フィリピン赤十字社基礎保健ユニット研修が開催されました!

フィリピン共和国ミンダナオ島ダバオ市で1月18~28日、フィリピン赤十字社(以下、フィリピン赤)による「基礎保健ユニット(BHCU:Basic Health Care Unit)」を用いた研修が、開催されました。

日本赤十字社(以下、日赤)とカナダ赤十字社の支援の下に開催された本研修。日赤は講師運営サポートとして4人を派遣し、研修運営と技術面の支援に携わりました。昨年ネパール地震緊急救援で活動し、現在はフィリピン中部台風復興支援のためにセブ島に派遣されている、大阪赤十字病院国際医療救援部の李壽陽要員が、運営サポート兼講師として参加しました。

日赤の「基礎保健緊急対応ユニット」からフィリピン赤の「基礎保健ユニット」へ

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フィリピン中部台風発災直後の、日赤基礎保健緊急対応ユニットでの診療

日赤は「基礎保健緊急対応ユニット」と呼ばれる、資機材のセットを国内や海外の倉庫に保有しています。

緊急事態や大規模災害が発生し、国際赤十字・赤新月社連盟と被災国赤十字・赤新月社の調整の下で国際的な支援が必要と判断された場合に、迅速に救援活動を行うためです。

このユニットには、被災地で基礎保健医療活動を行うために必要な医療系資機材やテント、給水や電気関連の資機材、派遣された職員の生活必需品などが含まれており、自己完結型の救援活動を展開できるように整備されています。

そして、緊急支援が終了した後には、将来の災害に備えることができるよう、浄水器やテントなどのユニットの一部を現地赤十字社へ引き渡します。

フィリピンはその地理的条件から、特に台風による災害がとても多い国です。日赤は過去に、フィリピンに大きな被害をもたらした台風の救援活動のため、基礎保健緊急対応ユニットを用いた緊急医療救援活動を展開したことがあり、その終了とともにユニットの一部をフィリピン赤へ引き渡しました。

その後、フィリピン赤は国内の緊急事態や大規模災害に自分たちで対応する体制の構築を目指して、日赤から引き継いだ資機材を、計2基の「基礎保健ユニット(BHCU)」へと再整備しました。再編された基礎保健ユニット1基はセブ島へ、もう1基はミンダナオ島へ配備されました。

緊急事態や大規模災害に被災国の赤十字社が対応するためには、資機材の配備だけではなく、その資機材を運用できる人材の確保が必要です。そのためフィリピン赤は、基礎保健ユニットを運用できる人材の育成に積極的に取り組んでいます。2014年にはセブ島で基礎研修が開催され、日赤も講師を派遣しました。今回のダバオ市での研修も、この方針の一環として行われました。

ミンダナオ島ダバオ市での研修

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指導者研修の様子。日赤講師(左から3人目)とフィリピン各地からの参加者

基礎保健ユニット研修は講師養成と基礎の二部から構成されています。前半の指導者研修は、「フィリピン国内における基礎保健ユニットを用いた今後の対応」を深く考え、議論することがを目的の一つとされていました。

基礎保健ユニットの概念や運用について理解を深め、それをもとに後半の基礎研修を見据えた講義の準備が進められました。

後半の基礎研修では、前半の指導者研修の修了者14人が後半の基礎研修で講師となり、参加者37人に講義を行いました。また、現在も武力紛争の影響下にあるミンダナオ島で、基礎保健ユニットを展開する救援活動を想定し、配備されているユニットを実際に用いる実技も行われました。

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日赤講師による指導者研修での講義

実技には、実際の作業と同様のテント設営、資機材展開なども組み込まれています。

指導者研修の参加者は終日熱心に研修を受講し、基礎研修をよいものにしようと、資料を調べたり、夜中まで議論を交わしたりし、日赤講師を含めた講師陣からのアドバイスに真剣に耳を傾けました。

フィリピン赤職員のみならず、ミンダナオ島で他機関に所属する医療従事者や、インドネシア赤十字社、ネパール赤十字社が参加しました。参加者の職種も多様で、医師や看護師、技術職、事務職等です。

将来の災害に備えて

研修の最後を締めくくったのは、全員が参加した実技です。「爆発による多数の傷病者が次々と診療テントに搬送されてくる」というシナリオ(MCI: Mass Causality Incident)に基づいて、研修会場敷地内の空き地にテント6張やデスク、椅子、ベッド、トイレ、水道設備、電灯、発電機といった資機材を展開。受付や診療エリア、薬局、トイレ、水場などを設置し、いかに基礎保健ユニットを運用して救護にあたるかを検証しました。

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研修の最終に行われた実技

実技も無事に終わり、参加者は今後の課題を発見し、それぞれが今回得られた技能や知識を所属する支部や組織に持ち帰って今後活用し、より効果的な緊急支援を行う決意を新たにして、研修は終了しました。

この研修を通じて、日赤の資機材が元となった基礎保健ユニットを自分たちのものとして、試行錯誤を重ねながら成長を続けるフィリピン赤の姿を垣間見ることができました。

フィリピンの人びとは、これまでの外国からの支援を自分たちの力に変えて、将来の災害に立ち向かおうとしています。

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