私の活動は「こどもの未来のため」

自分で自分の身を守る防災教育に取り組んでいます

諏訪市赤十字奉仕団 委員長 松木 文夫さん

Q.諏訪市赤十字奉仕団はどんな活動をしているのですか?

コロナ禍でなかなか思うように奉仕団活動ができませんが、先日(2022年5月)、今年第1回目の諏訪湖の清掃活動を行いました。

これは「諏訪湖アダプトプログラム」という住民参加型の諏訪湖の美化活動。諏訪湖周を32区間に分け、1区間500メートルほどを2~3団体が担当します。私が委員長を務める諏訪市赤十字奉仕団(諏訪市内15分団から構成)は年5回、この活動をしていますが、今回は62名と大勢参加してくれた。とてもうれしかったですね。また、諏訪湖の美化活動によって、自分たちの住む諏訪湖がきれいになることに加え、観光客にも良い印象を持ってもらう一助にもなっていると自負しています。

ここ数年、世界的な環境意識の高まりから、マイクロプラスチックごみの回収にも力を入れています。ペットボトル、空き缶など目につきやすいごみはもちろん、マイクロプラスチックはどこにでも落ちています。量もすごい。これじゃあ、魚も食べてしまうと改めて実感しました。

※マイクロプラスチックとは、5ミリ以下の微細なプラスチックごみの総称。製品原料など工業的に小さい状態で生産されるものと、捨てられたプラスチック製品が自然環境にさらされ劣化、分解され、小さな破片となったものがある。海洋生態系への影響が懸念されている。

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参加した団員からは「何かやりたいと思っていたが、それができた」「人の役に立ててうれしかった」といった喜びの声が多く寄せられました。人のために役立ちたい、という気持ちは、多くの人が持っているんですよ。

これからも60人程度の安定した人数で続けていきたいと思っています。ただ、活動にあたっては、無理をしちゃいけない。できる人が、できる時に、参加して活動すればいいんです。人を助けるには、自分に少しの余裕があってからこそのお裾分け、ですから。

Q.赤十字奉仕団活動で特に印象に残っていることは何ですか?

私は2011年、地元の精密機器メーカーを60歳で定年退職後、地区の区長になりました。それで自動的に奉仕団の役に就きました。時間的に余裕ができたので、諏訪湖の美化活動の他、長野県支部や東京本社の視察、立川都民防災教育センターなどの研修にも参加しました。2015年に諏訪市赤十字奉仕団の監事を拝命。2017年には委員長に就任し、今に至ります。

東京本社の視察時、私が衝撃を受けた出来事があります。それは、赤十字の成り立ちを紹介する動画。初めて、アンリ・デュナンの功績を知り、すごい人だなと。「私もそんな気持ちを持てる人間になりたい。」と心から思いました。赤十字の精神に共感し、私もできる限り、赤十字奉仕団の活動を続けようと思いました。

※アンリ・デュナンは、スイス人の実業家であり、赤十字を創設したことから「赤十字の父」とも呼ばれている。1859年6月、フランス・サルディニア連合軍とオーストリア軍の間で行われたイタリア統一戦争の激戦地ソルフェリーノを通りかかったデュナンは、放置されていた4万人もの死傷者を懸命に救護。この経験を『ソルフェリーノの思い出』という本にまとめ、以下の必要性を訴えた。

(1)戦場の負傷者と病人は敵味方の差別なく救護すること

(2)そのための救護団体を平時から各国に組織すること

(3)この目的のために国際的な条約を締結しておくこと

この訴えが大きな反響を呼び、1863年「5人委員会」(赤十字国際委員会の前身)が発足し、ヨーロッパ16カ国が参加して赤十字規約を採決。1864年ジュネーブ条約(いわゆる赤十字条約)が調印され、国際赤十字組織が正式に誕生した。この功績が称えられ1901年、デュナンは第1回ノーベル平和賞を受賞した。

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それまで、自分のどこかには「まずは味方を助ける」というような気持ちがあったかもしれない。しかし、アンリ・デュナンを知ってからは、同じ人間として困っている人には無条件に手を差し伸べよう、という気持ちになりました。今では、赤十字奉仕団の活動にとどまらず、私の行動すべての基になっています。

日常生活の中で、アンリ・デュナンを思い浮かべ、アンリ・デュナンだったらと考える場面は多々あります。例えば、民生委員を務めた時には、困った人の相談に乗り、どうしたら助けられるか。草刈り機のエンジンがかからないと困っている人がいたら、一緒になってエンジンがかかるまで面倒をみる。トラクターで畑を起こしている時、ついでに隣の畑もやってあげたり。本当はあまり困ってはいないのかもしれないけど、ね(笑)。でも、ちょっとは助かるんじゃないかなと。

目の前にいる困っている人を救う。アンリ・デュナンの功績を知ることができたことは、私の人生の中でとても大きな意味のある事だと思っています。

Q.新しい取り組みについて教えてください。

諏訪市赤十字奉仕団では、2022年9月、小学生を対象にした防災教育を新たな活動のひとつとして、スタートします。諏訪市内の一つの小学校の5年生(約60人)が参加して、「ぼうさいまちがいさがし きけんはっけん!」などの講座を行う予定です。

豪雨による水害や地震など災害が発生した時に最も大切なことは、自分で自分の身を守ること。防災教育を行うことで、こどもの頃からしっかりと身に付けてもらいたい。こどもたちがたくましく未来を切り拓いていけるようにと願って、こどもの防災教育を始めようと思ったのがきっかけです。

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将来的には年に複数回実施し、対象も諏訪市内すべての小中学校、保育園などに広げていければと考えています。他の地域ではあまりこういう取り組みはしていませんが、「防災教育を進める諏訪市赤十字奉仕団」として注目を集めるまでになれればいいなと。

諏訪市赤十字奉仕団委員長として、積極的にこどもの防災教育に関わっていきたいし、そのためには、長野県支部の防災研修のお手伝いをしながら、ファシリテーター(指導者)としての素養を身に付けていきたいと思っています。

さらにもう一つ、ぜひ力を入れていきたいことがあるんです。

Q.ぜひ力を入れていきたいこと、それはどんな活動ですか?

諏訪市赤十字奉仕団の分団員研修です。分団員は各地区内の持ち回り当番で役に就くため、赤十字活動はもちろんのこと、災害時に奉仕団として何ができるのかを今から考えてほしいと思っています。県内の他の赤十字奉仕団では、200人ほどの団員を集め、救急法、炊き出しなど一日かけて研修を実施しているところもあり、それが理想ですが、当面は、防災研修を中心にやっていけたらと思っています。

長野県支部には防災について楽しく学べる教材が複数あります。その中で、特に「避難所体験ゲーム」を団員研修のひとつに加えたいなと。これは、避難所運営の一員として、避難者の受け入れから部屋割り、トイレ問題、ペットの対応などを机上で模擬体験するものですが、災害時に行政には自分たちができないことを専念してもらいたいですよね。だから、避難所の運営を考えることによって、いざという時に、自助から共助へ繋げていけるのではないかと思うんです。それを赤十字奉仕団から広げられたらいいなと。

2022年6月、密にならないように気をつけて、第1回目を行いました。今後さらに研修内容を充実し、分団員の皆さんがやりがいをもって赤十字奉仕団活動に参加できるようにしていきたいと思っています。

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