大阪・関西万博「赤十字パビリオン(国際赤十字・赤新月運動館)」の見どころを一挙公開! 人間を救うのは、人間だ。(赤十字パビリオンのスローガン)
※「気づき」「考え」「実行する」という3つのZONE構成は、日本赤十字社の『青少年赤十字(JRC)』における態度目標に基づいています。
パビリオンコンセプト
赤十字運動への共感とともに
人道アクションのきっかけを生む
日赤が事務局を務めるパビリオンの正式名称は「国際赤十字・赤新月運動館」。1862年に赤十字の創始者であるアンリー・デュナンが唱えた、傷ついた人々を敵味方の区別なく救う赤十字思想を受け継ぎ、赤十字国際委員会(ICRC)、各国の赤十字社と赤新月社、その連合体である国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)の3つの機関の理念を体現する場所です。パビリオンでは、「わたしの“できる”は、誰かのためになる。」をコンセプトに、多くの来場者に赤十字運動への理解や共感を高めてもらい、人道アクションにつながるきっかけになることを願いながら、赤十字の世界観を体感できる場となっています。
ZONE1:気づく“Notice”
風土や文化に違いはあれど、それぞれの大切な日常が、静かに浮かび上がります
今、当たり前に過ごしている日常の価値に気づく
「国際赤十字・赤新月運動館」は300㎡(25m×12m)の空間を3つのゾーン(ZONE1・2・3)に分け、約30分かけて赤十字の世界観を体感していただけます。その入口であるZONE1では、『世界の人々の何気ない日常を垣間見る映像インスタレーション』が広がります。私たちの身の回りにある日常の光景と、そこで生きる人々の姿とともに、平和な日々の価値を改めて感じてもらえるような空間です。
紛争や災害などで平穏な日常を奪われることの理不尽さと、それに苦しんでいる人の存在を自分ゴトとして感じていただきたい。そして、その現実に立ち向かう勇気と、苦しんでいる人を救うことの大切さに気づき、誰かのために自分ができることがあると感じ、一歩踏み出すきっかけになることを願っています。
ZONE2:考える“Think”
臨場感と没入感のある半球形のスクリーンで体験
世界の人道危機をより近くで「感じる」
半球型ドームシアター
ドームシアターに足を踏み入れると、来場者を包み込むように広がるスクリーンと、臨場感のある映像と音によって、目の前の世界に入り込んだかのような没入体験が待っています。ここでは、世界の紛争、災害などによる人道危機と、そこに立ち向かい、立ち上がる人々の姿を描くヒューマンストーリーの中に入りこめます。危機の現場で活動する赤十字の視点で描かれる映像の中には、パレスチナ自治区のガザで医療支援事業に携わった川瀨佐知子さん、東日本大震災で被災しながら支援を続けた藤田彩加さんと千葉梨沙さん、阪神・淡路大震災での経験から日赤への入社を決意した大林武彦さんの4人のメッセージも織り込まれ、赤十字の使命と、人間のチカラを感じるZONEとなっています。
目前に広がる“世界の人道危機”ドームシアターでの没入体験
①大阪赤十字病院
川瀨佐知子(かわせさちこ)さん
看護師としてガザの病院で医療支援中に紛争が勃発。激しい攻撃が続く中、毎晩「もう目覚めないかもしれない」と覚悟して眠りにつく。帰国後、ガザに残って24時間体制で医療活動を続ける現地の赤十字スタッフを思い、ガザの状況を日本の人々に伝える。
②石巻赤十字病院
千葉梨沙(ちばりさ)さん
石巻赤十字看護専門学校の在籍時に、東日本大震災が発生(当時19歳)。自らも被災しながら仲間の看護学生らと共に24時間体制で体の不自由な方たちのケアにあたる。自分のせいで大切な祖母が津波で亡くなったと自責の念も起きる中、支え合う人の温かさに触れ、心が救われた。
③石巻赤十字病院
藤田彩加(ふじたあやか)さん
石巻赤十字看護専門学校に在籍中に東日本大震災で被災(当時19歳)。避難先で「何かしなければ、一度は助かった命が失われてしまう」と、弱っている被災者を必死に救護し、自分にできることを模索した経験が、看護師としての今につながっている。
