災害時の医療を支える担い手の育成
私たち日本赤十字社の業務の一つには”災害救護”に備えて医療救護班を全国で約500班(約4,500人)編成し、埼玉県内にはさいたま赤十字病院、小川赤十字病院、深谷赤十字病院に常備救護班をそれぞれ編成しています。平時の医療を担う赤十字の医師や看護師等は、災害時の医療を担う救護員としての知識も必要とされているため、定期的な研修会を通し、災害時に派遣できるよう備えています。
10月27日~29日に埼玉県皆野町にて「救護班要員研修会」を開催し、各施設から集合した受講者24名は日常の業務から離れ、救護班要員として、災害救護活動に必要な知識や技術の習得に取り組みました。
受講者を指導するスタッフは、日赤災害医療コーディネーターや東日本大震災(平成23年)、その他国内で発生した災害での救護活動に従事した職員等、総勢42名のスタッフです。
1日目、2日目は災害救護に必要な基礎知識を講義や実習を通じて習得し、3日目には総合演習として、想定された災害に対する救護活動を模擬的に実践しました。救護所に搬送された患者への適切な応急治療や、救護所から送られた情報を基に本部要員が速やかに連絡調整を行う等、『一人でも多くの命を救うための最善の選択』を瞬時に判断する力を身に着けました。
災害時には平時の医療の提供とは異なり、限られた人員や資機材でいかにその場の状況を乗り越えていくかということも考えていかなければなりません。どのような状況に対しても医療を提供出来る体制を整え、一人でも多くの命を救うための新しい災害救護の担い手を育てていくことが赤十字の使命であるため、今後も様々な研修会を通して赤十字救護員の育成をしていきます。
これらの災害救護の担い手の育成は、みなさまからのご寄付いただいた赤十字の活動資金によって実施しています。これからも赤十字事業へのご理解ご協力をお願いいたします。
10月27日(水) 救護員としての基礎知識を身に付ける
実災害の経験がほとんどない受講者は、まずは救護服の着用方法、赤十字の救護活動等の基礎知識を身に付けることから始まります。
災害時を想定したグループワーク、救護所となるテントの設営を行いました。
10月28日(木) 職種別の専門知識の習得
災害時においても医師・看護師・薬剤師・主事等の職種に応じ求められる行動が異なります。
医師であれば傷病者の状態に応じて必要な処置を行ったり、主事であれば救護所の傷病者の情報を記録する等、求められる役割が異なるため、職種別で専門的な知識を習得しました。
10月29日(金) 救護所内活動シミュレーション
いよいよ最終日となり実際の災害時の救護所内の活動シミュレーションを行います。
傷病者(人形)が次から次へと運ばれてくる状況の中で、瞬時にトリアージを行い、傷病者の状態によって近隣の医療機関への搬送を手配したりする等、手を休める時間は全くありません。救護員全員が”一人でも多くの命を救うため”にを考え、傷病者にとって最善の選択を行っていました。
3日間の最後にはスタッフの一人である災害医療コーディネーターの田口医師(さいたま赤十字病院)により、シミュレーション時の状況と実災害時の状況を照らし合わせながらフィードバッグを行い、災害時における医療救護の心得を学ぶことが出来ました。
3日の研修を終え受講者の多くは達成感を感じながらも自身の役割における多くの反省点があると感じているようでした。
いつ起こるか分からない災害に備え、救護員の育成やスキルの向上に努め、日本赤十字社の使命を果たしていきます。
番外編
より実践に近い研修が実施できるのも東日本大震災をはじめ多くの災害時に活動した赤十字のスタッフがいるからです。
傷病者役として最終確認を行うスタッフのみなさん 全体への講評を行う医師