自然災害×感染症医
感染症医 小林 謙一郎
最新の派遣先:バングラデシュ(二国間)
プロフィール紹介
和歌山県生まれ。和歌山医療センター勤務。
派遣歴:インドネシア(2018)、バングラデシュ(2018、2019)
国際要員を目指したきっかけ
中学生くらいから、将来は海外で働いてみたいなという漠然とした思いがありました。医学部在学中にマラリアなどの熱帯感染症に興味を持ったのは、熱帯感染症の勉強や診療のため、将来海外に行けるチャンスが増えるかもしれないと考えていたことが理由の一つだったと思います。
感染症内科医として市中病院で勤務していた頃、西アフリカではエボラ出血熱の流行、都内ではデング熱の流行がありました。グローバル化の影響で、今まで一部の国・地域の感染症だったものが、多くの国で問題視されるようになりました。もはや感染症に国境はなく、世界全体の保健衛生、医療の質の向上が、病気の制御に不可欠と考えるようになりました。
このようなきっかけで、海外の保健衛生・医療の質の向上に貢献できる組織で働こうと決めました。
国際要員として登録されるまでの道のり
市中病院で働く勤務医は、地域医療への貢献を第一に期待されているので、海外派遣と普段の診療業務を両立することは中々難しいです。
以前に勤めていた市中病院では、海外派遣との両立は不可能であったため、その職場を退職し、公衆衛生学の勉強のために留学しました。社会人になってしばらく働いた後、もう一度大学で自分のやりたい勉強ができたこと、多くの友人ができたことは大変有意義でした。
日赤に入る前には、日赤和歌山医療センターの国際医療救援部長であった大津先生の国際保健に関する講演や、日赤和歌山医療センターが毎年夏に開催していた熱帯感染症研修に参加しました。やはり、国際協力といえば赤十字や国境なき医師団かなと思ったこと、自分の専門(感染症科)が生かせる部署が日赤病院にあったこと(和歌山医療センター)から、日赤の医師として国際要員となることを選びました。
現地での活動のやりがいは?
インドネシア・スラウェシ島での地震(2018年)では、現地のヘルスポスト(小さな診療所のようなもの)が被災しました。当時、インドネシア赤十字社にとってはスラウェシ島での救援活動が国内ERU(※1)の初派遣でした。インドネシア赤十字社は短期間のチームを交代で出していたのですが、初派遣という事もあり、次のチームが到着せず診療に空白ができてしまうなど、うまくいっていないケースがありました。そのような中、私はヘルスアドバイザーとして、インドネシア赤十字社の医療派遣チームのサポートのため、現地へ派遣されました。
また、現地ERUチームへのアドバイス以外にも、現地の医療施設再建にむけ、日赤はヘルスポストの再建を援助しており、私はその調整を行いました。再建のため、インドネシア赤十字社や地域行政との調整を行った結果、私の活動の数か月後にヘルスポストが再建されました。インドネシア在住の日赤スタッフからヘルスポストが再建されたという連絡を受けた時はとても嬉しかったのを今でも覚えています。
インドネシア赤十字の巡回診療チームに帯同の際に撮影した被災したスラウェシ島の村の子どもたちの様子
今後の目標
私の職場でも、毎年のように海外派遣に興味のある新規採用入職者がおられます。
そういった方がたが、海外派遣の興味を持ち続けられるように、我々先輩国際要員が、活動のやりがい、楽しさを伝えていきたいと思います。
最後にひとこと
日本を拠点として、国内で働きながら海外派遣を希望される方は、是非お近くの日赤国際医療救援拠点病院を訪問し、国際要員から色々な話を聞いてみてください!
※1 緊急対応ユニット(ERU:Emergency Response Unit)
大規模な自然災害等が発生した際、医療や給水衛生活動等が開始できるように専門家と資機材をセットにしたチーム。