子どもだって、大切な人を守りたい “小さな安全隊長”の防災セミナー体験

防災教材のイラストを見ながら、身の回りの「危険な場所」を次々と見つけ、発言する子どもたち。自信とやる気が刺激され、目を輝かせて意見を出し合う(佐賀県支部では赤十字防災ボランティアが行う防災学習を『防災セミナー』と称しています)

日赤は、いつ起こるかわからない大規模災害に備えて、さまざまな人を対象に防災セミナーを行っています。
そのセミナーで講師として活躍するのが、赤十字防災ボランティアです。
今回は、佐賀県で実施された幼児向けの防災セミナーに密着。子どもたちが地震発生時の身の回りに潜む危険に気づき、自分自身と大切な人を守る方法を学んでいく姿を追いました。

幼い子どもたちにだってできる!
自分の命を守ること
+大好きな人を守ること

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日赤佐賀県支部 赤十字防災ボランティア
大渡 千恵(おおわたりちえ)さん

 私が行っている幼児向けの防災セミナーでは、子どもたちを「安全隊長」に任命して、身の回りの危険な場所や物を考え、地震が起きたときに取るべき行動を実践してもらっています。このアイデアは、6年前の幼児向け防災セミナーがきっかけで生まれました。3歳くらいの子どもたちは日赤の赤いユニホームを着た私に緊張した様子だったので、どうにか楽しませようと、とっさに出たのが「みんなを安全隊長に任命します!」という言葉。すると、その一言で、子どもたちの表情がやる気に満ちたものに変わりました。さらに、「安全隊長は、ハートラちゃんに危険なところを報告する」と手作りのハートラちゃんを見せたら、保護者にくっついてモジモジしていた子も、ピン!と背筋を伸ばして、どんどん前に出て発言をするようになったのです。それまで私は、幼児は大人が守るもので、子どもたちにも「守りたい」気持ちがあると、考えたこともありませんでした。でもその瞬間に、どんなに幼くても「守りたい」思いがあり、行動に移すことができるのだと気づかされたのです。それ以来、幼児向けセミナーでは「みんなが安全隊長!」の発信を続けています

 今回のセミナーでは「ピアノは重いから気をつけないと」「カブトムシの棚が危なそう」など、“危険”に気づいてみんなに伝えてくれたことがうれしかったです。自分の身を守ることはもちろんですが、「誰かのために」という気持ちも強く、地震が起きたらどうする?と聞くと「家族みんなを守りたい」と口をそろえる様子に感動しました。安全隊長の証しであるお手製のハートラちゃんバッジを子どもたちにプレゼントしたので、それを家に持ち帰ったら家族にも今日学んだことを話して、災害への備えの意識と、子どもたちの守りたい思いが伝わることを期待しています。


★この防災セミナーは幼稚園・保育所向け防災教材「ぼうさいまちがいさがし きけんはっけん!」をベースに、大渡さんオリジナルの「小さな安全隊長バッジ」や「ハートラ紙人形」も使用して実施されました。

「きけんはっけん!」について詳しくはコチラ

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大渡千恵さん。赤十字ボランティア歴約15年。本職である保育士の経験を生かし、赤十字幼児安全法や赤十字水上安全法の指導員として、地域の講習活動に取り組む

園児たちも思わず真剣に。
地震が来たときの練習をしよう!

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【地震が起きたら、どうなるの?】

まだ大きな地震を経験したことのない園児たちのために、手作りの家の模型をグラグラと揺すって地震の衝撃を伝える大渡さん。子どもたちは、家具が倒れ、模型の箱から飛び出す様子に声を上げて驚く。

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【この絵の中で危ないのはだれ?みんなで考えてみよう】

イラストを使って、地震のときに危ない場所や行動について、みんなで意見を出し合う。「ここはガラスが落ちてくる」「この棚、タイヤがついているから動いちゃう!」と次々に危険を発見する子どもたち。

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【みんなを安全隊長に任命します!
  ハートラちゃんバッジ進呈】

安全隊長の証しとして、大渡さん手作りのハートラちゃんバッジを受け取る園児たち。うれしそうに友達同士で見せあったり、満足げな顔でピンと背筋を伸ばしたり、反応もさまざま。

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【教室の中の危ないところをチェック】

小さな安全隊長たちと教室の中の危険な場所をチェック。続けて、「地震だよー」の掛け声を合図に、頭を守る“ダンゴムシポーズ”をしたり、机の下に身をかがめ、机が地震の揺れで動かないように両手で脚をつかむ“おさるさんポーズ”を取るなど、自分の身を守り、仲間を危険から助けるための実践練習。

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【地震が来たら自分の身を守ること、
 大好きな人を守ることが、できるかな?】

セミナーの最後、大渡さんの「安全隊長として、今日のお話を他のクラスのお友達や家族にも教えてあげられるかな?」の呼びかけに、元気な声で「はーい!」と答える園児たち。

子どもたちの声

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「防災セミナー」を実施した園:
幼保連携型認定こども園 学校法人川副学園 博愛の里こども園

「大切な人を守りたい」
子どもたちの中にも
“博愛”はある

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園長
五反田 康子(ごたんだやすこ)さん

当園は0歳から6歳のお子さんを預かり、保育と教育を行う認定こども園です。園のある佐賀市川副町は、日本赤十字社を創設した佐野常民先生の生誕の地。地域全体に「博愛」の心が根付いていて、私たちも青少年赤十字加盟園としてその理念を伝え、園児たちの口からも自然と「はくあい」という言葉が出るほど浸透しています。日赤の防災セミナーは6年前に初めて取り入れました。園では月に一度、避難訓練やオリジナルの資料で学習していますが、日赤の防災セミナーは子どもが自分の頭と体を使って考える内容だと聞き、講師の派遣を依頼。セミナーを受けている子どもたちの様子を見て、受け身で聞いている姿とは違い、みんな積極的に発言をしている姿に驚きました。特に安全隊長に任命されてバッジをつけてもらった途端に、隊長になりきって集中している。普段から「大切な命だから、自分の命は自分で守るんだよ」と教えていますが、日常の中の危険な場所に「気づく」ことで、「自分で考え、実行できる」学びになったと感じています。

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担任
蒲原 千恵(かもはらちえ)先生

普段、避難訓練を通して子どもたちと防災について一緒に考える機会はありますが、大渡さんの防災セミナーは、いつもより子どもたちがいきいきとして、楽しんで参加していました。「きけんはっけん!」のイラストも分かりやすく子ども自身が危険な場所に気づける教材ですし、自分たちの教室の「地震が起きたら危ない場所」を実際に探す、体を動かしての活動なので、始まる前はちょっと長いかなと思った40分間のセミナーがあっという間でした。今回のセミナーに参加した年長児たちは「自分たちが園のリーダー」という意識を持ち、園生活で年下の子の面倒を見ている子たちなので、みんなの安全を守る「安全隊長」に任命されてバッジを渡されたときは本当にうれしそうでしたね。日頃から年下のお友達とペアになって活動したり、給食の配膳を手伝ったりする中で相手を思いやる気持ちを育んでいますが、この防災セミナーの経験によって、災害が起きた際には自分自身の身を守ることに加え、周りを助ける意識も高められたと感じています

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