インドネシア:地震・津波対策へ強まる結束~事業開始8カ月レポート~

日本赤十字社は、インドネシア赤十字社とともに、2012年から地域住民主体の防災事業を開始し、2016年4月からはスマトラ島ベンクル州の3つの市・県(ベンクル市、セルマ県、カウル県)にて地震と津波に特化した防災活動を行っています。事業開始から8カ月がたち、成果を確認するため国際部の中谷菜美主事が現地を訪れました。

地震多発地帯ベンクル州

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飛行機から見下ろしたベンクル州の沿岸地域

スマトラ島ベンクル州を飛行機から見下ろすと、目に入るのは延々と続く海岸線と平野。「津波が来たら危ないな」との思いが頭をよぎります。

ベンクル州は、その沿岸にスンダ海溝(海底でプレートがぶつかる部分)を抱え、島内にはスマトラ断層が走る地域。これまで度々大規模な地震が発生しており、今後も地震と津波の発生が危惧されています。いかに住民のいのちを守る備えができるかは一刻を争う課題です。インドネシア赤十字社としても、このベンクル州での事業を皮切りに、地震と津波に対する防災事業を沿岸地域一帯に拡大させることを目標にしています。

整う事業の基盤

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ユースボランティアが描いた地震と津波に関する啓発壁画について説明するインドネシア赤十字社カウル県支部事業担当者のリキさん

事業が始まって8カ月。地震・津波リスクの大きさや、住民の防災知識の有無、貧困状況などの基準から、活動を行う9つの村が選ばれました。また、各村に活動の中心を担う村委員会が設置され、ボランティアの選定と登録も完了。事業の基盤が整ってきています。

地域行政の防災政策の改善を目指す啓発活動では、行政の防災会議を活性化させたり、行政職員に活動に参加してもらったりと良い形でスタートを切りました。もともと地域で活動していた赤十字ユースボランティアも積極的に活動に参加しており、事業効果が若い世代へ波及していくことも期待されています。

意欲あふれる地域ボランティア

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防災研修に参加する地域ボランティアのエマさん(中央)

活動を担うのは、各市・県の赤十字支部に所属する赤十字ボランティアと、各村から30人ずつ選ばれた地域ボランティアです。「研修に参加するために一日の家事を全て朝済ませたのよ」と話すアシさんは主婦、また「漁に出る時間を調整してきたよ」と話すアブドュルさんは漁師。地域ボランティアの年代や職業はさまざまですが、地域の災害被害を減らすために貢献したいという思いは同じです。

今回の訪問では、地域ボランティアに対する防災研修を視察しました。研修は9日間で、赤十字ボランティアとして守るべきことや、防災の基礎知識、地域のニーズ調査の方法などを包括的に学びます。研修に参加した、ベンクル州セルマ県で助産師として働くエマさんは、「以前、村で地震が起きた時に日本のNGOが支援してくれたので、今度は私が村の役に立ちたいです」と、意欲溢れる眼差しで話します。

引き継がれる思い

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防災研修のファシリテーターを務める地域ボランティアのロピさん

防災研修のファシリテーターを務めたのは、2010年からベンクル州内の別の地域でボランティア活動を継続しているロピさん。「学びたいという意欲と、地域のために自分の時間を使いたいと思えるかどうか。そんな意欲と技術を持ってほしいです」と、新しい地域ボランティアへの期待を口にします。

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ベンクル州支部事業担当者のリオさん(右)と会計担当者のディアンさん(左)

ボランティアの意欲をどう保っていくかも赤十字職員の役割。ベンクル州支部事業担当者のリオさんは、「ボランティアが意欲を保てるよう、ソーシャルメディアを活用して情報共有に努めています」とその戦略を教えてくれました。

2017年は、育成されたボランティアが中心となり、村のリスクを洗い出し、防災活動計画を立てて実際に活動を展開していく、事業の最も重要な期間に入ります。知識と技術を身に付けたボランティアによる活動にご期待ください。

Indonesia6.JPG ベンクル州ベンクル市の地域ボランティアのみなさん。ユニフォームに身を包み「私たちが地域を守ります!」と意気込みます。

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