終わりの見えない紛争 20億人の命と尊厳を守る 12月は「NHK海外たすけあい」キャンペーン

世界で紛争の影響を受けている人は約20億人(*1)いるといわれています。戦闘地域にいる人だけでなく、紛争によって貧困や食料危機に見舞われている人、教育や医療を受けづらくなった人など、世界の人口の4分の1にあたる人が紛争による苦しみを抱えています。
今回の特集では、紛争地での赤十字活動を報告するとともに、紛争下における国際ルール「国際人道法」にもフォーカスを当て、その意義を改めて考えます。

(*1:2023年1月、国連発表)

ガザでの活動

p-PSI0367.jpg(負傷者を搬送するパレスチナ赤新月社/©PRCS)

武力衝突が激化して以降、ガザ地区では多くの一般市民が犠牲となり、家を追われ、食料や水、薬などが常に不足している状況が続いています。
赤十字では、救急搬送や「こころのケア」の提供、生活必需品の配布を行う他、今年5月にはパレスチナ赤新月社と赤十字国際委員会(ICRC)の連携のもと、南部ラファに野外病院を開設し、患者の受け入れをはじめました。

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イスラエルでの活動

MDA_copy.jpg(負傷者を搬送するイスラエル・ダビデの赤盾社/©MDA)

イスラエルでは、攻撃が続く中、今もなお人質の多くが解放されておらず、家族は不安と悲しみを抱えています。赤十字は、人質解放に向けて尽力し、引き渡し支援を行っています。また、イスラエル・ダビデの赤盾社(*2)は、救急車での負傷者搬送や輸血用血液の確保などの活動を行っています。

(*2:イスラエルの赤十字社の名称)

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レバノンでの活動

LRCS_copy.jpg(レバノン赤十字社の救急車出動の様子/©LRCS)

レバノンでは、周辺国の武力衝突が波及し、国内情勢が刻々と変化しており、これまでに3200人以上の死者、1万4000人以上の負傷者が報告(*3)されています。
また、国内外への避難者も130万人を超えました。日赤では、レバノン赤十字社・パレスチナ赤新月社レバノン支部を通して、現地の医療を支援する活動を展開しています。

(*3:2024年11月 国連発表/※記事は11月20日時点のもの)

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「国際人道法」と赤十字

紛争の最前線にいる人々の
苦しみを軽減し、
人間の尊厳を守るためのルール、
それが国際人道法


赤十字国際委員会(ICRC) 駐日代表部
法律顧問
西山 秀平(にしやましゅうへい)さん

国際人道法は、武力紛争下で「やってはいけないこと」、つまり、制限・禁止される戦闘方法や手段と、民間人や捕虜などの武力紛争の犠牲者と病院や学校などの民用物の保護を定める複数の条約など国際ルールの総称です。

赤十字の成り立ちと国際人道法の誕生は同じ理念に基づいています。
ICRCは、武力紛争の犠牲者を保護するため、いかなる状況下でも中立・独立・公平の原則を貫き、紛争解決や和平交渉等の政治的介入は決して行いません。この原則のおかげで、政府や軍だけでなく、世界中に450以上存在する“人道上の注意を必要とする”武装集団のうち3分の2以上と対話できるのです。平時からICRCは、人道法の守護者として、当事者と守秘義務に則って対話を継続します。

そのなかで、人道法上の義務を再認識してもらい、遵守によって生み出される平和への道筋や普遍的価値を伝えます。信頼関係によって、紛争時に武装勢力の支配下で暮らす人々のような、最も支援を必要とする人たちにも寄り添うことができます。イスラエル・ガザの人道危機でも、当事者双方の人道法の遵守が、一部の人質と被拘束者解放につながりました。昨今の紛争では、人道法違反のみが注目を集めますが、人道法があるからこそ守られる命や尊厳があることも、多くの人に知ってほしいです。それは例えば、離散家族の追跡調査や、収容所訪問を通じて達成されます。世界で人道危機が広がる中、日本においても決して無関係でなく、一人一人が人道法の重要性に目を向けるべき時が来ています。ICRC駐日代表部は、日赤と共に日本国内での国際人道法の普及に貢献したいと考えます。

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国際人道法では、戦場という究極の状況下でも、その影響下にある人々を人道的に保護するために、「犠牲者の保護のルール」や「戦闘方法・兵器を規制するルール」が定められています。詳しくは、こちらからご覧ください。

「NHK海外たすけあい」キャンペーン

期間:12/1(日)~12/25(水)

「NHK海外たすけあい」
キャンペーンとは?


日本赤十字社とNHKが毎年12月に実施する募金キャンペーン。集められた寄付は、世界各地で紛争、災害、病気などにより苦しんでいる人々を支援する活動に役立てられます。1983年から2023年までに、世界170の国と地域に支援を届けました。


「SAVE365Magazine」
特設サイトで寄付も受け付け

特設サイト「SAVE365Magazine」では、12月25日まで「海外たすけあい」に関するコンテンツを配信中。海外たすけあいで寄せられた寄付をもとに実施した支援を受けた方々と支援を行った赤十字職員の声を紹介した「海外たすけあいPOST」などを掲載。ぜひご覧ください。


「SAVE365Magazine」
詳しくはコチラ

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