1867年第2回パリ万博から続く、万博と赤十字の歴史を振り返る 過去の万博博覧会における赤十字の参加の歴史
過去の万国博覧会※における赤十字の参加の歴史 (※5年以上の間隔で開催される登録博)
国際赤十字の展示がグランプリの評価を得た第2回パリ万博
パリ万国博覧会
赤十字が初めて万博に出展したのは、1867年の第2回パリ万博。
この万博では、フランス赤十字社が中心となり、救急車や担架、義足など戦争負傷者の救護に使われる資機材が数多く展示され、それらと共に出展した国際赤十字の展示は、敵味方の区別なく救護するための画期的な仕組みを示し、万博のグランプリを受賞しました。パリ万博を視察した佐野常民(日赤の創設者)が衝撃を受け、後に日本で赤十字社を立ち上げたことからも、万博が赤十字の周知・発展に大きく寄与していることが伺えます。
来場者のほとんどが赤十字パビリオンを体感した
1992年セビリア万博
セビリア万国博覧会
「発見の時代」をテーマに開催された1992年のスペイン・セビリア万博では、赤十字は「国際赤十字・赤新月運動」のパビリオンにおいて、赤十字の歴史と、自然災害や世界の紛争に際した赤十字の活動、世界平和促進への貢献などを中心に紹介しました。
各国の赤十字社を通して募集された世界78カ国441人のボランティアが、来場者のエスコートや広報活動などを担当し、日赤からも計13人が参加。赤十字創設以来の人道的活動をより広く紹介したパビリオンは話題を呼び、2000万人の来場者のほとんどが来訪したと言われています。
“HUMANITY”のロゴがデザインされたTシャツに赤いキュロットをはいて、路上でパフォーマンスするボランティアの姿も話題になりました。
また、2010年の上海万博では、赤十字国際委員会と国際赤十字・赤新月社連盟の後援のもと、現地の赤十字社「中国紅十字会」が国際赤十字・赤新月館を出展。さまざまな人道危機の現場で赤十字が活動する様子を、映像を通して伝えました。このパビリオンの最後には、世界中の赤十字ボランティアの顔写真が飾られた「偉大な壁(Great Wall)」が掲げられ、赤十字とはボランティアによる運動体であることを来場者に印象づけました。
ダイナミックな映像、VR…
時代と共に進化する 赤十字パビリオン
ドバイ万国博覧会(©IFRC)
赤十字がこの国際的イベントに参加する目的は、世界における人道的取り組みの中核を担っている運動体として、より多くの人々に赤十字の活動に関心を持ってもらうことです。
そのために、近年では最新の技術を駆使したパビリオン作りが行われています。
2021年のドバイ万博では、赤十字国際委員会のブースで、VRヘッドセットによるバーチャル体験が取り入れられました。 没入型シミュレーションのシナリオの一つでは、体験者はある都市で武力攻撃から逃れながら、その途中で負傷した子どもを救出しなければなりません。
体験者からは、「現実であれバーチャルであれ、紛争地帯における民間人の苦境について考えたことがなかった」といった感想も聞かれ、人道危機への意識を高めるきっかけとなりました。
愛知県で開催された万博『愛・地球博』の赤十字パビリオンで副館長を務めた井上忠男さんは、万博における赤十字の存在意義を次のように語ります。 「世界の先進技術や文化の豊かさに触れ、明るい未来を志向する万博において、赤十字の存在は異質です。
赤十字は、ただその活動を伝えるだけで、つらく厳しい世界の現実を突きつけるからです。しかし、それこそが『本当の世界を知る』ことにつながる。愛・地球博の赤十字パビリオンは熱狂的なリピーターを獲得し、その来館者から、赤十字によって真の万博の姿が見えた、という感想が寄せられました。その言葉は万博における赤十字の存在意義を言い表している、と思います」。
万国博覧会の歴史
1867年|パリ万国博覧会(赤十字が初出展)
開催国:フランス 出展者名:ICRC(赤十字国際委員会)
開催5年前の1862年に、赤十字の生みの親であるアンリー・デュナンが、著書『ソルフェリーノの思い出』の中で、戦時において敵味方なく命を救うことの必要性を訴え、1863年に赤十字国際委員会の前身である5人委員会が発足。翌1864年にジュネーブ条約が調印されて、国際赤十字組織が正式に誕生してから、3年の月日がたっていた。
1873年|ウィーン万国博覧会
ウィーン万博派遣団。佐野常民は中央(有田町歴史民俗資料館蔵) 開催国:オーストリア
国際赤十字は諸般の事情で出展できなかったが、戦時救護の展示エリアで欧州各国が外科医療器材や救急車、衛生兵の携帯品、負傷兵の運搬法などを展示。その多くに赤十字マークが付されていたため、赤十字パビリオンが出展されたように見えた。この万博に明治政府から派遣された佐野常民は100人ほどの部下を指揮し膨大な報告書をまとめた。
1970年|大阪万国博覧会
開催国:日本
大阪万博に赤十字の出展はなかったが大阪赤十字病院から医師や看護師を派遣、会場の診療所内では日赤の救護本部を設置しました。また、開催2年前より通訳奉仕者の養成を開始。特に優秀な150人の通訳奉仕者が派遣され、日赤の力が大いに発揮されました。
1992年|セビリア万国博覧会
開催国:スペイン 出展者名:赤十字・赤新月パビリオン[ICRC、IFRC(国際赤十字・赤新月社連盟)、スペイン赤※の共催]
1998年|リスボン万国博覧会
開催国:ポルトガル 出展者名:赤十字・赤新月パビリオン[ICRC、IFRC、ポルトガル赤※の共催]
2000年|ハノーヴァー万国博覧会
開催国:ドイツ 出展者名:赤十字・赤新月パビリオン[ICRC、IFRC、ドイツ赤の共催]
災害・シェルターにかかる特別展示[ドイツ赤、バングラ赤※の共催]
2005年|愛知万国博覧会(愛・地球博)
開催国:日本 出展者名:赤十字・赤新月パビリオン[ICRC、IFRC、日赤の共催]
2010年|上海万国博覧会
開催国:中国 出展者名:赤十字・赤新月パビリオン[ICRC、IFRC、中国赤※の共催]
2015年|ミラノ万国博覧会
開催国:イタリア 出展者名:イタリア赤十字社 パビリオン
単独出展(当時、イタリア赤は政府機関)。赤十字・赤新月パビリオンとしての出展はなし。
2021年|ドバイ万国博覧会
開催国:アラブ首長国連邦 出展者名:ICRC
※各国の赤十字社を「(国名+)赤」と略称表示。中国の赤十字社の正式名は「中国紅十字会」