緊急救援

 世界各地では、絶え間なく自然災害や紛争が発生し、日々、人びとのいのちや健康を脅かしています。大規模な災害や紛争が発生すると、何よりもまず、被災者に対する医療や衣食住の支援といった緊急救援が必要となります。緊急救援は赤十字の最も重要な使命の一つであり、支援を必要とする人びとへ迅速にアクセスするため、平時から緊急事態に対し万全の備えをしています。

災害時の緊急救援

 自然災害等の発生時、地元の赤十字社のスタッフ・ボランティアが被災地に真っ先に駆け付けて救援活動を展開し、人道支援の最前線で活動します。しかし、被害規模が甚大で被災地の対応能力を超えた救援活動が必要と判断された場合、被災国赤十字社は救援活動を続けながら、国際赤十字・赤新月社連盟(連盟)に国際的な支援を要請します。連盟は、この要請に基づきニーズ調査を行い、支援計画(「Emergency Appeal : 緊急救援アピール 」と呼ばれる)を発表し、他の国や地域の赤十字社へ支援を要請します。各社は、連盟の調整のもとで資金・物資・救援要員派遣などの支援を行い、被災国赤十字社の救援活動をサポートします。 (参考サイト : 連盟の情報プラットフォーム - 『IFRC GO』

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救援活動のツール

緊急救援トップ画像

緊急対応ユニット=「ERU」

赤十字の「緊急対応ユニット=Emergency Response Unit (ERU)」は、緊急事態・大規模災害発生時に備え、いつでも出動可能な専門家と、すぐに医療や給水衛生活動などが開始できる資機材をセットにしたチームです。

診療所ERU(Emergency Clinic)

30,000人を対象に、緊急時の予防・治療・地域保健などの医療サービスを提供できるチームです。展開後1カ月間、外からの支援を得ることなくテントや浄水設備、発電機などを駆使して自己完結型のチームとして活動が可能です。診療所ERUでは、経過観察用ベッドや携帯式レントゲンを備え、小規模手術にも対応できます。そのほかに、母子保健やこころのケア活動、被災した現地医療体制のサポートなどを行います。

病院ERU(Emergency Hospital)

対象地域人口25万人に対し、救命また四肢外傷による後遺症を最小限にするための外科的対応(入院を伴う手術や処置、産科対応など)に加え、入院加療が必要な命に関わる内科疾患の対応等を含む総合医療を提供します。24時間の患者受け入れを行うとともに、重症患者を治療するための手術室や集中治療室(ICU)、入院のための病棟、分娩室等を完備しています。

緊急対応ユニット(ERU)についての詳細はこちら(PDF:1.6MB)

病院ERUウェブサイト:日赤が整備を進めている病院ERUをバーチャルツアー機能でリアルなテント内の様子を360度自由にご覧いただけます。

ERUの活動実績

 日赤は 2001 年に診療所ERU を登録して以降、下記の災害等に対し ERU を派遣しており、各活動の反省を踏まえて、よりよい活動を実施するために ERU 整備体制の充実を図っています。
 ・ 2001 年 インド地震
 ・ 2003 年 イラン南東部地震
 ・ 2004 年 スマトラ島沖地震・津波災害
 ・ 2005 年 パキスタン地震
 ・ 2006 年 ケニア洪水災害(オーストラリア赤十字社と共同)
 ・ 2008 年 ジンバブエ・コレラ対応(オーストラリア赤十字社・香港紅十字会と共同)
 ・ 2010 年 ハイチ大地震(オーストラリア赤十字社・香港紅十字会と共同)
 ・ 2010 年 チリ大地震(カナダ赤十字社と共同)
 ・ 2010 年 パキスタン洪水(フランス赤十字社と共同、要員のみ派遣) 
 ・ 2010 年 ハイチ・コレラ対応(カナダ赤十字社、英国赤十字社と共同、要員のみ派遣)
 ・ 2012 年 シエラレオネ・コレラ対応(フィンランド赤十字社と共同、要員のみ派遣)
 ・ 2013 年 フィリピン・台風対応(オーストラリア赤十字社・フランス赤十字社と共同)
 ・ 2015 年 ネパール・地震対応(オーストラリア赤十字社・香港紅十字会と共同)
 ・ 2016 年 ギリシャ・移民難民対応(ドイツ・フィンランド赤十字社と共同、要員のみ派遣)
 ・ 2017 年 バングラデシュ南部避難民対応
 ・ 2021 年 ハイチ地震(フィンランド赤十字社主導の病院ERUに要員のみ派遣)
 ・ 2023 年 トルコ・シリア地震(フィンランド赤十字社主導の巡回診療型ERUに要員を派遣)

