中東:青少年赤十字の高校生たちがシリア人道危機を考える

赤十字では、子どもたちが赤十字の精神に基づき、世界の平和と人類の福祉に貢献できるよう、日常生活の中での実践活動を通じて、いのちと健康を大切に、地域社会や世界のために奉仕し、世界の人びととの友好親善の精神を育成することを目的として、さまざまな活動を幼稚園や小・中・高等学校等の学校教育の中で展開しています。

この夏休み、全国各地で青少年赤十字(JRC)活動にとりくむ児童・生徒を対象としたリーダーシップ研修(通称「リーダーシップ・トレーニング・センター」。以下、トレセン)が開催されました。群馬県や茨城県でのトレセンでは、「国際親善・理解」のテーマで、高校生たちが中東シリアの人道危機問題に取り組みました。

はじめて知るシリアの人びとの現状

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グループで意見を出しあう群馬県の青少年赤十字高校生 メンバーたち ©JRCS

「中東と聞くと何をイメージしますか?」-日本赤十字社(以下、日赤)で中東人道危機救援を担当している職員の問いかけに、トレセンに参加する高校生たちははじめはちょっと戸惑い気味。「遠い国のこと」「考えたことなかった」という答えがほとんどでした。

7年目に入った紛争によって、シリアでは国民の2人に1人にあたる約1,100万人の人びとが国内外に避難を余儀なくされていること、戦闘で人びとが生活する街が破壊されてしまっていること、女性や子どもを含む多くの人が支援を必要としていることなどが写真や映像で紹介されるのを、真剣な表情で聞き入っていました。海をわたってヨーロッパに逃れたシリア難民の少女リンちゃんのインタビュー映像では思わず涙ぐむ生徒たちも。

最後には、グループで「もし自分や家族、友達がシリアの人たちのように紛争に巻き込まれたら、生活はどのように変わってしまうだろう」「自分たちにできることは何だろう」といったことを話しあいました。

高校生たちの「気づき、考え、実行する」へ

青少年赤十字の活動は、子どもたちの「気づき、考え、実行する力」を引き出すことが大きな目標の一つとなっています。今回シリアについて学んだ高校生たちからも、それぞれの「気づき」「考え」がたくさんありました。

  • 高校2年生Hさんの感想文から

「もし紛争に巻き込まれてしまったら、ということを考えたとき、今の当たり前のことができるありがたさを改めて感じました。家族と離れて、命がけで船に乗っていく子どもたちや、病気やケガで苦しんでいる人たちを見て、私にできることは限られているけれど、関心をもつことや勉強すること、また募金することなど、小さなことでも力になりたいと強く思いました。」

  • 高校2年生Fさんの感想文から

「(シリア難民の少女が)他の人に自分と同じような辛い想いをしてほしくないという他人を思いやる心を持っていて、自分たちが毎日している生活を大切にしなければならないと思いました。日本に少しでもシリアのことや難民の『今』を知る人が増えるよう、学校でも話したいと思いました。」

  • 高校1年生Tさんの感想文から

「(シリア赤新月社の救援活動の様子を見て)自分の命も危険になってしまうにもかかわらず人のために動ける人を本当に尊敬します。そういう人が世界で頑張っていることを今日知ったので、自分は周りにそれを伝えていきたいです。」

シリアの今 ~ 続く戦闘、3年ぶりに届いた赤十字の支援

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救援物資を積載しデル・アルズールに向かうトラックと 赤新月社スタッフ ©シリア赤新月社

シリアでは現在も北部の街ラッカなどで戦闘が続き、人びとの生活が脅かされています。一方で、現場での赤十字の人道支援も止むことなく継続しています。9月8日には、武装勢力等に長らく包囲され人道支援がなかなか届けられなかった西部デル・アルズールに、3年ぶりに陸路で国際赤十字とシリア赤新月社のトラック40台以上が食料と医薬品を届けることができました。これによりこの街に取り残されていた8万人の人びとが救援物資を受け取ることができたのです。

これから訪れる冬に向かって、現地では食料や燃料などのニーズが高まり、さらなる支援が必要となっています。

中東人道危機救援金を受け付けています

シリアにおける人道危機をはじめ、中東における紛争犠牲者や病気の患者を救うため、日本赤十字社では中東人道危機救援金を集めています。皆さまの温かいご支援をお待ちしています。

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