④日本赤十字社香川県支部
大林武彦(おおばやしたけひこ)さん
学生時代に阪神・淡路大震災が発生。被災地の友人に会うために神戸入りし、惨状を目の当たりに。無力感にさいなまれ、「人を助ける仕事に就きたい」と考え、内定をもらっていた会社を辞退して日赤に入社。赤十字防災セミナーや救急法講習など救うための活動を続ける。
ZONE3:実行する“Act”
メッセージを投稿し発信できる大型ウォール。メッセージは後からWEBでも閲覧が可能
自分の思いが世界とつながる
メッセージウォール
「気づき」と「考える」体験から、来場者が抱いた思いを表現できるZONE3では、投稿したメッセージが投影される大型スクリーンを設置。一人でも多くの人に、世界の人道危機を自分ゴトとして捉える機会を生み、その思いのバトンをつないでいきます。
多様な人道支援活動を知る
活動紹介ウォール
幅8mのウォールに国内外での赤十字の幅広い支援活動を紹介。「こんな活動もあるんだ」という新たな気づきとともに、赤十字の活動を身近に感じられる場となります。
SIDE STORY
万博準備室メンバーインタビュー
華々しい万博会場の中の
マインドリセットの場に
私は、日赤入社前、「愛・地球博」で赤十字パビリオンを体験し、そのときの感動や観客の熱気の記憶があります。今回自分がコンテンツを作る側となり、試行錯誤を繰り返しました。パビリオンで展示されるものは、膨大な赤十字の記録から蒸留された、ほんのわずかな1滴です。まず、ゾーン1では、さまざまな人種、国籍、宗教を持つ人たちの日常が映し出されます。実は、その多くは赤十字の活動地で撮影されたもの。つまり、どんなに平穏に見えても、何らかの支援を必要としている地の日常から切り取られたものです。そして、ゾーン2に入ると、その平穏な日常が打ち砕かれます。パビリオンが目指したのは、単なる事業紹介ではなく、「人を救いたい」という心で行動する人を増やすこと。華やかでお祭りのような万博会場の中で、ふと静かに自分の心を見つめ直すきっかけになればと思っています。
「人を救いたい」思いに気づき、
行動するきっかけに
赤十字パビリオンを運営するスタッフは全て、全国から集まった日赤職員と赤十字ボランティア。支部職員や看護師、血液センターの職員や、救急法の指導員や防災ボランティアなど、日頃から「人を救う」アクションを起こしている人たちです。ちなみに、運営の中核となる地元・大阪のボランティアは全員、心肺蘇生・AEDの講習を受けて「救う」準備を整えています。そう聞くと、なんだか志が高すぎて遠い存在だと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。普通の人が、「誰かの力になりたい」と行動しているのです。ゾーン3では、赤十字の活動紹介コーナーがありますので、興味を持ったらスタッフに声をかけてください。こんなに普通の人が赤十字の活動に参加しているんだ、そんな発見と共に、ご自身がゾーン1・2で気づき、考えたその先のアクションを見つける手がかりがつかめるかもしれません。
知ることで変わる。
世界中の仲間の願いがここに
「人間を救うのは、人間だ。」これが赤十字パビリオンのスローガンです。先進技術や産業を発信するパビリオンが多い中で、赤十字の掲げるテーマは、他に類を見ません。1867年のパリ万博で、佐野常民(日赤の創設者)が赤十字と出会って衝撃を受け、「赤十字のような組織があってこそ本当の文明開化」と謳い日赤を創設するに至ったように、この万博が、より多くの人の「赤十字との出会いの場」となれば、と考えています。昨年スイスで開催された赤十字の国際会議の場で、今回のパビリオンをプレゼンしましたが、赤十字がヨーロッパの一部の国から世界中に知られるきっかけになったのが万博だったという事実を知らない方も多く、私も驚きました。それを知った彼らは一様に、「赤十字のことを知ってもらいたい」と、万博への期待を口にしました。知ることで赤十字の思いとつながり、知ることで行動したくなる。そんな変化のきっかけとなることを願っています。