ERU出動

ERU資機材の保管と輸送ERU資機材

緊急救援物資

 緊急時、速やかに被災者のニーズに応えられるよう、マレーシアのクアラルンプールにある倉庫に救援物資を備蓄しています。災害発生時には、被災国赤十字・赤新月社の要請に基づき、連盟と協力して同倉庫の備蓄物資を被災地へいち早く届けます。
 発災から48時間以内に5,000世帯、その後2週間で計20,000世帯分の救援物資を被災地に届けることを目標に連盟と合同で数十万もの物資を備蓄。アジア・大洋州地域を中心とした大規模災害の発生時に役立てられています。

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衛生用品セット

おむつ、生理用品、歯科衛生品、カミソリ、タオルなどがセットになっています。避難施設など人が密集する場所での集団感染を防ぎ、また個人の尊厳を守るためにも衛生環境を整えることは重要です。悪い衛生環境が続くと、避難施設で集団感染などが発生し、死活問題になります。赤十字の配付する衛生用品セットは、内容物が標準化されており、安全安心で迅速に提供できる救援物資の一つです。

シェルターツールキット

シェルターツールキット

のこぎり、金槌、釘、ワイヤー、ロープなどがセットになっています。自分たちが住んでいる家やテントは一刻も早く修繕して、安心して暮らしたい。しかし、多くを失った人々にはそのための道具や資材をすぐに手に入れることができません。このキットには人々が安心を取り戻すためのツールが詰まっています。

キッチンセット

キッチンセット

アルミニウムの鍋やフライパンなどと一緒に5人分の食器類がセットになっています。このキットによって、自分たちの文化や風習にあった調理をして"食事"をすることができ、困難な状況下でも、人々が自身の健康や尊厳を保つ助けとなります。

上記でご紹介したもの以外にも、テント、毛布、ビニールシート、蚊帳、飲料水容器など合計10品目の救援物資を整備して、災害や紛争等によって発生する緊急事態に備えています。

紛争時の緊急救援

 赤十字の誕生以来、その活動の中心となってきたのは、武力紛争における犠牲者への支援であり、紛争地における赤十字の活動を主に担っているのが赤十字国際委員会(ICRC)です。
 ICRCは以下の4つに分類された活動を展開しており、日本赤十字社は、ICRCへの資金援助や人的貢献などを通じて、長引く紛争や暴力により、政治や治安情勢が不安定なために被災者へのアクセスが困難な国や地域で苦しんでいる人々に、赤十字の原則に基づいた支援を行っています。

  • 保護活動  (捕虜や被拘束者の訪問・離散家族支援)
  • 支援活動 (救援物資の配付、保健医療、安全な水へのアクセス確保、生計支援等)
  • 予防活動 (国際人道法の普及、地雷・不発弾のリスク啓発)
  • 赤十字間の連携 (紛争地域における赤十字間、他の機関との連携において主導的役割を担う)

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現在実施中の救援・中長期事業

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中東人道危機救援事業

バングラデシュ南部避難民支援事業

アフガニスタン人道危機救援事業

ウクライナ人道危機救援事業

トルコ・シリア地震救援事業

イスラエル・ガザ人道危機救援事業

南スーダン紛争犠牲者支援事業

アジア・大洋州地域給水・衛生災害対応キット整備事業