災ボランティアは、災害が起きていない平時に訓練や研修を受け災害救護活動におけるノウハウを習得します。災害が発生すると、日赤の活動(情報収集、応急手当、炊き出し、安否調査、救援物資の輸送・配分、避難所の支援など)に参加。1日限りの支援ではなく、被災地を深く支援する赤十字の一員としての役目を担います。

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県外からの赤十字ボランティア

「人を救いたい」思いが
ボランティア活動の原動力

今回の災害では発災後1カ月たっても多くの地域で災害ボランティアの受け入れ態勢が整わず、救助や支援活動の障害となる深刻な渋滞もあり、県外ボランティアが被災地で活動するのは難しい状況でした。そんな中、救護班と共に行動することで交通事情にも配慮し、被災地に負担をかけない自己完結型支援を徹底した「救護班帯同型のボランティア」が複数の県から被災地に向かいました。

この方々は日頃から日赤の救護訓練や各種研修に参加して、知識と経験を豊富に積んだ救護ボランティアのエキスパート。その活動例を紹介します。

from 群馬

柔道整復師の技術で避難者の疲れを癒やす田島委員長

寝袋持参で被災地へ
群馬県接骨師赤十字奉仕団

日赤群馬県支部救護班に帯同したのは、群馬県接骨師赤十字奉仕団の田島隆行委員長。救護班と訪れた先で、避難生活の疲れを癒やす施術をしました。施術を受けた方からは「慣れない生活でたまった疲れが楽になった」「年明けから大変な日々。話を聞いてもらえてうれしい」などの声が。数々の災害救護訓練に参加してきた「備え」が生かされました。

from 京都

避難所巡回中、水くみに困っていた方のサポートをする棟方さん

阪神・淡路大震災の教訓を生かす
赤十字レスキューチェーン京都

阪神・淡路大震災の翌年に発足した奉仕団「赤十字レスキューチェーン京都」。同奉仕団を代表して棟方禎久さんが日赤京都府支部救護班(第1班)に帯同。救護班が避難所に向かう車の運転、医療資機材の準備と運搬、救護班の生活全般も支えました。普段から災害や救護にまつわるマルチなボランティア活動を展開する同奉仕団ならではのお役目となりました。

棟方さんを送りだし、京都に残った「赤十字レスキューチェーン京都」のメンバーは救護物資の積み込みなどの後方支援を行った

赤十字の給水衛生支援

プールの水を浄水して使う洗濯機が順調に稼働し、避難者の松野さん(左)と共に喜ぶ日赤職員

海外の避難民キャンプなどで
実績のある「水支援」を展開

断水が続く七尾市からの要請で、日赤本社と3つの赤十字病院*から給水衛生支援チームが出動し、国際救援資機材(ERU 資機材)を使用して活動しました。この支援は通常、海外の緊急救援での使用が想定されていますが、東日本大震災や熊本地震、西日本豪雨災害でも実績があります。

七尾市と調整し、人数の多い避難所で、かつプールのため水などの水源が使用できる2つの小学校を支援先に決定。水源調査から始まり、浄水と加温の機器を設置、加えて①手洗い場、②シャワー各2台、③洗濯機各2台を設置しました。

*熊本赤十字病院、大阪赤十字病院、日本赤十字社愛知医療センター 名古屋第二病院

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雪の中、プールの水をくみ上げる日赤職員

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プールの水をシャワーに使うため浄水器を設置

【Voice】

*自分はこの避難所の小学校出身で、若い自分がふさぎ込んでいると周りも暗くなるから積極的に避難所運営の手伝いをしています。(地震から3週間、水道が使えず)こうして水が使えることがびっくり。震災前まで当たり前だったことが、一つ一つ奇跡のように感じられます。日赤の支援に感謝です!(山王小学校の避難者 松野拓海さん)

*シャワーの温度調整が自分でできるのでうれしい。このシャワーは使いやすいです。(和倉小学校6年生 れん君)

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*発災後3週間たち、避難者にもストレスがたまっています。電気があるだけありがたいけれど、断水は大変で…。日赤の支援で、蛇口から水が出てくることに感動しました!(山王小学校の避難者)

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国際救援資機材(ERU 資機材)とは?

日赤は海外での大規模災害などの発生に備え、いつでも出動可能な国際支援の人材と資機材とをセットにした「緊急対応ユニット=Emergency Response Unit( ERU)」を有しています。ERUが出動することで、インフラの環境が整わないような被災地においても医療や給水衛生支援などを迅速に展開することができます。今回の給水衛生支援でもその一部の資機材が活用されました。

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能登半島地震における日赤の活動概要『被災地支援8つの柱』

本災害では、救護班の派遣(延べ297班)や救援物資の配布を含め、図にある8つの項目で支援活動を展開。救護班とは別に、被災地医療機関に全国の赤十字病院から看護師延べ84人を派遣したり、給水衛生支援を行うなど、活動は多岐にわたります。
※数は2月19日時点のもの

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