今日の開発協力の先駆けとなった「昭憲皇太后基金」
日本でまだ誰も"平時に備える"という発想をもたなかった明治時代、今もなお、世界中で赤十字が実施する開発協力活動に大きく貢献している「昭憲皇太后基金」が生まれました。
各国赤十字社の支援活動推進(平時事業)のために
「昭憲皇太后基金」は1912年(明治45年)にワシントンで第9回赤十字国際会議が開催された際、赤十字の平時の活動を奨励するために昭憲皇太后(明治天皇の皇后)が国際赤十字にご寄付された10万円(現在の価値で3億5千万円に相当)を基に創設されました。
明治45年というと、大卒の初任給が30円程度、庶民にとって当時の1円は現在の4,000円程度の重みがあったと考えられます。世界で武力衝突が起こり、のちに第一次世界大戦が起こるその時代、世界の多くの赤十字社は戦時救護の対応に追われていました。そんな中、台風や地震等の災害への備えや、保健衛生の改善といった平時の活動を行うための国際基金の創設は、画期的なことであったと言われています。
同基金は、皇室をはじめとする日本からの寄付金によって成り立っています。基金は国際赤十字の中に設けられた合同管理委員会によって運営され、原資を取り崩すことなく、そこから得られる利子が世界の赤十字社の活動に配分されます。配分先は昭憲皇太后のご命日にあたる毎年4月11日に決定されています。これまでの配分は大正10年の第1回から今回(第97回)までで、合計約15億4000万円、配分先は166の国と地域に上ります。
2018年の配分先が決定 -15カ国の活動に総額約4,700万円-
合同管理委員会は、事業目的の妥当性、ニーズ、事業のインパクト、過去の支援実績、地域バランス等考慮した結果、今年度の基金の配分先を以下の15カ国での活動に決定しました。総額は約4,700万円(約42万3,060スイスフラン)です。
※ 全て平成30年4月6日レート(1スイスフラン=111.35円)により換算。
第97回 昭憲皇太后基金配分事業の概要 |
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レソト赤十字社 |
【HIV予防と献血推進活動の融合】 若者の協力のもと、HIV予防活動や無償献血の推進を行います。 |
コートジボワール赤十字社 |
【若者とコミュニティの献血推進活動への参加】 若者と地域住民が献血推進活動に参加し、血液確保に貢献します。 |
リベリア赤十字社 |
【救急サービスの提供】 |
ソマリア赤新月社 |
【リーダーの育成】 |
エルサルバドル赤十字社 |
【偏見や差別などに対する活動】 |
ウルグアイ赤十字社 |
【ボランティアネットワークの強化】 |
ホンジュラス赤十字社 |
【社会的に排除された青少年の教育】 |
モルディブ赤新月社 |
【移民の健康を守りレジリエンスの強化】 |
パラオ赤十字社 |
【介護士認定制度の導入】 |
パキスタン赤新月社 |
【献血者管理システムの構築】 |
ベラルーシ赤十字社 |
【脆弱な人々への応急手当技術等の向上】 |
マケドニア赤十字社 |
【脆弱で排除されたコミュニティへの支援】 |
ルーマニア赤十字社 |
【新しく革新的なプログラムの導入】 |
ラトビア赤十字社 |
【ボランティア部門の能力強化】 |
エジプト赤新月社 |
【ジェンダーに基づく暴力の防止】 |
~ 2016年昭憲皇太后基金配分国の事業の様子 ~